【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?

秋月一花

文字の大きさ
上 下
66 / 66

そして始まる、私たちの物語! 6-2(完)

しおりを挟む

「レオンハルトさま、どうか謝らないでください」

 レオンハルトさまの頬を包み込むように手を添えると、レオンハルトさまは驚いたように目をみはった。そして、口を開こうとして、閉じる。また、『すみません』という言葉が出かかったのだろう。

「……ありがとうございます」

 少し悩んでから、レオンハルトさまが言葉を選ぶようにゆっくりとそう口にした。

「エリカ嬢はお優しいですね」
「わ、私が?」

 目をパチパチと数回瞬かせ、思わずレオンハルトさまを凝視してしまった。ふふ、と笑うレオンハルトさまに首を傾げると、抱きしめていた手を緩めて、私の頭に手を置く。

「ええ。とても優しいので、甘えたくなってしまいます。オレのほうが年上なのにね」

 なんて悪戯っぽく笑うレオンハルトさまに、きゅん! とした。可愛くて、格好良くて、これ以上好きにさせてどうするつもり!? と胸の高鳴りが止まらない。鼓動が早鐘を打つのを感じながら、レオンハルトさまをずっと見つめていた。

 愛しそうに私を見るレオンハルトさまに負けないくらいの愛を伝えるために、今度は私から抱きついた。

「嬉しいですわ、レオンハルトさまに甘えていただけるなんて。……私もレオンハルトさまに甘えて、よろしいでしょうか?」
「もちろんですよ、なんでも頼ってください」
「ふふっ、頼もしいですわね」

 そう遠くない未来に、私たちは肩を並べているだろう。そのときにはどんな気持ちになっているのかな?

「……フォルクヴァルツで、どんな風に暮らしたいという希望はありますか?」

 レオンハルトさまが急にそんなことを聞いてきたので、身体を離して「そうですね……」と考える。私たちが幸せで、フォルクヴァルツの領民たちが幸せに暮らすためには、なにが出来るだろうか。

「――みんなが幸せに暮らせるような、領地にしたいですね」
「……自分が、ではなくて?」
「あら、レオンハルトさまの傍にいられることが、私の幸せですわ。ですから、みなさんにもお裾分けをしないと」

 くすくすと笑いながらそう言うと、レオンハルトさまはキョトンとした表情を浮かべて、それから「ふはっ」と笑い出した。肩を震わせて笑っているので、なにか変なことを言ってしまったかしら? と小首を傾げる。

「いや、素敵な考えだな、と思いまして。……そうですね、オレたちの幸せと、領民たちの幸せのために、がんばりましょうか」
「はい。レオンハルトさまとなら、なんでも出来る気がしますわ」

 ダニエル殿下の婚約者になったあとに学んだことを、好きな人のために使うことになるとは思わなかったけれど、学んだことは活かしていかないとね!

 だってこれからも、レオンハルトさまと一緒にいたいもの。そのために、出来ることはがんばるわ。

 これから始まる私たちの物語は、絶対にこれ以上の幸せが待っていると感じているの。

 愛する人と一緒に、フォルクヴァルツを支えていくわ!

 そう心に決めて、もう一度、レオンハルトさまと唇を重ねた。




―Fin―
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。 それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから! 婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。 え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!? おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。 ※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。

虐げられ令嬢の最後のチャンス〜今度こそ幸せになりたい

みおな
恋愛
 何度生まれ変わっても、私の未来には死しかない。  死んで異世界転生したら、旦那に虐げられる侯爵夫人だった。  死んだ後、再び転生を果たしたら、今度は親に虐げられる伯爵令嬢だった。  三度目は、婚約者に婚約破棄された挙句に国外追放され夜盗に殺される公爵令嬢。  四度目は、聖女だと偽ったと冤罪をかけられ処刑される平民。  さすがにもう許せないと神様に猛抗議しました。  こんな結末しかない転生なら、もう転生しなくていいとまで言いました。  こんな転生なら、いっそ亀の方が何倍もいいくらいです。  私の怒りに、神様は言いました。 次こそは誰にも虐げられない未来を、とー

剣豪令嬢と家出王子の逃避行

藍田ひびき
恋愛
第二王子ユリウスの婚約者である伯爵令嬢ルイーゼは、王子の母親である王妃から、一方的に婚約破棄を告げられた。 ルイーゼは傷物令嬢として社交界で肩身の狭い思いをするより、剣の道に生きようと決める。 実は、ルイーゼは剣の達人だったのだ。 家族の反対を押し切って実家を出奔したルイーゼは、冒険の旅に出る。 だが、そこにユリウス王子が追いかけてきて……? ※完結しました。番外編は登場人物のその後や、本編のサイドストーリーとなります。 ※恋愛小説大賞にエントリーしました。

悪役令嬢の逆襲

すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る! 前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。 素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!

【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には

月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。 令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。 愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ―――― 婚約は解消となった。 物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。 視点は、成金の商人視点。 設定はふわっと。

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

処理中です...