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3章

3章32話(242話)

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「目に魔力?」
「リザの魔力コントロールのために、少しの間だけ王城に居たことがあるんだ。その時に、遠くが良く見えるみたいだったから、目に魔力を流して視力を良くしていたんだと話してね……」

 ヴィニー殿下が当時を懐かしむように目元を細めて話し始めた。どうやら、そのことをアル兄様にも話していたみたい。アル兄様は一度もそんな話を私にしたことはなかったけれど……。

「リザの様子を見ていたんだ。魔力をコントロール出来るようになったとはいえ、無自覚で使っているかもしれなかったから」
「……リザの視力は弱かったのですか?」
「いや、そう言うわけじゃないよ」

 やんわりと首を振るアル兄様。私はそっと火傷をしていたほうの頬に触れて、目元を細めた。火傷の範囲はどのくらいだっただろう……? 今はもう、思い出すこともない。時々悪夢を見てうなされて、ソルとルーナに起こされることもあったけれど、アカデミーに通い始めてからそれも少なくなった。
 そんなことを考えていると、パッとあの空間が消えた。

「時間切れ」

 アル兄様が軽く肩をすくめると、シー兄様が近付いて来た。暴れていた男性たちは姿を消していた。

「悪いね、アル、ヴィンセント殿下。助かった」
「どういたしまして。あいつらは?」
「うん、ちょっとね、こう」

 ぐっと拳を握るシー兄様に首を傾げる私。シー兄様は「ここら辺は安全になったから、行こうか」とにこにこ笑って歩き出した。あの数分で一体何があったのかしら……?

「シリル様、お強いのね」
「え?」

 ディアが感心したように言葉をこぼす。

「どうしてそう思ったの?」
「……わたくしたちに、戦うところをお見せしなかったでしょう? 数分で男性たちの姿も消えましたし……。シリル様が何をしたのかはわかりませんが、わたくしたちを気遣うことが出来るほどに、戦い慣れているということですわ」

 ディアの説明に、私とジーンは「なるほど……」と納得した。そう言えば、シー兄様が戦っているところを見たことがないような気がして、じっとシー兄様の背中を見つめると、シー兄様が振り返った。

「どうした、リザ? 歩き疲れた?」

 優しく問われて、私は頭を左右に振った。シー兄様は「そう?」と少し残念そうに笑い、また前を向いて歩き出した。

「やっぱりシリル兄様はすごいなぁ……」

 アル兄様の目が心なしかキラキラと輝いているように見えた。

「アルフレッド様は、本当にシリル様を尊敬しているのですね」
「それはもう。巫子の力が僕になければ、アンダーソン家はシリル兄様が当主だったろうし……」

 ……アル兄様は、アンダーソン家の当主になるのが自分では力不足だと考えているのかしら……?
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