そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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3章

3章31話(241話)

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 孤児院の近くを後にして、私たちは歩を止めた。ぴたりと立ち止まり、先程のことを話し合う。

「……子どもたちが建国祭を楽しんでいて良かったわ……」

 ホッとしたようにジーンが胸元に手を置きながら息を吐いた。彼女の言葉に同意するように、アル兄様が口を開く。

「これもすべて、建国祭を楽しんでもらおうと考えて実行した結果なのだから、嬉しいことではあるよね」
「まぁ、こういう楽しい祭りだからこそ――」

 カチャリ、と、シー兄様が剣を抜いた。私たちが顔を見合わせていると、ブンッと勢いよく振り回した。突風のようにシー兄様の前のほうに魔力が放たれ、私は目を丸くした。

「――こういうやからが多いんだよな……」

 どこか呆れたようなシー兄様に、私たちは首を傾げた。それと同時に、「うわぁっ!」と男性の野太い悲鳴が聞こえた。ぱちくりと目を瞬かせていると、ヴィニー殿下が「捕らえて」と小さく呟くとシェイドが闇を大きく広げてぱっくん、と恐らく悲鳴の主を飲み込んで戻って来た。

「……シー兄様、この人たちは……?」

 私が恐る恐る尋ねると、シェイドはペイっと男性たちを吐き出すようにシー兄様の前に並べた。シー兄様はにーっこりと笑みを浮かべて、

「祭りで開放的になるのか、こういう悪いことする人たちも多いんだよねぇ……」

 肩をすくめて、アル兄様とヴィニー殿下に視線を向けると、彼らは小さく首を縦に動かして同時に指をパチンと鳴らした。

「……この空間は……?」
「僕とヴィーの共同魔法さ。子どもの頃、いろいろ試しているうちに出来るようになったんだ」
「とはいえ、数分だけだけど……。これ、魔力の消費が激しいから」

 先程まで暗かったのに、今は朝のように澄み渡る青色の空間に居ることに少し混乱したけれど、どうやらこの空間では外のことが見えなくなり、聞こえなくなるようだ。

「あの、シリル様は何をしているのでしょうか……」

 困惑するようにディアが眉を下げた。アル兄様とヴィニー殿下は顔を見合わせて、「騎士の仕事、かな?」と同時に言葉を発した。見事に重なった言葉に、ジーンがどうやら何かを察したらしく、頬に手を添えた。

「……開放的になるな、とは言いませんが、節操は守ってもらわなくてはいけませんわね」

 ジーンの言葉に、ディアが小さく「……無事でしょうか」と呟いた。それに関しては安心して良いと、アル兄様がぽんぽんとディアの肩を優しく叩いた。

「リザはシリル兄様が剣風を放つ前、男性たち見えた?」
「え? いいえ。暗かったですし……」
「それならいいんだ。……うん、ちゃんと目に魔力を使ってないようだね」

 思わずヴィニー殿下に視線を向けた。ヴィニー殿下はにこっと微笑む。
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