そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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3章

3章26話(236話)

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 こちらを見て手を振るのは子どもたちだけではなく、大人たちも「今日のダンスも綺麗でしたよ!」と声を掛けてくれた。私たちは、繋いでいる手とは反対側の手で軽く手を振って微笑んだ。

「あ、ヴィンセント殿下だ~」

 ヴィニー殿下がその声を聞いて、私たちと同じように手を振る。その表情は少しだけ困っているように見えた。でも、どこか嬉しそうにも見えた。

「人気者ですね」
「それはリザたちのほう」

 そう言って微笑むヴィニー殿下。その表情を目にして、私はなんだかドキッとした。どうしたのかしら? 笑顔のヴィニー殿下を見たことなんて、たくさんあるのに……。

「リザ?」
「あ、えっと、これからどこに向かうんですか?」
「うーん、そうだな……。一言で言うなら、ダンス広場、かな?」

 ダンス広場? と首を傾げていると、シー兄様たちがこちらを見て口角を上げた。
 ちなみに、シー兄様の隣にはディア、アル兄様の隣にはジーンだ。自然とこの組み合わせになった。……ジーンやディアがお兄様たちと並んで歩いているのを見ると、なんだか嬉しい。そう考えていたのが表情に出ていたのか、ヴィニー殿下がぎゅっと手を握った。

「ヴィニー殿下?」
「アンダーソン家が本当に大好きなんだね。そして、友人たちも」
「え? ええ、もちろん。アンダーソン家には返しきれない恩もありますし、ディアもジーンも……大好きな友人ですもの」
「そっか」

 柔らかく、優しい声色だった。そして、その声色のままヴィニー殿下は言葉を続けた。

「リザが幸せそうで、本当に良かった。後は……そうだね、もう少し身長が欲しいところかな?」
「それは……切実に願っているのですが……」

 少しだけからかうような口調になったヴィニー殿下に、私は眉を下げて肩をすくめた。シー兄様は出会った頃、既に身体が出来上がっていたと思う。それでもじりじりと身長が伸びたと聞いたことがある。ジャックお父様の血を引いているから、もしかしたらもっと身長が伸びるかもしれない。マリアお母様に似ているアル兄様も、シー兄様よりは低いけれど成長期で一気に伸びて、成長痛がつらかった、とも言っていた。
 エドも大きくなって来たし……。きっと身長が伸びやすいのよね。これって遺伝が関係あるのかしら?

「ヴィニー殿下は、どのくらいの身長が好ましいと思いますか?」
「リザが?」
「え? あ、いえ、ヴィニー殿下自身が、です!」
「僕? あんまり考えたことはないけれど……、リザより高いほうが良いなぁ」

 のんびりとした口調でそう言われて、私は思わず吹き出した。
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