77 / 250
3章
3章42話(252話)
しおりを挟む「……ふふ、ありがとう。でもね、わたくしが頑張れるのはリザたちが居るからよ」
柔らかく表情を緩ませるディアに、「私たち?」と聞き返した。
小さく首を縦に動かして、ディアはベッドに座る。
「最初にこの国に来た時は、新生活への期待よりも不安のほうが大きかったの。だから、リザたちと知りあって友人になれて……、この地で基盤を築いていって……、気が付いたら、こうなっていたという感じ。これが数ヶ月の出来事なのだから、すごいわよね」
口元に手を添えてくすりと笑い声を上げるディア。
「あなたたちのおかげで、わたくしはここに居ても良いんだって思えるの」
胸元で手を組んで、目を閉じて微笑むディア。私とジーンは顔を見合わせた。そして、互いに照れたように頬を赤らめた。
「この国に来てよかった。わたくし、本当にそう思っていますわ」
ディアがそう言って目を開けて、私たちをじっと見た。私たちはがばっとディアに抱き着く。
ディアが「きゃあ」と楽しそうな悲鳴を上げて、ベッドに倒れ込んだ。
三人で笑い合い、私はベッドから起き上がり、「それじゃあ、私もお風呂に入って来るね」というと、「ゆっくり入って、疲れを取るのよ」とジーンが言葉を続ける。
「うん、そうさせてもらう」
浴室へ向かい服を脱いでお風呂に入る。髪や身体を洗い、お風呂に入ってゆっくりと息を吐く。
じわじわと温かくなる感覚に、目を閉じた。
「明日で四日目、……あと三日で終わっちゃうのね」
舞姫として、最後までステージに立てたら良いなと思う。
今日あった出来事を思い出しながら、アル兄様とヴィニー殿下の連携魔法はやはりすごいな、と思ったし、国の人たちを笑顔にするハンフリーさんも、きっとたくさん努力してきたのだろう。
……私のことを『めーちゃん』と呼ぶのは、やめてもらえるように今度話そう。
……会えば、の話だけれど……。
「はぁ~……」
ゆっくりと息を吐いて、すっと目を開けて天井を見上げる。
数回深呼吸を繰り返して、ぐーっと背伸びをした。
大分身体が温まったので、湯船の中でマッサージ。労わるように足を揉んだり、腕を揉んだり。
明日はどんな一日になるのだろう?
建国祭はこのまま、何事もなく終わってくれたら一番良いのだけど……。
だけど、なぜか……心の奥がざわついている気がして、私はぶんぶんと首を横に振った。
……だいじょうぶ。
お母様たちも、ヴィニー殿下も建国祭に関わっているのだから。
私は漠然とした不安を拭うように、頬を両手で叩いた。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
8,767
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。