そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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3章

3章6話(216話)

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市役所で戸籍登録してからはいつも通りの日々を暮らし週末になった。
この一週間、茶羽さう黒羽くうは毎日お手伝いをしてくれる、一昨日は庭の片づけをして草むしりをして、ネットで購入した滑り台などの遊具を設置した、本来は室内で遊ぶものみたいだったが、そこそこ大きい物だったため庭に置いて固定した。
二人は外で遊べるのが楽しいのか昨日はお手伝いと勉強をした後、暗くなるまで遊んでいた。
勉強もひらがなのあ行からさ行迄書けるようになった、読むだけならほぼすべてのひらがなを読めるようになっていた。

「覚えるの早いな、これも猫人ねこひと犬人いぬひと特有なのかな?、そろそろ簡単な計算とかも教えても良いかな。」

などと感心しながらも、内心では『うちの子は天才かも』と考えていた。
達也本人は気づいていなかったが傍から見たらまっしぐらである。

今日も朝食が終わると洗濯と風呂掃除をするため洗面所や風呂場でワイワイと楽しそうにお手伝いをしている、毎日隠れて見ていたのだが、日替わりで洗濯と掃除を交代にやっているようだった。
今日は洗濯が茶羽、風呂掃除が黒羽の番みたいだ。
隠れて見ていて終わりそうなときに急いでリビングのパソコンの前に座り二人が戻ってくるのを待つ。
二人がリビングに来ると黒羽は濡れてびっしょりになっている、タオルと着替えを持ってくると、ドライヤーで黒羽の髪を乾かす、終わると茶羽が前に座る、茶羽は特に濡れていないのだが乾かすふりをしてドライヤーの風を当ててあげる、これが毎朝お手伝い後のいつもの行動になりつつある。

それが終わると洗濯が終わるまでひらがなドリルで勉強をする、茶羽と黒羽は新しい文字を覚えてそれが書けるようになるのが楽しいみたいで、お互い今日は私が早く覚えると張り切っている。
俺は二人の前に座って一文字づつ教えていく、なんか先生になった気になって楽しい。
洗濯の終わりを告げる音が聞こえると二人は洗面所に行き洗濯物を抱えて帰ってくるので各自の服をより分ける。
多少いびつだが自分の服は畳めるようになっていた。
洗濯物を片付けていると玄関でチャイムが鳴った、多分健治と香織だなと思って玄関を開ける。

「こんちわ、茶羽ちゃん黒羽ちゃん元気だったか?」
「こんにちわ、おじゃましますね。」
「さうはげんき」
「くうもげんき」

健治と香織が挨拶しながら茶羽と黒羽をなでていた、二人も尻尾をゆらゆらさせて喜んでいた。

「タイミングいいな、そろそろ昼にしようと思ってたんだ、二人ともまだだろ?」
「そうだな、ごちそうになるわ、というかそのつもりでこの時間についたんだがな。」

俺の言葉に健治はそう言うと茶羽世黒羽を抱き上げリビングに入っていく。
香織がキッチンに行こうとしてたので止めて「二人と遊んでていいですよ」とリビングに戻した。
健治の性格上一緒に昼を食べるだろうと思っていたので、下ごしらえしてあった、今日の昼はチキンステーキとサラダ、茶羽と黒羽は軽く塩を振っただけ、俺たちは塩コショウにすり下ろしたにんにくを揉み込んでいる。
茶羽と黒羽のお肉を焼いてから俺らのお肉も焼く、するとキッチンの入り口で茶羽と黒羽が覗いているのに気づいて、手招きして茶羽と黒羽のチキンステーキが乗ったお皿を渡すと、笑顔で運んでいった。
俺は残った皿とサラダの入ったボウルをリビングに持って行く。

昼飯が終わると茶羽と黒羽は絵本をもって香織に読んでとせがんでいた。
二人を香織に任せて健治とパソコンで各サイトを確認する。

「まだ人化が起こって一週間だけど色んな情報出てるんだな。」

健治は掲示板や情報サイトを見ながら情報の量に驚いていた。
毎日確認している俺からしたら特に目新しい情報はなかったが、健治には初めて知る情報などもあって、モニターに齧りついていた。
しばらくパソコンやスマホを見ていると、香織が眠ってしまった茶羽と黒羽を抱えてきた。
二階のベットに寝かせると、リビングで健治と香織に戸籍謄本と二人の住民票を見せる。

