【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?

秋月一花

文字の大きさ
上 下
21 / 66

初デート! 2-1

しおりを挟む

「本当に綺麗ですね……」

 チューリップは誰かにきちんと手入れをされているようで、愛情をたっぷりと注がれて美しく咲き誇っている。赤、黄色、白……他にも二色のものとか、とにかくたくさん咲いていた。

「エリカ嬢のほうが綺麗ですよ」

 まさかそう来るとは思わなかった……!

 チューリップに向けていていた視線を、思わずと言うようにレオンハルトさまに向けた。さらっと甘い言葉を口にしているのに、彼は「エリカ嬢?」と首を傾げるのを見て、彼の素はこんな感じなのかしら!? そりゃあね、貴族の間では女性を大切に持ち上げることも教えられるでしょう。褒められてイヤな気はしないし……ただ、ただ……!

 自分の好みの方から言われる褒め言葉って、威力が段違いよ……ッ!

 ありがとう存じますって、笑顔で言えばいいのに。私は口をパクパクと金魚のように動かすしか出来なかった……!

「……どうかしました?」

 ふるふると首を横に振る。

 しっかりしなさい! エリカ・レームクール! 自分で自分を叱咤しったして、じっとレオンハルトさまを見つめる。吸い込まれそうな青色の瞳を見ていると、彼が不思議そうな表情を浮かべた。

「お世辞でも嬉しいですわ。ありがとう存じます」

 なんとか言葉に出来た……! ちょっと声が震えていたかもしれないけれど、返答としてはまずまずの出来ではなくて!?

 自画自賛でなんとか自我を保とうとしたけれど、レオンハルトさまは目を数回またたかせて、

「本心なのですが……」

 と追撃をくださった。……おかしいな、伯爵家の令嬢として、ダニエル殿下の元婚約者として、こんな風に褒められることは多々あったのに! 婚約破棄で私の気が抜けたのかな!?

 それともこの方が私の好みにばっちり一致しているから!?

「あ、ありがとう存じます……」

 私が照れちゃったらどうしようもないじゃないー!

 でも、でもっ、とってもタイプなイケメンからそんなことを言われたら、さすがに照れるわ!

 平常心、カムバック。深呼吸を何回か繰り返すと、チューリップの甘い香りが鼻腔をくすぐった。

「あ、良い香り……」
「甘い香りですね。エリカ嬢も良い匂いがします」

 だからっ! そう言うことを! さらっと口にしないで! と心の中で騒いでから気付く。……私、香水つけてないんだけど……? シャンプーやコンディショナーの香りかな? それとも、ヘアオイル?

「……あの、私、そんなに匂いますか……?」
「ふわっと香るくらいです。香水って感じもしないので……不思議だなぁ、と」
「ヘアオイルの香りかしら……?」

 匂いがきついのは苦手だから、試行錯誤を繰り返して自分で用意したのよね。あまり香らないヘアオイル。香りと香りがぶつかって具合悪くしたことがあるから……。ちなみにそのヘアオイルはお母さまやメイドたちにも大人気だった。みんな一度は経験があるのかもしれないわね、匂いのぶつかり合い……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

剣豪令嬢と家出王子の逃避行

藍田ひびき
恋愛
第二王子ユリウスの婚約者である伯爵令嬢ルイーゼは、王子の母親である王妃から、一方的に婚約破棄を告げられた。 ルイーゼは傷物令嬢として社交界で肩身の狭い思いをするより、剣の道に生きようと決める。 実は、ルイーゼは剣の達人だったのだ。 家族の反対を押し切って実家を出奔したルイーゼは、冒険の旅に出る。 だが、そこにユリウス王子が追いかけてきて……? ※完結しました。番外編は登場人物のその後や、本編のサイドストーリーとなります。 ※恋愛小説大賞にエントリーしました。

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

自称地味っ子公爵令嬢は婚約を破棄して欲しい?

バナナマヨネーズ
恋愛
アメジシスト王国の王太子であるカウレスの婚約者の座は長い間空席だった。 カウレスは、それはそれは麗しい美青年で婚約者が決まらないことが不思議でならないほどだ。 そんな、麗しの王太子の婚約者に、何故か自称地味でメガネなソフィエラが選ばれてしまった。 ソフィエラは、麗しの王太子の側に居るのは相応しくないと我慢していたが、とうとう我慢の限界に達していた。 意を決して、ソフィエラはカウレスに言った。 「お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!」 意外にもカウレスはあっさりそれを受け入れた。しかし、これがソフィエラにとっての甘く苦しい地獄の始まりだったのだ。 そして、カウレスはある驚くべき条件を出したのだ。 これは、自称地味っ子な公爵令嬢が二度の恋に落ちるまでの物語。 全10話 ※世界観ですが、「妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。」「元の世界に戻るなんて聞いてない!」「貧乏男爵令息(仮)は、お金のために自身を売ることにしました。」と同じ国が舞台です。 ※時間軸は、元の世界に~より5年ほど前となっております。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。 それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから! 婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。 え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!? おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。 ※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。

お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~

マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。 その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。 しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。 貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。 そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。

処理中です...