そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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3章

3章14話(224話)

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「ま、しばらくはこの王都に居るからさ、会った時には話してくれると嬉しいな」
「え、ええ……」

 それじゃあ、と軽く手を振って去っていくハンフリーさん。その姿が見えなくなってから、私たちはそれぞれ息を吐いた。ディアが興味深そうにハンフリーさんを見ていたけれど、くるりと身体を反転させて私たちに微笑みかける。

「……とりあえず、今日はもう休みましょう。明日のためにも」
「そうね、そうしましょう」

 ジーンがうなずいて、歩き出す。私たちは朝のステージ近くのホテルに泊まることになっているので、そこまで送ってくれた。
 三人部屋だけどとても広い部屋で、仕切りになる引き戸もあるので半個室のような感じだ。『舞姫たちに少しでも心穏やかに過ごして頂きたくて……』とは、そのホテルのオーナーの言葉。
 ひとりずつお風呂に入って、後は寝るだけ……というタイミングで、ディアがおずおずと言うように手を上げた。

「どうしたの?」
「あ、の……。先程の男性のことなのだけど……。前世って……本当にあると思いますか?」

 ……私とジーンは、その言葉を聞いて目をぱちくりと瞬かせた。ハンフリーさんのことを思い出して、私たちは沈黙してしまった。

「……あの方の話が本当だとして、……前世の夫と再会した感想は?」
「……困惑しかないわ……」
「……でしょうね……」

 ジーンに尋ねられて、私は本音を口にした。彼には記憶があるようだけど、私には一切ないのだから。それに……『めーちゃん』という愛称も聞き慣れない。

「……ソルとルーナは知っている?」

 尋ねてみたけど、ソルもルーナも沈黙していた。……が、すぐにソルがひょこりと顔を出して、「……確証がないことを口にするのは……」とソルにしては珍しく、言葉を濁していた。

「……そっか。じゃあ、話せるときには話してね?」
「ああ」

 そう言って影の中に戻っていった。もしかしたら、ハンフリーさんのことについて、ルーナと話しているのかもしれない。

「……なんというか、世の中には不思議なことが多々あるのね……」
「ね」

 そんな会話をして、眠くなって来た私たちはそのまま眠りについた。思っていた以上に疲れていたみたい。
 ……一日目の建国祭と言うこともあり、ダンスも初披露だったし、それに……よくわからない前世の話も聞いたし……、うん、よくわからないけれど……、考えても多分解決しないことだから、明日からのダンスのためにもしっかりと睡眠をとって、体力を回復させないとね。
 その日は夢も見ずに熟睡出来たみたい。
 しっかり熟睡したからか、昨夜にゆっくりとお風呂に入ったからか、思っていた以上に身体が軽い感じがした。ぐっと腕を天井に伸ばして背中を伸ばしていると、ディアとジーンも起き出した。
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