【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?

秋月一花

文字の大きさ
上 下
23 / 66

初デート! 3-1

しおりを挟む

 互いに向き合うように身体を動かし、それからレオンハルトさまがひざまずいた。驚いて、それが表情に出てしまったと思う。レオンハルトさまは私の手を自分の口元に近付けて、手の甲ではなく手のひらに唇を落してから、顔を上げて真剣な瞳でこう言った。

「どうか、オレと結婚してください」

 その真摯な眼差しに、瞳に吸い込まれそうだと感じた。歓喜に震える声で、

「……はい」

 と、返事をすると、レオンハルトさまはパッと明るい表情を浮かべる。その表情の可愛いこと!

 そして、周りからヒューヒューと口笛と祝福の拍手をもらった。

 ――今、気付いたのだけど……このチューリップの花畑、結構人が来ているみたい! 周りからの祝福の拍手と言葉に、私は顔に熱が集まっていくのを感じた。

「ありがとうございます、エリカ嬢」
「……呼び捨てで構いませんよ。私は、レオンハルトさまの妻になるのですから。それに、お礼を伝えるのは私のほうです」
「では、エリカ。これからよろしくお願いします」

 そう言って、今度は手の甲に唇を落すレオンハルトさま。

 私は心の中で、ちょっと、いやかなりキャパシティオーバーかな!? なんて思った。だってそうでしょう? こんな風にプロポーズされるとは思わなかったのだから!

 ……ダニエル殿下に婚約破棄を宣言された王都。それがレオンハルトさまにプロポーズされた王都へと想い出が上書きされて、王都を嫌いにならないで済みそう、なんて現金なことも考えたりして……。

「指輪は、サイズを確認してから用意しますね。今は、これを」

 私の手首にブレスレットをはめた。サファイア、かな。小さすぎるわけでも、大きすぎるわけでもない宝石はキラキラと輝いていた。まるで、レオンハルトさまの瞳のような輝きを放つサファイアのブレスレット。

「レオンハルトさま、ありがとう存じます。大切に、大切にします……!」

 昨日、あれから用意してくれたのかな? 嬉しさが込み上げてじわりと涙が浮かんできた。そのことに気付いたのか、レオンハルトさまが立ち上がって、くいっと手を引いて自分の胸に飛び込ませた。しっかりと抱き止められて、心の中できゃー! と叫ぶ。

 周りからもそんな黄色い悲鳴が聞こえた。彼の胸で隠れて、私の涙は誰にも見られなかった。

 婚約破棄して良かった……! と心の底からそう思った。

 レオンハルトさまは私の涙が止まるまで抱きしめてくれていた。まさか、うれし泣きするなんて思わなかったから、恥ずかしい……。

「あ、あの、ありがとうございます……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

剣豪令嬢と家出王子の逃避行

藍田ひびき
恋愛
第二王子ユリウスの婚約者である伯爵令嬢ルイーゼは、王子の母親である王妃から、一方的に婚約破棄を告げられた。 ルイーゼは傷物令嬢として社交界で肩身の狭い思いをするより、剣の道に生きようと決める。 実は、ルイーゼは剣の達人だったのだ。 家族の反対を押し切って実家を出奔したルイーゼは、冒険の旅に出る。 だが、そこにユリウス王子が追いかけてきて……? ※完結しました。番外編は登場人物のその後や、本編のサイドストーリーとなります。 ※恋愛小説大賞にエントリーしました。

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

自称地味っ子公爵令嬢は婚約を破棄して欲しい?

バナナマヨネーズ
恋愛
アメジシスト王国の王太子であるカウレスの婚約者の座は長い間空席だった。 カウレスは、それはそれは麗しい美青年で婚約者が決まらないことが不思議でならないほどだ。 そんな、麗しの王太子の婚約者に、何故か自称地味でメガネなソフィエラが選ばれてしまった。 ソフィエラは、麗しの王太子の側に居るのは相応しくないと我慢していたが、とうとう我慢の限界に達していた。 意を決して、ソフィエラはカウレスに言った。 「お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!」 意外にもカウレスはあっさりそれを受け入れた。しかし、これがソフィエラにとっての甘く苦しい地獄の始まりだったのだ。 そして、カウレスはある驚くべき条件を出したのだ。 これは、自称地味っ子な公爵令嬢が二度の恋に落ちるまでの物語。 全10話 ※世界観ですが、「妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。」「元の世界に戻るなんて聞いてない!」「貧乏男爵令息(仮)は、お金のために自身を売ることにしました。」と同じ国が舞台です。 ※時間軸は、元の世界に~より5年ほど前となっております。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。 それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから! 婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。 え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!? おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。 ※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。

愛の力があれば何でもできる、11年前にそう言っていましたよね?

柚木ゆず
恋愛
 それは、夫であるレジスさんと結婚10周年を祝っている時のことでした。不意にわたし達が暮らすお屋敷に、11年前に駆け落ちした2人が――わたしの妹ヴェロニクとレジスさんの兄テランスさんが現れたのです。  身勝手な行動によって周囲にとんでもない迷惑をかけた上に、駆け落ちの際にはお金や貴金属を多数盗んでいってしまった。そんなことをしているのに、突然戻ってくるだなんて。  なにがあったのでしょうか……?  ※12月7日、本編完結。後日、主人公たちのその後のエピソードを追加予定となっております。

処理中です...