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1章:出会い
帝都にて 3話
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巻き込まれたことは確かだが、朱亞はそれについてなにも言うつもりはない。
巻き込まれることを決めたのは、自分自身だからだ。
だから、梓豪の顔を見上げて、安心させるように微笑みを浮かべる。
「大丈夫ですよ。これは私が決めたことですから」
「しかし……」
「それに、一生出られないというわけではなさそうですし」
桜綾が飛龍にかけ合っていたようで、後宮での『仕事』を終えれば出ていっても良いという言葉を勝ち取ったらしい。
「どのくらいの期間になるかはわかりませんが、私は桜綾さんの侍女として、がんばってみたいと思います」
真っ直ぐに若緑色の瞳で梓豪を見つめた。その瞳は澄み切っていて、これからの生活に不安は感じられない。
(――強い、な)
梓豪は蒲公英色の瞳を、まぶしいものを見るかのように細めた。そして、朱亞がそわそわとなにかを聞きたそうにしていることに気付き、「どうしました?」と声をかけた。
「あの、ずっと気になっていたのですが、聞いても良いですか?」
「どうぞ」
いったいなにを聞きたかったのだろうか、と梓豪は朱亞を眺める。朱亞は指をもじもじとさせながら、ゆっくりと口を開く。
「……梓豪さんは」
どんな質問が来てもいいように身構えていた梓豪は、続いた言葉に目を大きく見開いた。
「何歳なんですか?」
「え、歳、ですか?」
思わず変に高い声が出た梓豪は、一度口元を手で覆い、こほんと気を取り直すように咳払いをした。朱亞はこくりと首を縦に動かす。
「陛下の年齢は知りましたが、梓豪さんの年齢は知らないな、とずっと気になっていたんです。あ、もちろん言いたくなければ――」
「十七歳です」
「え」
「十七歳です。今年、十八歳になりますが」
朱亞は目を丸くする。自分よりも年上だとは思っていたが、想像以上に若かった。
「意外でしたか?」
その様子にくすりと笑う梓豪。朱亞は慌てて両手を前に出して、勢いよく左右に振る。
「いえ、あのっ、私より年上だとは思っていたのですが……まさか四歳しか違わないとは思いませんでした」
彼は落ち着いているように見えるので、飛龍と同じくらいの年齢だと思っていたと話す朱亞に、梓豪は彼女から見た自分の様子に照れたように頬を赤らめる。
「そうですか?」
「はい。……きっと陛下のお傍にいるために、必要な落ち着きだったのですね」
感慨深そうにつぶやく朱亞に、梓豪は頬を人差し指で軽く掻き、今までのことを思い返す。
重い役目を背負っているとはいえ、自由奔放な飛龍の姿を思い浮かべて視線を彼女からそらし、馬車の窓から外を眺めた。
巻き込まれることを決めたのは、自分自身だからだ。
だから、梓豪の顔を見上げて、安心させるように微笑みを浮かべる。
「大丈夫ですよ。これは私が決めたことですから」
「しかし……」
「それに、一生出られないというわけではなさそうですし」
桜綾が飛龍にかけ合っていたようで、後宮での『仕事』を終えれば出ていっても良いという言葉を勝ち取ったらしい。
「どのくらいの期間になるかはわかりませんが、私は桜綾さんの侍女として、がんばってみたいと思います」
真っ直ぐに若緑色の瞳で梓豪を見つめた。その瞳は澄み切っていて、これからの生活に不安は感じられない。
(――強い、な)
梓豪は蒲公英色の瞳を、まぶしいものを見るかのように細めた。そして、朱亞がそわそわとなにかを聞きたそうにしていることに気付き、「どうしました?」と声をかけた。
「あの、ずっと気になっていたのですが、聞いても良いですか?」
「どうぞ」
いったいなにを聞きたかったのだろうか、と梓豪は朱亞を眺める。朱亞は指をもじもじとさせながら、ゆっくりと口を開く。
「……梓豪さんは」
どんな質問が来てもいいように身構えていた梓豪は、続いた言葉に目を大きく見開いた。
「何歳なんですか?」
「え、歳、ですか?」
思わず変に高い声が出た梓豪は、一度口元を手で覆い、こほんと気を取り直すように咳払いをした。朱亞はこくりと首を縦に動かす。
「陛下の年齢は知りましたが、梓豪さんの年齢は知らないな、とずっと気になっていたんです。あ、もちろん言いたくなければ――」
「十七歳です」
「え」
「十七歳です。今年、十八歳になりますが」
朱亞は目を丸くする。自分よりも年上だとは思っていたが、想像以上に若かった。
「意外でしたか?」
その様子にくすりと笑う梓豪。朱亞は慌てて両手を前に出して、勢いよく左右に振る。
「いえ、あのっ、私より年上だとは思っていたのですが……まさか四歳しか違わないとは思いませんでした」
彼は落ち着いているように見えるので、飛龍と同じくらいの年齢だと思っていたと話す朱亞に、梓豪は彼女から見た自分の様子に照れたように頬を赤らめる。
「そうですか?」
「はい。……きっと陛下のお傍にいるために、必要な落ち着きだったのですね」
感慨深そうにつぶやく朱亞に、梓豪は頬を人差し指で軽く掻き、今までのことを思い返す。
重い役目を背負っているとはいえ、自由奔放な飛龍の姿を思い浮かべて視線を彼女からそらし、馬車の窓から外を眺めた。
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