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2章:新たな知識

いろいろな事情 4話

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 翌朝。鳥のさえずりで目を覚ました朱亞シュアは、ゆっくりと起き上がる。

 大きな寝台とはいえ、三人で一緒に寝るとなるとそこそこせまく感じるのは、どこか懐かしさを覚えた。

 幼い頃、こうして祖父と一緒に眠ったことを思い出したのだ。あの頃の朱亞は悪鬼あっきのことを教わっては怖がり、なかなか眠れずにいた。そのことに気付いたのか、『じいちゃんも怖いから、一緒に寝ようか』と声をかけてくれたので、ほっとして祖父の寝台にもぐり込み、ぎゅっと服をつかんで眠ったものだ。

 こんなふうに誰かと一緒に眠ることは久しぶりで、なんだか心がくすぐったい。

 蘭玲ランレイ春燕チュンヤンを起こさないように、そっと寝台から抜け出して服を着替え、黄色緑柱石ヘリオドールの飾りをえりにつけた。

(今日はなにをしようかな)

 とりあえず、飛龍フェイロンが来るまでの時間のことを考える。

 桜綾ヨウリンを起こして、身支度を整え食事をして――……午前中はなかなか慌ただしくなりそうだ。

 それに、春燕の様子も気になる。とりあえず、温かいものを用意して食べてもらおうと考えて、朱亞は厨房に向かう。

「おはようございます!」
「はい、おはよう。今日も元気――いや、ちょっと元気ではないのかな?」

 朱亞の元気な挨拶を受けて、美友メイヨウが反応をしてくれた。だが、朱亞の顔を見ると途端に心配そうに眉を下げた。

「……えっと、そう見えますか?」
「なんだか疲れているように見えるよ。侍女の仕事は大変かい?」
「昨日はちょっといろいろあって……寝不足みたいです」
「そりゃ大変だ。しっかり食べてしっかり寝ないと。育ち盛りなんだから」

 美友が朱亞に近付いて、彼女の肩に手を置いて力強く言葉を紡ぐ。その様子にこてんと首を傾げたが、すぐに「はい」とうなずく。

「ところで、こんな早朝からここにきていいのかい?」
「あ、実は作りたいものがあって……」

 朱亞が胸元で両手を合わせてお願いすると、美友はすぐに許可してくれた。

 ほっと息を吐いて、彼女を見上げると、茶目っ気たっぷりに片目を閉じるのが見えた。小さく頭を下げて、食材と土鍋を使わせてもらう。

 作るのは白米粥だ。

 水が透き通るまで米を数回洗い、水気を切り、土鍋に米を入れて水を注ぎ三十分浸しておく。

 そのあいだに搾菜ザーサイや干し大根の漬物などがあるかを聞き、用意してもらった。

 お茶の煮卵や、アヒルの塩漬け卵も渡されて朱亞は目をまたたかせ、

「こんなにいただいて良いのですか?」
 思わずそうたずねた。
「構わないよ。大量にあるからねぇ」

 にっと白い歯を見せる美友に、朱亞は「ありがとうございます!」と表情を明るくさせた。そうしているうちに三十分経過したので、土鍋を火にかける。

 沸騰するまでは強火で加熱し、沸騰したら火力を弱めてとろ火で米粒がとろとろになるまで加熱を続ける。ときどきかき混ぜるのを忘れてはいけない。

 出来上がった白米粥と、美友が用意してくれた搾菜などを托盘に置き、茶碗なども用意するとなかなかの重さになってしまった。

 さて、どうやって持ち運ぼうかと悩んでいると、「朱亞さん!」と蘭玲の声が聞こえてきた。どうやら彼女も目が覚めたらしい。

「蘭玲さん、ちょうど良いところに」
「……え?」
「朝ごはん、みんなで食べましょう!」
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