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1章:出会い
後宮 8話
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「そういえば、陛下が美女を連れてきたって聞いたわ。その人なの?」
「はい。とってもきれいな人ですよ。女性でも見惚れちゃうくらい!」
朱亞は桜綾の美しさを絶賛した。女性は興味深そうに相槌を打ちながら歩いている。
掃除道具のある場所を教えてもらい、彼女に礼を伝えると「いや、……まぁ、がんばんなさいね」と朱亞の肩を励ますように叩かれ、彼女はじっと女性を見つめた。
「そんなにきれいな宝石を持っているんだ。朱亞、だっけ。あんたもいいとこのお嬢さんなんだろう?」
「いいえ。私は山奥の出身なので。これは先程いただいたものです」
首元の装飾品。黄色緑柱石はきらりと輝いている。
「すごいね、宝石を贈られるなんて」
「いろいろあって……」
朱亞は自分が村から旅立った日を思い出す。本当に、いろいろなことがあった。
旅をしていた頃の出来事を懐かしむように目元を細めると、掃除道具を持って女性に対して笑顔を見せる。
「なにはともあれ、まずは掃除が先です! きれいにするので、あとで遊びにきてくださいね」
朱亞はもう一度、「案内ありがとうございました」と礼を伝えると、駆けだす。残された女性はぽかんと口を開けて彼女の背中を見送った。
自室に戻ると、朱亞はまず鞄の中から三角巾を二枚取りだし、一枚は頭に、一枚は口元につけた。埃から身を守るために。
「よーし、やるぞー!」
ぐっと右手を天に突きだして声を発する。こうすると、気合が入るのだ。
はたきを使い上から埃を落とし、ほうきと塵取りで埃を集めていく。
ふと、部屋の外に人の気配を感じて振り返ると、開けっ放しだった扉から、そろりと顔を覗かせる――性別不明の人が立っていた。
「あのぅ?」
朱亞が声をかけると、その人はおずおずと姿を見せた。ふわふわの髪はまるで金糸雀のようだ。そして、瞳は瑠璃色で顔にはそばかすが見える。
「――あのぅ?」
「あ、の!」
朱亞よりも背の高い人だった。声も高いようで、同時に声をだしてふたりは一瞬固まった。
「ええと、どうぞ」
「あ、すみません。ええと、陛下にいわれてこの宮にきたのですが、胡貴妃とお話はできますか?」
もじもじと両手をすり合わせて朱亞をうかがうように見る人に、少し考え込む。
『余が信頼する宦官を派遣する。その者からいろいろ受け取れ』
――確か、飛龍がそういっていた。
「あの、もしかして、なんですけれど……陛下に仕える宦官、でしょうか?」
「あ、はい、そうです。ぼくは梁燗流。ええと、よろしくお願いします」
にこりと微笑んだ燗流を見て、朱亞も「よろしくお願いします」と笑顔を見せる。
「はい。とってもきれいな人ですよ。女性でも見惚れちゃうくらい!」
朱亞は桜綾の美しさを絶賛した。女性は興味深そうに相槌を打ちながら歩いている。
掃除道具のある場所を教えてもらい、彼女に礼を伝えると「いや、……まぁ、がんばんなさいね」と朱亞の肩を励ますように叩かれ、彼女はじっと女性を見つめた。
「そんなにきれいな宝石を持っているんだ。朱亞、だっけ。あんたもいいとこのお嬢さんなんだろう?」
「いいえ。私は山奥の出身なので。これは先程いただいたものです」
首元の装飾品。黄色緑柱石はきらりと輝いている。
「すごいね、宝石を贈られるなんて」
「いろいろあって……」
朱亞は自分が村から旅立った日を思い出す。本当に、いろいろなことがあった。
旅をしていた頃の出来事を懐かしむように目元を細めると、掃除道具を持って女性に対して笑顔を見せる。
「なにはともあれ、まずは掃除が先です! きれいにするので、あとで遊びにきてくださいね」
朱亞はもう一度、「案内ありがとうございました」と礼を伝えると、駆けだす。残された女性はぽかんと口を開けて彼女の背中を見送った。
自室に戻ると、朱亞はまず鞄の中から三角巾を二枚取りだし、一枚は頭に、一枚は口元につけた。埃から身を守るために。
「よーし、やるぞー!」
ぐっと右手を天に突きだして声を発する。こうすると、気合が入るのだ。
はたきを使い上から埃を落とし、ほうきと塵取りで埃を集めていく。
ふと、部屋の外に人の気配を感じて振り返ると、開けっ放しだった扉から、そろりと顔を覗かせる――性別不明の人が立っていた。
「あのぅ?」
朱亞が声をかけると、その人はおずおずと姿を見せた。ふわふわの髪はまるで金糸雀のようだ。そして、瞳は瑠璃色で顔にはそばかすが見える。
「――あのぅ?」
「あ、の!」
朱亞よりも背の高い人だった。声も高いようで、同時に声をだしてふたりは一瞬固まった。
「ええと、どうぞ」
「あ、すみません。ええと、陛下にいわれてこの宮にきたのですが、胡貴妃とお話はできますか?」
もじもじと両手をすり合わせて朱亞をうかがうように見る人に、少し考え込む。
『余が信頼する宦官を派遣する。その者からいろいろ受け取れ』
――確か、飛龍がそういっていた。
「あの、もしかして、なんですけれど……陛下に仕える宦官、でしょうか?」
「あ、はい、そうです。ぼくは梁燗流。ええと、よろしくお願いします」
にこりと微笑んだ燗流を見て、朱亞も「よろしくお願いします」と笑顔を見せる。
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