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お茶会 後編
しおりを挟むでも、この状況でパレードなんて行えるとは思えない。ダニエル殿下と私の婚約破棄は、パレードの準備をしていた人たちを困惑させただろうと思うと、心が痛む。
「彼女の頭が冷えるまで、かしらねぇ? あの子、かなりわけのわからないことを言っていたから」
「どんなことなのか、お聞きしても?」
「ええ。『ヒロインはわたくしなのに!』とか、『どうしてあの力が目覚めないの!?』とか、『このままじゃエリカさまが幸せになっちゃう!』とか言っていたわねぇ」
……ゲームのヒロインに転生したけれど、あの不思議な力は使えないってことよね。最後に関しては、どうしてそこまで私を幸せにしたくないのかわからない。彼女に恨まれることをした覚えはないのだけど。
「本当にわかりませんね、なにを言っているのか」
呆れたように眉を寄せるレオンハルトさま。言っている意味を理解できるのは、きっと私だけね。
デイジーさまはお茶を飲んで「そうでしょう?」と口にした。
「あの子と話していると頭が痛くなるのよね。この世のすべてを自分のものだと思っている感じがして」
……まぁ、ダニエル殿下ルートでは国母になるし、間違ってはいない? なんて考えながらもお茶を飲む。スッキリとした後味のお茶だった。私の物語もこのくらいスッキリとした結末を迎えてくれると嬉しい。
「それはまた、男爵令嬢とは思えないですね……」
「ダニエルはどうしてあんな子を選んじゃったのかしら。まったく、女を見る目がないのだから。……その点、フォルクヴァルツ辺境伯は良いタイミングだったわね」
「お見合いの相手がエリカ嬢で驚きました」
デイジーさまに向けて爽やかな笑顔を見せるレオンハルトさま。その笑みを見て、デイジーさまはマカロンを手に取った。ぱくりと食べて大きくうなずく。
「エリカ嬢との婚約破棄の話は、一瞬で広まったものね。あのパーティーに記者が呼ばれていたみたい」
「そうなのですか……?」
まぁ、確かに王族であるダニエル殿下が卒業するのだから、それを記事にしたいと来ていたのかもしれない。それがまさかの婚約破棄騒動。号外は飛ぶように売れたと聞いたけれど、本当かしら?
「あなたたちは、いつフォルクヴァルツに向かうの?」
「用意が出来たら、すぐにでも」
「そう。寂しくなるわねぇ……」
デイジーさまが頬に手を添えて小さく息を吐く。それでも、最後には笑って、
「幸せになりなさい、ふたりとも」
と、祝福してくれた。
「ありがとうございます」
同時にそう言うと、デイジーさまは目を丸くして、それから「お似合いのふたりね」と言ってくれた。
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