そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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3章

3章24話(234話)

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 建国祭三日目、早朝から目が覚めた私は、ジルとディアを起こさないように、そっとから抜け出すとテラスへと出た。早朝の風を受けて、目元を細めた。頬を撫でるように吹く風に、私は深呼吸を繰り返した。

「リザ、もう起きたの?」
「おはよう、ディア、ジーン。起こしちゃった?」
「おはよう。いいえ、目が覚めたの」

 テラスへ抜ける扉が開く音がして、私が振り返るとディアとジーンが私を挟むように隣に立った。

「今日も良い天気のようね」

 ジーンが空を見上げてそう言うので、私たちも空を見上げた。空は青く、雲ひとつない。こんなに天気が良いと心地が良いものね、と心の中で呟く。しばらく三人でホテルからの風景を楽しんで、身支度を整えた。そして、私がふたりの手を取り、

「今日もがんばろうね!」

 と、笑顔で言うと、ふたりは目を一瞬大きく見開いてからふわっと微笑んだ。そしてふたりは、

「もちろん!」

 ――声を揃えて、そう言ってくれた。
 朝食を摂り、今日はステージの時間ギリギリまで三人でホテルに居ることにして、いろいろなことを話した。私は昨日の決意をふたりに話した。

「そうね、エリザベスはエリザベスだもの」
「前世と言うことに少し興味はあるけれど……、過去は過去、今は今、だものね」

 ふたりとも私の意見を尊重してくれた。良い友人が出来たなぁ、と心が温かくなるのを感じて、私は表情が緩むのを感じた。

「私は私だものね」
「ええ。さぁ、そろそろ行きましょうか」

 ジーンが立ち上がり、私たちも彼女に続くようにホテルを後にした。
 控室まで向かい、控室でダンスの衣装に着替えてソルとルーナを呼びだした。私の影からぴょこんと出て来る精霊たちに話し掛ける。

「ねぇ、ソル、ルーナ。これをつけて見てくれない?」
「……これは?」
「衣装を用意する時に、一緒に作ってもらったの。あなたたちがステージに上がるかどうかはお任せされていたから、念のために。……昨日、ステージに出てきてくれたでしょう?」

 ――そう、実は精霊たちの衣装も用意していたの。ソルとルーナに合いそうな布や宝石を選ぶのも楽しかった。
 それに――……、マザー・シャドウとの決着後、ソルもルーナもどこか上の空になっていたので、気になってもいたから……。
 少しでも、ソルとルーナが気に入ってくれると良いな、と思って用意したのだけど……。ソルとルーナは顔を見合わせて、それからずいっと私に頭を押し付けるように動かす。
 私はふふ、と小さく笑ってソルに小さなシルクハットを、ルーナにピンク色のケープを羽織らせた。シルクハットにはサファイア、ケープにはルビーが飾られている。

「まぁ、なんて愛らしいのかしら……」

 うっとりとしたように、頬に手を添えてディアが呟く。
 ソルもルーナも満更ではないように……むしろ、嬉しそうに鏡をじっと見ていた。
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