そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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3章

3章36話(346話)

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「なら、クラウディア嬢、明日の自由時間にボールを買いに行きませんか?」
「良いですわね!」

 シー兄様の提案にディアはぱぁっと表情を明るくして何度もうなずいた。

「それじゃあ、どの自由時間に行くのかこれに連絡を下さい」

 と、ディアにブローチを渡した。

「え? あ、ありがとうございます……」

 かぁっと頬を赤らめて受け取るディア。……レイチェル様、ブローチ型の魔道具も作ったのかしら? ディアはそっと包み込みようにブローチを持って、嬉しそうに微笑んだ。

「とりあえず、一周してから帰ろうか。トスジャグリングで結構時間経ったみたいだし、リザたちをホテルに送らなくちゃ」
「そうだね。行こうか」

 アル兄様とヴィニー殿下の言葉に、私たちはこくりとうなずいて歩き出した。
 この通りの反対側では、先程までのハンフリーさんが芸を披露していたから、かなりの興奮している子どもたちと、「あんな風になりたかったら、好き嫌いなく食べなくちゃダメよ」と注意する母親たち。
 嫌いなものを食べなくちゃいけないと思った子どもたちの反応は様々だった。
 じゃあ頑張って食べる! と意気込む子や、非常にイヤそうな顔をして沈黙する子。ならいいや、と開き直る子。
 ……誰ひとりとして、同じ人は居ないのよね。私は目元を細めて、その親子たちを見ていた。それに気付いたヴィニー殿下が「……大丈夫?」と聞いて来た。
 私はヴィニー殿下に顔を向けて、にこりと微笑んでうなずいた。
 マリアお母様とジャックお父様は建国祭で手伝うことがあると、アリア様のところへ行っているらしい。
 シー兄様は、「まぁ、姉妹だし、話すことも多いんじゃないかな?」と言っていたけれど、後でアル兄様が「伯母様はお母様を護衛に指名したんじゃないかな」とこっそり教えてくれた。
 こういう時でもないと、堂々と一緒に居られないしね、と。

「なんだかお母様に会いたくなったわ」
「建国祭は明日で四日目だから、もうちょっと我慢してね。まぁ、お母様のことだから、リザに会いに来ると思うけど」

 くすり、と笑うアル兄様に、私も「そうだと良いなぁ」と言葉を返した。全力で私のことを支えてくれたアンダーソン家。私も、私に出来ることで恩を返していきたいと考えているの。
 そのためには、私自身が健康に育ち、いろいろな知識を得て行くのが一番よね。
 そう考えられるようになったことが、とても誇らしい。

「リザは本当に、アンダーソン家の人たちが好きだね」
「ええ、大好きですわ!」

 ヴィニー殿下に言われて、私はそう断言した。すると、アル兄様が私をぎゅっと抱きしめると、シー兄様はアル兄様ごと私を抱きしめた。

「ありがとう、リザ。オレも大好きだよ」
「僕だって!」
「ふふっ」

 二人からの言葉に、私の心の中はぽかぽかと温かくなった。
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