「本当に登録で来たんだな、おめでとう。」
「茶羽ちゃんと黒羽ちゃん養子になってるわね、おめでとうございます。」
「二人ともありがとう、なんか面と向かって言われると照れるな。」

そんな会話をしながらも三人は笑顔になっていた。
そして健治が真顔になってスマホの画面を見せてきた。

「実はなSNSでこんな投稿を見つけたんだ、茶羽ちゃんと黒羽ちゃんに何かあってからじゃ遅いからな、気を付けた方がいいぞ。」

見せられた画面には、
『前垢は凍結されるし、ショッピングモールではスマホで動画撮っただけで警備員に怒られるし、ちょっと抵抗したら事務所連れていきやがって、まじで許さねえ。でも俺のエンジェルはマジ天使。』
と書いてあり一緒に表示されていた画像には加工されて顔は分からなくされていたがどう見ても茶羽と黒羽が写っていた。

「なんだこれ?どうみても逆恨みじゃないか。」
「だが気を付けておいたほうがいいかもな、こういう奴はいざとなると何しでかすか分からないからな。」
「ああ、気を付けるよ。」

お互いそこまで気にしていなかった、が注意はしようと思った。

その後、庭の様子に気づいた健治が、

「ちょっとした公園みたいになってるな。」

と庭に降りて遊具などを確認していた。

「買ったはいいけど思ったより大きくてな、庭片付けて設置したんだ。」

俺の言葉に健治は呆れた顔をしていた。
しばらく庭を確認していると家の中でドタバタと音がすると縁側に茶羽と黒羽が座って靴を履こうとしていた。
香織が靴を履かせてあげると、我先にと庭に降りて二人は遊具で遊び始めた、それを見ていた健治は一緒に走り回っていた。

「二人のあの笑顔絶やさないようにしないとな。」

そうつぶやくと俺も茶羽と黒羽と健治に混ざって庭全体を使い追いかけっこを始めた。

晩飯は香織が作ってくれた焼き魚を食べてお風呂は香織が二人を入れてくれた。
俺たちも風呂に入り、二人は泊まる予定だったので、俺と健治と香織はビール片手に茶羽と黒羽はリンゴジュースを飲みながら俺たちの大学時代の事など懐かしい話で盛り上がった。
そんな中水族館の話が出て、茶羽と黒羽が興味を示し翌日みんなで行くかという事になった。
二人は水族館に行けると分かるとリビングで跳ねまわって喜んでいた。
その後も話を続けて茶羽と黒羽がウトウトしだしたころお開きにした、健治と香織を客間に案内して、俺は茶羽と黒羽が寝ているベットに潜り込んだ。

翌日目が覚めると、いつもは二人が俺の上で寝ているはずが今日は居なかった、時計を見ると7時前だった。
洗面所に行き顔を洗って一階に行くと、茶羽と黒羽は朝ご飯を作っている香織の横でお手伝いをしていた。

「おはよう、ご飯作らせて悪いな、ゆっくりしてくれてよかったのに。」
「達也さんおはようございます、せっかくだしお弁当も作ろうかと思って、そしたら茶羽ちゃんと黒羽ちゃんが起きてきて手伝ってくれてるんですよ。」
「さうはおてつだいしてるの」
「くうもおてつだい」
「そっかお手伝いしてるのか、えらいな」

二人をほめながらなでて香織にお礼を言ってリビングに戻ると、目をこすりながら健治が降りてきた。

「おはようさん、いい匂いだな。」
「おはよう、香織と茶羽と黒羽が朝ごはんと弁当作ってるぞ。」
「おっ、まじかそれは昼が楽しみだな。」

そんな会話しながら朝飯をテーブルに並べていた二人を健治がなでていた。
食事が終わると茶羽と黒羽はいつも通り朝のお手伝いを終わらせ、余所行きの服に着替えてポシェットを持ってリビングでそわそわしていた。
それを見て俺らも準備するため二階に上がっていく。
着替えて戻ってくると二人は靴を履いて玄関で待っていた、今日は健治がミニバンを持って来てくれたので、ジュニアシートを乗せ換えて茶羽と黒羽を座らせると、行きは健治が運転すると言うので俺は助手席に座る。
振り返って茶羽と黒羽と香織が乗ってるのを確認すると声をかける。

「さあいこうか。」
「はい」
「いくぞ」
「「しゅっぱーつ」」

茶羽と黒羽の掛け声に合わせて健治は車を出す。
いざ目指すは水族館。






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