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1章:出会い
始まりの日 10話
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彩り豊かな服を着ている数人の女性たち。着ている服の生地がとても高いものだろうと判断し、朱亞は女性たちの顔を見渡し――にこりと人懐っこそうに微笑む。
「改めてご挨拶いたします。胡貴妃に仕える朱亞と申します。出身が田舎なので、いろいろ教えていただけるととても嬉しいです!」
左手に拳を作り、右手を添えて目を閉じる。その姿を見て、女性たちは顔を見合わせてから、ひとりの女性が声をかけた。
「――朱亞とお呼びしても?」
「はい、構いません」
「では、朱亞。こちらも自己紹介しますね」
朱亞は目を開けて女性を見る。彼女は自身の胸元に手を置いて口を開く。
「唐小鈴よ」
ややくすんだ明るい茶色の髪を結い上げ、かんざしでまとめている。少し青みのある薄い紫色の瞳を持つ女性が、朱亞を真っ直ぐに見つめて名前を教えてくれた。
「私は淑妃の位を与えられたわ。昨日」
「昨日?」
目を丸くする朱亞に、彼女はこくりと首を動かす。そして、ちらりと別の女性に視線を向けた。その視線を受けた女性が軽く手を上げる。
「于若曦。徳妃になった」
赤から紫に近い髪色で、ふわふわとしていた。その髪をひとつにまとめている。焦げ茶の瞳は切れ長で朱亞のことをじっくりと眺めていた。
「賢妃の肖雹華です。……よろしくね」
最後に腰まである長い白髪に、灰色の瞳。日差しを避けるためだろうか、彼女の傍には侍女いて傘をさしている。
「私たち全員、昨日位が決まったのよ」
ふふ、と笑う姿を見て、彼女たちからは敵意を感じないと思った朱亞は、少し安堵した。
「陛下が即位されてから集められたの、私たち。だから、それなりに仲が良くなったのよ。なんせ、陛下は一度もお渡りにならなかったからね」
え、と朱亞は目を大きく見開いた。その反応に、妃たちはくすくすと優雅に笑う。
「でも、そうね。確かの朱亞のような髪色は見たことがないわ。私たちだって茶髪や赤髪、白髪だものね」
「染めているの?」
朱亞はふるふると首を横に振る。物心がついた頃からこの髪色だった。
故郷の村でも目立つくらいに。
村でも黒髪や茶髪が多かったので、朱亞はとても見つけやすいと村人たちが和やかに言っていたことを思い出し、小さく笑みを浮かべた。
「どうしたの?」
「あ、ええと。私が暮らしていた村でも、私のような髪色をした人はいなくて……その代わりに『見つけやすい』と言われていたことを思い出しました。旅をしていたときも、同じ髪色の人は見たことありませんね……」
旅、という言葉に反応したのか、雹華がそっと朱亞の肩に手を置いた。彼女の肌はとても白くて、雪のようだと朱亞は思う。
「あなたの旅のお話を、聞いてみたいわ」
雹華の言葉に、小鈴と若曦も賛成した。その様子を見て、今まで戸惑ったまま動けずにいた蘭玲がようやく口を開く。
「あの、それでは胡貴妃の宮にいきませんか?」
「え? でも……」
まだ調度品が……と言おうとした朱亞に、蘭玲は安心させるように笑みを見せた。
「改めてご挨拶いたします。胡貴妃に仕える朱亞と申します。出身が田舎なので、いろいろ教えていただけるととても嬉しいです!」
左手に拳を作り、右手を添えて目を閉じる。その姿を見て、女性たちは顔を見合わせてから、ひとりの女性が声をかけた。
「――朱亞とお呼びしても?」
「はい、構いません」
「では、朱亞。こちらも自己紹介しますね」
朱亞は目を開けて女性を見る。彼女は自身の胸元に手を置いて口を開く。
「唐小鈴よ」
ややくすんだ明るい茶色の髪を結い上げ、かんざしでまとめている。少し青みのある薄い紫色の瞳を持つ女性が、朱亞を真っ直ぐに見つめて名前を教えてくれた。
「私は淑妃の位を与えられたわ。昨日」
「昨日?」
目を丸くする朱亞に、彼女はこくりと首を動かす。そして、ちらりと別の女性に視線を向けた。その視線を受けた女性が軽く手を上げる。
「于若曦。徳妃になった」
赤から紫に近い髪色で、ふわふわとしていた。その髪をひとつにまとめている。焦げ茶の瞳は切れ長で朱亞のことをじっくりと眺めていた。
「賢妃の肖雹華です。……よろしくね」
最後に腰まである長い白髪に、灰色の瞳。日差しを避けるためだろうか、彼女の傍には侍女いて傘をさしている。
「私たち全員、昨日位が決まったのよ」
ふふ、と笑う姿を見て、彼女たちからは敵意を感じないと思った朱亞は、少し安堵した。
「陛下が即位されてから集められたの、私たち。だから、それなりに仲が良くなったのよ。なんせ、陛下は一度もお渡りにならなかったからね」
え、と朱亞は目を大きく見開いた。その反応に、妃たちはくすくすと優雅に笑う。
「でも、そうね。確かの朱亞のような髪色は見たことがないわ。私たちだって茶髪や赤髪、白髪だものね」
「染めているの?」
朱亞はふるふると首を横に振る。物心がついた頃からこの髪色だった。
故郷の村でも目立つくらいに。
村でも黒髪や茶髪が多かったので、朱亞はとても見つけやすいと村人たちが和やかに言っていたことを思い出し、小さく笑みを浮かべた。
「どうしたの?」
「あ、ええと。私が暮らしていた村でも、私のような髪色をした人はいなくて……その代わりに『見つけやすい』と言われていたことを思い出しました。旅をしていたときも、同じ髪色の人は見たことありませんね……」
旅、という言葉に反応したのか、雹華がそっと朱亞の肩に手を置いた。彼女の肌はとても白くて、雪のようだと朱亞は思う。
「あなたの旅のお話を、聞いてみたいわ」
雹華の言葉に、小鈴と若曦も賛成した。その様子を見て、今まで戸惑ったまま動けずにいた蘭玲がようやく口を開く。
「あの、それでは胡貴妃の宮にいきませんか?」
「え? でも……」
まだ調度品が……と言おうとした朱亞に、蘭玲は安心させるように笑みを見せた。
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