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2章:新たな知識
陽紗の朝食。 1話
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朱亞は美友とともに厨房まで歩いていく。玲瓏宮から出ると、美友は一度足を止めて辺りを見渡す。
「どうしました?」
「いや、空気が違うと言っていたから、どんなもんなのかねぇと思って。私にはさっぱりだよ」
肩をすくめる美友に、朱亞は改めて空気の違いを感じようと目を閉じた。
玲瓏宮では感じなかったどんよりとした重い雰囲気。それを感じ取って朱亞はゆっくりと息を吐く。
こんなに重苦しいところでずっと過ごしていたのなら、気が滅入りそうだと思ったからだ。
だが、最初に後宮に入ったときには感じなかった。あのときは緊張していたからだろうかと考えながら、再び歩き出す。
「ところで、なにを作るんだい?」
「厨房にあるものを見てから決めます」
なにがあるのかな、とどこかわくわくしたように目を輝かせながら、歩いているとすぐに厨房についた。
すでに朝食を食べ終えた人たちが多いのか、閑散としていたので、すぐに材料を確かめてなにを作るのかを決める。
「あ、ワンタンの皮が余っていますね。餡もあるのかな」
なにが残っているのかを確認しながら美友に声をかけると、彼女は「あるよ」と答えてくれた。
「では、お腹に優しそうなワンタンスープにしましょう」
そう決めると朱亞は手を丁寧に洗い、さっそくワンタンを包み始めた。その様子をじっと見る美友は、彼女の手際の良さに感嘆の息を吐く。
ワンタンの皮を一枚手に取り、皮の縁を水で軽く濡らし、皮の中央に餡を置き包んでいった。
「手伝おうか?」
「一人前だから大丈夫ですよ」
さくさくと一人前のワンタンを包み終え、鍋に水を入れて火をかける。
別の鍋に鶏のだし汁を入れて沸騰させる。どんぶりを用意して、薄片に切った乾燥海藻を一枚、ねぎのみじん切り、薄口醤油、ごま油を入れた。
このどんぶりに鶏のだし汁を注げば、スープは完成だ。
沸騰したお湯の中にワンタンを入れて茹で、ワンタンが表面に浮き上がってきたら網杓子で取り出してどんぶりへ。
最後に沸騰した鶏のだし汁を注ぐ。ふんわりと美味しそうな香りが鼻腔をくすぐり、美友がじっとワンタンスープを見つめる。
「足りるかね?」
「どうでしょう……。とりあえず、ご飯ももらっていきましょう」
茶碗にご飯を盛って、托盘に乗せていく。箸と勺子も用意して陽紗の朝食を運ぶ。美友は「片付けるから先に行っていて」と片付けを引き受けてくれたので、朱亞は彼女に感謝の言葉を伝えてから陽紗のもとに急いだ。
お腹を空かせている彼女のために。
「どうしました?」
「いや、空気が違うと言っていたから、どんなもんなのかねぇと思って。私にはさっぱりだよ」
肩をすくめる美友に、朱亞は改めて空気の違いを感じようと目を閉じた。
玲瓏宮では感じなかったどんよりとした重い雰囲気。それを感じ取って朱亞はゆっくりと息を吐く。
こんなに重苦しいところでずっと過ごしていたのなら、気が滅入りそうだと思ったからだ。
だが、最初に後宮に入ったときには感じなかった。あのときは緊張していたからだろうかと考えながら、再び歩き出す。
「ところで、なにを作るんだい?」
「厨房にあるものを見てから決めます」
なにがあるのかな、とどこかわくわくしたように目を輝かせながら、歩いているとすぐに厨房についた。
すでに朝食を食べ終えた人たちが多いのか、閑散としていたので、すぐに材料を確かめてなにを作るのかを決める。
「あ、ワンタンの皮が余っていますね。餡もあるのかな」
なにが残っているのかを確認しながら美友に声をかけると、彼女は「あるよ」と答えてくれた。
「では、お腹に優しそうなワンタンスープにしましょう」
そう決めると朱亞は手を丁寧に洗い、さっそくワンタンを包み始めた。その様子をじっと見る美友は、彼女の手際の良さに感嘆の息を吐く。
ワンタンの皮を一枚手に取り、皮の縁を水で軽く濡らし、皮の中央に餡を置き包んでいった。
「手伝おうか?」
「一人前だから大丈夫ですよ」
さくさくと一人前のワンタンを包み終え、鍋に水を入れて火をかける。
別の鍋に鶏のだし汁を入れて沸騰させる。どんぶりを用意して、薄片に切った乾燥海藻を一枚、ねぎのみじん切り、薄口醤油、ごま油を入れた。
このどんぶりに鶏のだし汁を注げば、スープは完成だ。
沸騰したお湯の中にワンタンを入れて茹で、ワンタンが表面に浮き上がってきたら網杓子で取り出してどんぶりへ。
最後に沸騰した鶏のだし汁を注ぐ。ふんわりと美味しそうな香りが鼻腔をくすぐり、美友がじっとワンタンスープを見つめる。
「足りるかね?」
「どうでしょう……。とりあえず、ご飯ももらっていきましょう」
茶碗にご飯を盛って、托盘に乗せていく。箸と勺子も用意して陽紗の朝食を運ぶ。美友は「片付けるから先に行っていて」と片付けを引き受けてくれたので、朱亞は彼女に感謝の言葉を伝えてから陽紗のもとに急いだ。
お腹を空かせている彼女のために。
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