そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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3章

3章40話(250話)

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 ジーンの撫でる手が心地良くて目を細める。
 すると、ディアがそっと私の背中を撫でる。
 ――彼女たちが私の友人で良かった。そう思いながら、優しさに浸っていた。

「……今日はもう休みましょう。お風呂に入って、ぐっすり眠るの」

 ジーンの提案にこくりとうなずく。……いろいろあって疲れたしね。

「先に入って、私は最後で良いから」
「……そう? それじゃあ、ディア、どうする?」
「わたくしも後で。ジーンから入って?」
「わかったわ」

 ディアへと顔を向けたジーン。お風呂の順番を決めると、私から離れて「それじゃあ、先にお風呂使うわね?」と浴室へ向かった。
 残った私とディアは、ベッドに座ったままシー兄様が渡した宝石を見つめた。

「……わたくし、シリル様に何か返せるでしょうか……」

 高価な物を渡されたからか、ディアが緊張したようにか細い声で呟いた。

「シー兄様は、見返りを求める人ではないと思う……。この宝石を選んだのは、きっとディアの髪色に近かったからじゃないかな……?」

 それにシー兄様、ピンクが好きみたいだし……。パステルピンクのドレスを推していたものね。私に。

「でも、でもね、リザ。わたくし、とても嬉しいの。こんな風に宝石を頂くこともなかったから……、とても嬉しくて、どうやってお礼を伝えればよいのか、わからないの」

 ぽっと頬を赤らめるディアを見て、可愛いなぁと思うのと同時に、これはもしかして……、シー兄様に対して好意が芽生えているのでは? と胸が高鳴った。

「それなら、今度……シー兄様に似合いそうなものを探しましょう?」

 ディアは弾かれたように勢いよく顔を上げて、何度もうなずいた。

「ええ、ええ! ありがとう、リザ!」

 ぱぁっと花が綻ぶように笑うディアに、思わず見惚れた。
 ――こういうのが恋、なのかしら?
 そう考えていたら、ジーンがお風呂から上がり、今度はディアが浴室へ向かう。
 ポードレッタイトのブローチを大切そうにハンカチに包み、愛おしそうに撫でてから。……それを見ていた私とジーンは、なんだかこちらまで照れてしまい、顔が赤くなった。

「……シリル様、婚約者は居ないのよね?」
「え、ええ……。縁談は来ていたと思うけど、『今は仕事が忙しくて無理!』って断っていたし……」

 ジーンが目を瞬かせた。
 それから、くすくすと笑う。

「シリル様って面白い方なのね」

 ……仕事を理由に断っているのを、お父様とお母様はどう思っていたんだろう。少し気になって来た。
 ディアがお風呂に入っている時に、ジーンとはそんな話をしていた。
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