そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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3章

3章17話(227話)

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「わたくしは外に出ることが滅多になかったので、貴族同士で話すことも、貴族ではない方々と話すこともなくて……。なので、リザやジーン、アカデミーの方々と話す、と言うのは……、とても、楽しいこと……と感じていて……ええと、なんだか話がまとまらないわ……」

 恥ずかしそうに頬を染めて、その表情を隠そうとするディアに、私とジーンは彼女の手を取ってぎゅっと握った。

「たくさん話しましょうね、ディア」
「こうして知り合えたのだもの」
「……ふふ」

 ディアの表情が柔らかくなるのを見て、私たちは手を繋いだまま歩き出した。その様子を、街の人たちが見ていて、今年の舞姫たちはとても仲が良さそうだということを噂されるのを知るのは、建国祭が過ぎてからだった。
 それから少しの間街を歩いて、ステージの控室へと向かった。

「……今日は私がセンターなのよね……」
「昨日の夜もセンターだったから、連続ね」
「少し緊張して来たわ……」

 ドキドキと高鳴る胸の鼓動を落ち着かせるように、ゆっくりと深呼吸を繰り返した。まだ時間があるから、その間に落ち着きたい。衣装に着替えて深呼吸をしていると、ふと思い出したようにジーンが顔をこちらに向けた。

「どうしたの?」
「……一応確認するけれど、エリザベスに前世の記憶はないのよね?」

 昨日の出来事のことを聞かれていると思って、私はジーンを見つめた。

「ええ、もちろん。ジェリー・ファロン、そしてエリザベス・アンダーソンとしての記憶しかないわ」
「……昨日はびっくりしましたわね……」
「……私だって、突然前世なんて言われたら戸惑うわ……」

 彼――……ハンフリーさんが前世を覚えているという。そして、私と夫婦だったと。……でも、それは前世のことであって、『現在(いま)』のことじゃない。ソルとルーナの反応からして、きっと思い当たることがあるのだろう。精霊たちが話してくれるまで、待つつもりではあるのだけど……。

「前世を覚えているってどんな感じなのかしら……」

 ディアがぽつりと呟いた。その目は興味津々といった感じに輝いていて、それでもどこか心配そうにも見えた。

「舞姫たち、そろそろなので、柔軟とか最終チェックとかしてくださいねー」

 扉の外からそう声を掛けられて、私たちは三人そろってビクッと肩を震わせた。
 私たちは会話を止めて、柔軟と最終チェックをすることにした。

「それでは、今日もがんばりましょうね」
「ええ」
「もちろん」

 ディアのそんな言葉に、私とジーンは力強くうなずいた。
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