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両親の馴れ初め 後編
しおりを挟む「エリカが選んだ人なら、お母さまは反対しないわぁ。でもね、エリカはお母さまの可愛い娘なの。なにかあったら、きちんと頼ってちょうだいねぇ?」
「お母さま……」
ああ、私の涙腺はもろくてダメね。ポロポロと涙を流すと、お母さまはそっと私を抱きしめてくれた。
お母さまの温もりを感じて、静かに目を閉じてその優しさに浸る。ぽんぽんと優しく背中を叩いてくれて、涙はなかなか止まらなかった。
ようやく涙が止まり、お母さまが私の頭を撫でて、いつの間にか近くに来ていたメイドから温かいタオルと冷たいタオルを受け取って目のケアをしてもらい、今日はレオンハルトさまと食事を摂ることになった。
目のケアをしっかりしてもらったおかげで、目の腫れは化粧で隠れた。
お父さま、お母さま、レオンハルトさま……そして私の四人で食事をして、とても和やかな時間が流れた。
こんなに穏やかな時間、夢なら覚めないで欲しいと願うくらい、心地の良いもので……。ちらりとレオンハルトさまを見ると、彼は私の視線に気付いたのか、こちらを見てにこりと微笑んだ!
「お口に合うかしらぁ?」
「はい、とても美味しいです」
お母さまに話しかけられて、レオンハルトさまが答える。お父さまはそうだろう、そうだろうと何度もうなずいていて、上機嫌でワインをレオンハルトさまのグラスに注いでいた。
「ワインも美味しいですね」
「そうだろう? このワイン、お気に入りなんだ」
……お父さま、本当に上機嫌ね。お母さまもワインを飲んでいるけれど、私はぶどうジュースだ。これも美味しい。うちの家訓で、二十歳まではお酒厳禁なの。
料理やお菓子に使う分には構わないのだけどね。
「レームクール伯爵と伯爵夫人の馴れ初めを教えていただきました。夫人はとても積極的な方だったのですね」
「あらぁ、知っちゃった? うふふ、そうなの。好きになったら、その人のことしか目に入らなくてねぇ。運命というものがあるのなら、この人がそうだってピンと来ちゃったのよぉ」
お母さまが頬に手を添えてしみじみと口にした。レオンハルトさまも、私と同じようにお父さまとお母さまの馴れ初めを聞いていたのね、とみんなの顔を見渡していると、ぽんとお父さまが手を叩いた。
「あとで、陛下に報告しないといけないね。正式に婚約者が決まったって」
「そのときには私たちも行くからねぇ」
「え、一緒に……ですか?」
レオンハルトさまが目を丸くしていた。私もそう。驚いてふたりを見つめると、お父さまがすっとなにかを取り出す。
「婚約の有無に関係なく、王室からは招かれているからね」
ぴらりと王城への招待状を見せるお父さま。……その招待状、いつ届いたのかしら……? そして、どうして招かれているのかしら……?
「うふふ。ちなみにダニエル殿下とアデーレ? でしたっけ? その子も居るみたいよぉ」
「……え」
思わず小さな声が出た。会いたくない人たちなんだけど……。それでも、たぶん……まだ向き合わなきゃいけないことなんだろうなぁ。
レオンハルトさまが心配そうに私を見ていたから、平気ですよ、と微笑んでみせた。
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