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3章

3章4話(214話)

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 控室から街へと出ると、今まで見たことのないくらい、たくさんの人たちが歩いていた。その表情はとても楽しそうで、キラキラと輝いているように見えた。はぐれないように、とヴィニー殿下が手を差し出す。私はその手を取って、ぎゅっと握って歩き出した。
 確かにひとりで歩いていたらはぐれてしまいそうだと思った。

「どこか目当ての場所はある?」
「……実は、ダンスの練習ばかりしていて、チェックしていなくて……。ヴィニー殿下は?」
「うーん、魔法の関係があれば欲しいなってくらいかな?」
「……それはもしかしてクリフ様へのお土産?」
「それもあるけど、他の国の魔法も知りたいし……」

 探求心が豊かよね、ヴィニー殿下って。ディアは古代語が得意だし、ジーンは商売に興味があるみたいだし、イヴォンは好きな人と一緒になるためにがんばっている。……じゃあ、私は? ……私に出来ることって、なにかしら……?

「……ヴィニー殿下、……良かったら、私の話を聞いてくれませんか?」

 ヴィニー殿下はその言葉に、私のほうへと顔を向けてこくりとうなずいてくれた。

「それじゃあ、こっちに行こう。リザは踊ったばかりなんだから、水分補給もしないとね」

 そう言って大勢の人の中を歩いていく。途中、果物で出来たジュースを買って、昼のダンスに間に合うようにそう遠くないところにある休憩所に入った。
 椅子に座り、テーブルにジュースを置いてから、ソルとルーナを呼びだす。ソルとルーナがぴょこんと現れて、さっきのダンスの感想を伝えてくれた。

「みんなとっても綺麗だった!」
「練習の成果が出ていたな」
「ありがとう。えっと、防音の魔法をお願いできる?」

 ソルとルーナはこくりとうなずいて、私たちのところに防音の魔法を掛けてくれた。シュルシュルと音が聞こえたと思ったら、シェイドも顔を見せてくれた。
 私がジュースをひと口飲んでから、ゆっくりと息を吐く。
 マザー・シャドウとの対決後、私は舞姫としての役割を果たすために、ヴィニー殿下は建国祭を成功させるために、それぞれあまり時間が取れなかった。だから、こうして二人で話すのは久しぶりだ。

「体調は大丈夫? 疲れていない?」
「大丈夫です。そんなに長いダンスでもありませんしね」

 一曲四分から五分程度のダンスだ。人に見られながら踊るというのは、正直に言うととても緊張して、それ以上に長く感じたけれど……。もしかしたら、最終日には『終わっちゃったな』って短く感じるのかもしれない。

「こうしてゆっくり話すのは久しぶりだね。話し相手、僕で良かったの?」

 ヴィニー殿下にそう尋ねられて、私はうなずいた。アル兄様たちに相談することも考えたけれど、相談相手と考えて一番に思い出したのがヴィニー殿下だったから……。
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