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アデーレの言ったこと 2-1
しおりを挟む自室に戻り、家用のラフなドレスに着替える。レオンハルトさまと食事を摂るのだから、ラフなドレスと言ってもラフすぎないものを選んだ。
それから、考えたいことがあるからとメイドたちを部屋から出して、私の記憶をまとめたノートを取り出す。
このノートは私が前世の記憶を思い出したときに、頭の中を整理しようと書き連ねたものだ。日本語で書いたから、この世界の人たちには読めないはずだ。
でも、なんでそんな文字が書けるのかと怪しまれる可能性を考慮して、鍵のかかる引き出しの中に入れていた。ひとりだけのときにこっそり見返して、乙女ゲームとの違いを確認することに使っていたけれど……。学園に入学してから、見返すことは少なくなっていたのよね。
なぜなら……、学園生活が思いのほか楽しくて、アデーレとダニエル殿下に近付かないようにすればいいかなって考えちゃったからだ。
――なぜか、卒業パーティーでの婚約破棄イベントは発生したけど。
まぁ、元々学園を卒業したら、お父さまたちに話して、婚約を白紙にしてもらおうとは思っていたけれどね。ダニエル殿下に想い人がいると話せば、きっと両親は私の味方になってくれると考えていたし。
「私が居ないと発生しないイベント……」
アデーレの言ったことを思い出しながら、呟く。手に取ったノートをぱらりと捲る。椅子に座って乙女ゲームの流れを思い出す……。でも、あんまりはっきりとは思い出せないのよね。
私が前世の記憶を思い出して、ノートに最初に書いた文章は、エリカ・レームクールの破滅を防ぐ、だった。
――破滅……。あ、そうよ、それだ!
パラパラとゲームのエンディングを書いたページを捲り、その文字に目を通す。
「――これね」
ゲームのエンディング。それは――……、ダニエル殿下とアデーレの婚約を発表し、彼らの行く末を祝福するパレードが行われる。
元々は、私がダニエル殿下と結婚するためのパレードだったが、婚約破棄をされてしまい、アデーレが彼の隣に立つことになるのだ。
そして、ゲームのエリカは失意の中、そのパレードを目にして、アデーレをいじめていた報いを受ける――……。突然、白い光に包まれて『エリカ』の精神が崩壊してしまうのだ。
「……絶対、それだけはイヤ……!」
ぶるり、と身体が震えた。自分を抱きしめるように腕を掴む。ゲームと同じ進行ではない今――私たちは一体、どんな結末を迎えるのだろう?
私がしてきたことは、間違いではないと思う。レームクール家の人たちを、破滅に導きたくないし、私だって意味もなき断罪を受ける理由はない。
それに、レオンハルトさまに出逢えた。――絶対に、私は私を守ってみせる。家族のために、レオンハルトさまのために、そして――自分自身のために。
ぐっと拳を握って固く決意を胸にすると、控えめなノックの音が聞こえた。――もう、食事の時間になったのかしら?
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