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初デート! 1-2
しおりを挟むちらりとレオンハルトを見ると、彼はただ穏やかに笑っていた。
馬車は動いていないから、目的地についたのかもしれない。そう考えていると、レオンハルトさまが立ち上がり、馬車の扉を開き先に降り、私に向けて手を差し出す。
「さあ、お手をどうぞ」
「ありがとうございます」
一度深呼吸をしてから、レオンハルトさまの手に自分の手を重ねる。馬車を降りて歩き出すレオンハルトさまに続く私。……手を握ったままなのは、わざとかしら?
胸の鼓動がドキドキと早鐘を奏でる。そして、ふと気付いたことがあった。とても歩きやすいのだ。
「ここが目的地ですか?」
レオンハルトさまを見上げて尋ねると、彼は私に顔を向けて「もう少し歩いたところです」と答えてくれた。どこが目的地なのかしら?
そして、やっぱり歩きやすいと感じる。ダニエル殿下と歩くときは、彼のスピードについて行くのが大変だったことを思い出し、眉を下げる。結構な高さのヒールを履いていることを理解して欲しかった、なんて言い訳よね。一度口にしたことはあるけれど、自分のペースを崩すのがイヤだったのか、とても険しい表情をされたのよね……。
それに対して、レオンハルトさまは私の歩調に合わせてくれているらしく、とても歩きやすい。
こういう気遣いが出来る男性って本当に素敵! ますます惚れちゃう!
「……レオンハルトさまはお優しいですね」
「えっ?」
「私の歩調に合わせてくださっていますもの。嬉しいですわ」
にこっと微笑んでみせると、レオンハルトさまは照れたように頬を染めた。
「紳士として、当然のことですよ」
と口にしていたけれど、その当然のことをさらっと出来るのが真の紳士なんですよ、きっと。なんて心の中で呟きつつ、歩くこと数分。
レオンハルトさまがぴたりと足を止めた。
「つきました」
「わぁ……!」
思わず出た感嘆の言葉に、慌てて口元を隠した。レオンハルトさまは、そんな私の様子に少し嬉しそうに笑ってみせる。
王都の端に、こんなところがあったなんて、知らなかったわ……!
学園に通っていたときは中央通りくらいしか行かなかったから、ここまで来ることはなかった。だから――こんなに咲き誇るチューリップの花々を見ることはなかったのだ。
「もっと近くで見てみませんか?」
「は、はい……」
色とりどりのチューリップ。その光景に目を奪われていると、レオンハルトさまが声を掛けてくれた。ハッとしたように顔を上げると、とても優しい顔をしている彼が私を見つめていて……だから、かな。この場所に連れてきてくれたのって、もしかしたら……王都のイヤな思い出を、良い思い出に塗り替えようとしてくれている……と思ったのは。
私の予想だから違うかもしれない。でも……そうだとしたら、なんて優しい人なのかしら。
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