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1章:出会い
始まりの日 6話
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「そう、朱亞ちゃんっていうの」
「はい。昨日きたばかりなんです」
そしてそのうちに、朱亞のところにわらわらと集まってきた厨房で働いている人たちが、椅子を持ってきて朱亞を座らせる。
気付けば雑談が始まり、朱亞はおやつまでもらっていた。胡麻団子と熱いお茶をいただきながら、これまでの経緯を簡単に説明すると同情のまなざしを向けられた。
「唯一の家族を亡くして旅立ったのかい……」
「それは大変だったね……」
ほろりと涙を流す女性を見て、朱亞は勢いよく両手を振る。
「でも、旅をしたおかげで、こうしてみなさんに会えました」
「出会ってまだ一時間も経ってないよ」
「はい。それでも人の出会いは縁ですから。縁がない人にはそもそも出会わないと祖父から教わりました。なので、みなさんと出会えたのも『縁』だと思います」
朱亞は少し照れたように頬を赤く染めて、照れ隠しのように胡麻団子を食べる。香ばしい胡麻の香りが鼻を抜けていく。程よくもちもちの団子の部分と、ほんのり甘い餡子が口の中で調和されて美味しい。
「甘さがちょうど良いです!」
「だろう? うちの胡麻団子は人気なんだよ」
昨日、朱亞に掃除道具の場所を教えてくれた女性が、自信満々に胸を張っていた。
「あ、昨日の。厨で働いている方だったのですね」
「ああ。掃除は捗ったかい?」
「おかげさまで! 助かりました」
改めてお礼を伝えると、女性は「そんなにかしこまらなくて良いって」と手を軽く振る。
おやつをいただいている間に、桜綾と蘭玲の話が終わったようで、厨房に戻ってきた。椅子に座り中年の女性たちに囲まれている姿を見て、桜綾はふっと表情を緩めた。すっかり厨房で働く人たちと仲良くなっている、と。
帝都につくまでの道中もそうだった。朱亞と話している人たちは、気付けば彼女のことを可愛がっていて、別れを惜しむこともいわれていた。そのことを思い返しながら、桜綾は彼女に近付く。
「胡貴妃!」
桜綾に気付いて、朱亞がぱっと表情を明るくさせる。
そして、その言葉で飛龍が迎えにいった『絶世の美女』だと全員が気付いた。
「初めまして、みなさま。胡桜綾と申します。以後、お見知りおきを」
にこりと微笑む桜綾。眩しそうに目元を細める女性たち。そんな彼女たちを見て、朱亞はその光景を眺めて微笑んだ。彼女の美貌を間近で見たら、そういう反応になるだろうと考え、すっかり飲み頃になったお茶を一気に飲み干す。
「お話は終わったのですか?」
「ええ。美味しい朝食をありがとうございました。これからもよろしくお願いいしますね」
桜綾は朱亞に手を差し伸べる。その手を取るように朱亞は椅子から立ち上がり、女性に「ごちそうさまでした!」と笑顔で一礼してから、桜綾の手をしっかりと握った。
「はい。昨日きたばかりなんです」
そしてそのうちに、朱亞のところにわらわらと集まってきた厨房で働いている人たちが、椅子を持ってきて朱亞を座らせる。
気付けば雑談が始まり、朱亞はおやつまでもらっていた。胡麻団子と熱いお茶をいただきながら、これまでの経緯を簡単に説明すると同情のまなざしを向けられた。
「唯一の家族を亡くして旅立ったのかい……」
「それは大変だったね……」
ほろりと涙を流す女性を見て、朱亞は勢いよく両手を振る。
「でも、旅をしたおかげで、こうしてみなさんに会えました」
「出会ってまだ一時間も経ってないよ」
「はい。それでも人の出会いは縁ですから。縁がない人にはそもそも出会わないと祖父から教わりました。なので、みなさんと出会えたのも『縁』だと思います」
朱亞は少し照れたように頬を赤く染めて、照れ隠しのように胡麻団子を食べる。香ばしい胡麻の香りが鼻を抜けていく。程よくもちもちの団子の部分と、ほんのり甘い餡子が口の中で調和されて美味しい。
「甘さがちょうど良いです!」
「だろう? うちの胡麻団子は人気なんだよ」
昨日、朱亞に掃除道具の場所を教えてくれた女性が、自信満々に胸を張っていた。
「あ、昨日の。厨で働いている方だったのですね」
「ああ。掃除は捗ったかい?」
「おかげさまで! 助かりました」
改めてお礼を伝えると、女性は「そんなにかしこまらなくて良いって」と手を軽く振る。
おやつをいただいている間に、桜綾と蘭玲の話が終わったようで、厨房に戻ってきた。椅子に座り中年の女性たちに囲まれている姿を見て、桜綾はふっと表情を緩めた。すっかり厨房で働く人たちと仲良くなっている、と。
帝都につくまでの道中もそうだった。朱亞と話している人たちは、気付けば彼女のことを可愛がっていて、別れを惜しむこともいわれていた。そのことを思い返しながら、桜綾は彼女に近付く。
「胡貴妃!」
桜綾に気付いて、朱亞がぱっと表情を明るくさせる。
そして、その言葉で飛龍が迎えにいった『絶世の美女』だと全員が気付いた。
「初めまして、みなさま。胡桜綾と申します。以後、お見知りおきを」
にこりと微笑む桜綾。眩しそうに目元を細める女性たち。そんな彼女たちを見て、朱亞はその光景を眺めて微笑んだ。彼女の美貌を間近で見たら、そういう反応になるだろうと考え、すっかり飲み頃になったお茶を一気に飲み干す。
「お話は終わったのですか?」
「ええ。美味しい朝食をありがとうございました。これからもよろしくお願いいしますね」
桜綾は朱亞に手を差し伸べる。その手を取るように朱亞は椅子から立ち上がり、女性に「ごちそうさまでした!」と笑顔で一礼してから、桜綾の手をしっかりと握った。
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