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3章
3章28話(238話)
しおりを挟む以前、ジーンと一緒に行った孤児院の子たちよりも幼い子たちが、目をキラキラと輝かせていた。そして近付こうとした子たちを止める声が聞こえた。
「こーら、持ち場を離れてはだめでしょう?」
その声は優しい響きだった。だが、子どもたちはぴたりと足を止めて残念そうにしゅんと肩を落として、最初に居た場所へと向かう。そして、あの声の持ち主が私たちに向かい頭を下げた。
「初めまして、舞姫たちとその騎士様方。こちらのほうまで来ていただけて感激です」
そう言ってにこりと微笑むのはくるぶし丈のワンピースを着ている女性だ。
「……あ、シリル様はお久しぶりです」
「ああ、久しぶり、シスター・ルイザ。紹介するよ、オレの弟と妹、それから、ふたりの友人たちだ」
私とアル兄様はシー兄様に紹介されて、シスター・ルイザと呼ばれた女性に挨拶をした。
「初めまして、アルフレッド・アンダーソンです」
「初めまして、エリザベス・アンダーソンと申します」
それから、ジーン、ディア、ヴィニー殿下も挨拶をして、シスター・ルイザは目を大きく見開いた。
「あらあら、高位貴族がこうやって纏まっているのは、初めて見ますわ。この孤児院で子どもたちの世話をしている、ルイザと申します。どうぞ、お見知りおきを」
シスター・ルイザはそう言ってころころと鈴を転がすように笑う。
「ほら、みんな、ご挨拶なさい」
戸惑うようにシスター・ルイザを見上げる子どもたちは、ぱぁっと表情を明るくして私たちに向かって笑顔を浮かべて挨拶をしてくれた。みんなが一気に挨拶と自己紹介をしたから、聞き取れないことに焦りを感じつつ、ヴィニー殿下が「ちょっと待ってね」と子どもたちと視線を合わせるためにしゃがみ込み、「ゆっくり、ひとりずつ挨拶出来るかな?」と優しく声を掛ける。
「ぼくはエルドレッド!」
「わたしはエリナー!」
「えっと、アーヴィング、です」
「ダイアンです!」
「名前……レナード」
「おれはクライヴ!」
「……モーリーン……」
「ジェイクって言います」
今度はひとりずつ名前を教えてくれた。
「この子たちは六歳から十歳くらいの子たちなんです」
恐らく、モーリーンと言う子が一番幼いのだろう。最後に名乗ったジェイクと言う子の後ろに隠れているのを見るに、人見知りをする子なのだろう。
「おねーちゃんたち、ステージで踊っていたよね!」
「わたしたち、ずっと見ていたんだよ!」
「……きれいだった……」
子どもたちに褒められて、私たちは顔を見合わせて微笑む。
こんな風に言ってもらえると、三人で一生懸命にダンスを考えた甲斐があると感じる。……私たちのダンスが、少しでも心に残ってくれるなら……こんなに嬉しいことはない。
「あのダンスって見たことがないけれど、おねーちゃんたちが作ったの?」
「そうよ。私たちが三人で作ったの。ディアの故郷のダンスを結構取り入れているのよ」
ジーンが率先して子どもたちに話していた。ジーンは昔から、孤児院に行って子どもたちの相手をしていたから、この孤児院の子たちも気になるのかもしれない。
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