【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?

秋月一花

文字の大きさ
上 下
34 / 66

謁見 2-2

しおりを挟む

 過ごした時間が短いなんて、私にとっては些細なこと。これから長い間一緒にいるのだから、この愛は深まっていく予感がする。

 私があまりにもきっぱりと言ったからだろうか、ダニエル殿下とアデーレは、わなわなと拳を握って震えていた。

 そっとレオンハルトさまが私の手を握る。それに気付いて、私がレオンハルトさまを見ると、彼は優しいまなざしを私に向けていた。

 ――ああもう、本当に、すっごく格好良い……!

 レオンハルトさまは私からダニエル殿下とアデーレに視線を移動させて、それからにっこりと微笑みを浮かべた。

「――確かに、ダニエル殿下とアデーレ・ボルク男爵令嬢のおかげでエリカに出逢えたので……感謝しています。彼女との婚約を白紙にしていただけて」

 ダニエル殿下はカッとしたように顔を真っ赤にさせた。アデーレはレオンハルトさまを憎々し気に睨んでいるし……一体なにがどうなっているのやら。

「ダニエル殿下はアデーレ嬢と婚約するのでしょう? エリカとはもう関係ないではありませんか。どうしてそんなに顔を赤くさせて激昂しているのです? まさか、彼女が自分以外を選ぶわけがないと考えていた、なんてことはありませんよね?」

 煽ってる? 煽っているの? そんな爽やかな笑顔で? ああ、でも怒気が目に見えるようだわ……。そんなところも素敵。

 ダニエル殿下が「誰かあいつの口を塞げ!」と騒いだけど、誰もダニエル殿下の言うことは聞かなかった。……オイゲン陛下がとても冷たい目でダニエル殿下を見つめる。

 ……一体、なにが起ころうとしているの?

「……王として、父として情けない。エリカ・レームクール伯爵令嬢、よく八年もの間耐えてくれた。レオンハルト・フォルクヴァルツ辺境伯、エリカ嬢をよろしく頼む」
「はい、お任せください。ふたりで幸せになります」

 レオンハルトさま、私が言ったことを覚えていてくださったのね。

 そして、今現在、とても幸せです! とは口を挟めない雰囲気。戸惑っている私に、アデーレが叫んだ。

「ダメよ! エリカさまが国内に居ないと、あのイベントが発生しないじゃない!」
「……アデーレ? なにを言っているんだ?」

 ダニエル殿下が驚いたように彼女を見た。そして私は、イヤな予感が的中したことを知る。これ、ヒロインも転生しているパターンだ! よく小説や漫画であるよね!

「おかしいのよ! だってこの世界はわたくしのための世界なのに!」

 そのセリフがおかしいことに気付いて……!

 困惑しているダニエル殿下たちに対して、デイジーさまは冷静だった。凛とした声で、「錯乱しているようだから、大人しくさせなさい」と護衛たちに命じた。

 腕を掴まれて動きを封じられたアデーレは、ダニエル殿下に助けを求めたけど、彼はアデーレの豹変についていけないようで、なにも言えずにいた。いや、戸惑っているのは私たちもなんだけど……。

「わたくしはこの国の国母になるのよ! 離しなさい!」
「頭を冷やせるところへ連れていきなさい。そうね、塔の最上階なんていかが?」

 デイジーさまは扇子を広げて口元を隠し、淡々とした口調でそう言うと、オイゲン陛下へ視線を向けた。陛下が「王妃の言う通りに」と一言告げると、護衛たちはジタバタと暴れるアデーレを引きずるように去って行く。

 ……私がこの国に居ないとイベントが発生しないって、どういうことだったのか……。

「ダニエル、アデーレ・ボルクはお前に対してもあのような態度を取っていたのか?」

 確認するように、オイゲン陛下がたずねた。ダニエル殿下はふるふると首を横に振る。呆然としているように見えるのは、気のせいではないだろう。

「女の裏側を知らないとは、情けないわね」

 なにかを知っているのでしょうか、デイジーさま。呆れたような視線を受けて、ダニエル殿下はうつむいてしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】断りに行ったら、お見合い相手がドストライクだったので、やっぱり結婚します!

櫻野くるみ
恋愛
ソフィーは結婚しないと決めていた。 女だからって、家を守るとか冗談じゃないわ。 私は自立して、商会を立ち上げるんだから!! しかし断りきれずに、仕方なく行ったお見合いで、好みど真ん中の男性が現れ・・・? 勢いで、「私と結婚して下さい!」と、逆プロポーズをしてしまったが、どうやらお相手も結婚しない主義らしい。 ソフィーも、この人と結婚はしたいけど、外で仕事をする夢も捨てきれない。 果たして悩める乙女は、いいとこ取りの人生を送ることは出来るのか。 完結しました。

この誓いを違えぬと

豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」 ──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。 ※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。 なろう様でも公開中です。

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

ここへ何をしに来たの?

恋愛
フェルマ王立学園での卒業記念パーティ。 「クリストフ・グランジュ様!」 凛とした声が響き渡り……。 ※小説になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しています。

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。 それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから! 婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。 え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!? おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。 ※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。

虐げられ令嬢の最後のチャンス〜今度こそ幸せになりたい

みおな
恋愛
 何度生まれ変わっても、私の未来には死しかない。  死んで異世界転生したら、旦那に虐げられる侯爵夫人だった。  死んだ後、再び転生を果たしたら、今度は親に虐げられる伯爵令嬢だった。  三度目は、婚約者に婚約破棄された挙句に国外追放され夜盗に殺される公爵令嬢。  四度目は、聖女だと偽ったと冤罪をかけられ処刑される平民。  さすがにもう許せないと神様に猛抗議しました。  こんな結末しかない転生なら、もう転生しなくていいとまで言いました。  こんな転生なら、いっそ亀の方が何倍もいいくらいです。  私の怒りに、神様は言いました。 次こそは誰にも虐げられない未来を、とー

処理中です...