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お見合いで一目惚れ!? 6-2
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「なにかございましたら、お呼びください」
「ええ、そうするわ」
メイドが一礼して去って行く。その姿を見送り、カップへと手を伸ばした。
お茶を一口。喉が渇いていたから、水分が身体に広がるのを感じ、ほっと息を吐いた。レオンハルトさまもお茶を飲み、なにかに気付いたように顔を上げた。
「これは……ローズティーですか?」
「はい。お口に合いますか?」
「こういうものはあまり飲んだことないのですが……、思ったよりも飲みやすいのですね」
仕事中、どんなお茶を飲んでいるのかしら? いや、もしかしたらコーヒーかもしれない。
「良かった、ハーブティーは好みがあるので、レオンハルトさまのお口に合ったのなら、嬉しいですわ」
見た目も香りも華やかなお茶だし、味に関しては本当に好みとしか言えないから……。
レオンハルトさまはクッキーに手を伸ばしてさくりと食べた。幸せそうに食べる人だなぁと新しい発見に思わず口元が緩んでしまう。
こうしてまったりとした時間を過ごすのも悪くないけれど、その前に必要なことを済ませないとね。
「レオンハルトさま、現実的なお話をしましょう」
「現実的な、ですか?」
「はい。フォルクヴァルツ家に嫁ぐ前にやらねばならないことです。まず、陛下たちにご挨拶しないといけませんね。その日取りや結婚式の準備も始めないといけませんし……」
「え、エリカ嬢、ちょっと待ってください! その、自分で言うのもなんですが、そんなにぽんぽん決めて良いのですか!? 一生のことですよ!?」
慌てたようなレオンハルトさまの声。私はゆっくりと、大きく、首を縦に動かした。
「もちろん構いませんわ。私の一生は、レオンハルトさまと添い遂げるつもりなのですから」
レオンハルトさまは大きく目を見開いた。どうやら、私が本気だと悟ったようだ。
その姿を見て、小首を傾げて眉を下げ、問いかける。
「……大人しいほうがお好みでした?」
「……いえ、なんだかとんとん拍子過ぎて……、理解が追い付いていないみたいです」
レオンハルトさまに対してこんなに積極的な人も居なかったんだろうなぁ。こんなに素敵な方なのに。でも、私にとってはラッキーだったわね、本当に。
「……あの、日取りを決める前にやらなくてはならないことがあるので、少し時間をいただけませんか?」
「え? それは構いませんが……」
「すみません、それではその用事を済ませてきますので、また明日お会いしましょう!」
がたっと椅子から立ち上ると、レオンハルトさまは足早に去って行ってしまった……。
ぽつんと温室に残された私は、「……強引すぎたかしら?」と首を傾げることしか出来なかった。
「ええ、そうするわ」
メイドが一礼して去って行く。その姿を見送り、カップへと手を伸ばした。
お茶を一口。喉が渇いていたから、水分が身体に広がるのを感じ、ほっと息を吐いた。レオンハルトさまもお茶を飲み、なにかに気付いたように顔を上げた。
「これは……ローズティーですか?」
「はい。お口に合いますか?」
「こういうものはあまり飲んだことないのですが……、思ったよりも飲みやすいのですね」
仕事中、どんなお茶を飲んでいるのかしら? いや、もしかしたらコーヒーかもしれない。
「良かった、ハーブティーは好みがあるので、レオンハルトさまのお口に合ったのなら、嬉しいですわ」
見た目も香りも華やかなお茶だし、味に関しては本当に好みとしか言えないから……。
レオンハルトさまはクッキーに手を伸ばしてさくりと食べた。幸せそうに食べる人だなぁと新しい発見に思わず口元が緩んでしまう。
こうしてまったりとした時間を過ごすのも悪くないけれど、その前に必要なことを済ませないとね。
「レオンハルトさま、現実的なお話をしましょう」
「現実的な、ですか?」
「はい。フォルクヴァルツ家に嫁ぐ前にやらねばならないことです。まず、陛下たちにご挨拶しないといけませんね。その日取りや結婚式の準備も始めないといけませんし……」
「え、エリカ嬢、ちょっと待ってください! その、自分で言うのもなんですが、そんなにぽんぽん決めて良いのですか!? 一生のことですよ!?」
慌てたようなレオンハルトさまの声。私はゆっくりと、大きく、首を縦に動かした。
「もちろん構いませんわ。私の一生は、レオンハルトさまと添い遂げるつもりなのですから」
レオンハルトさまは大きく目を見開いた。どうやら、私が本気だと悟ったようだ。
その姿を見て、小首を傾げて眉を下げ、問いかける。
「……大人しいほうがお好みでした?」
「……いえ、なんだかとんとん拍子過ぎて……、理解が追い付いていないみたいです」
レオンハルトさまに対してこんなに積極的な人も居なかったんだろうなぁ。こんなに素敵な方なのに。でも、私にとってはラッキーだったわね、本当に。
「……あの、日取りを決める前にやらなくてはならないことがあるので、少し時間をいただけませんか?」
「え? それは構いませんが……」
「すみません、それではその用事を済ませてきますので、また明日お会いしましょう!」
がたっと椅子から立ち上ると、レオンハルトさまは足早に去って行ってしまった……。
ぽつんと温室に残された私は、「……強引すぎたかしら?」と首を傾げることしか出来なかった。
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