【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?

秋月一花

文字の大きさ
上 下
16 / 66

お見合いで一目惚れ!? 5-2

しおりを挟む
 さっと扇子を取り出して広げ、口元を隠して微笑んだ。中には色とりどりの薔薇が咲き誇っている。もちろん、ただ咲かせているだけではない。この薔薇は精油にしたり、ジャムにしても楽しめるもの。濃厚な薔薇の香りはその人の印象を華やかにするし、ジャムにすれば美味しく摂取できる。

 もちろんローズティーにしても良い。つまり、レームクールの薔薇はなんにでも使えると言うことだ。

「……あの、エリカ嬢。どのようなアクセサリーがお好きですか?」

 温室の真ん中に、テーブルと椅子が用意されている。これは温室の花々を楽しむためにセッティングされたもので、私が生まれる前から置いてあるらしい。

 椅子に座り、真剣な表情をしながらの問いかけに、私は目を瞬かせて、自分の首元を指した。

「このくらいのシンプルなものが好きですわ。どんな服装にも合いますし、軽いと身に着けているのも楽なのですよ」
「それは……少し、意外ですね。数年前にお見掛けしたときは、このくらいの大きな宝石のネックレスをしていたので……」

 そう言って両手を使って「このくらい」と丸を作るレオンハルトさまの姿を見て、なんだか愛らしさを感じてしまった。だって、身長が高くて、騎士団に所属していたからかガッチリとした体格の方が両手で丸を作っているのよ? これは……ギャップ萌え、というやつかしら?

 それにしても、数年前の宝石のことをよく覚えていらっしゃる、と感心した。確かに数年前のパーティーの日、そのくらいの大きさの宝石を身に着けていた。……とても肩が凝ったので、それはもう使っていない。

「それは恐らく、ダンスパーティーのときですわね。ダニエル殿下と踊るときに身に着けていたものです。……え、あのダンスパーティー、レオンハルトさまもいらっしゃっていたのですか!?」

 確か三年前、学園の入学前に行われたダンスパーティーのときだわ。あのときは、殿下の婚約者としてあの場にいたから……。人は見た目で印象が決まる。ダニエル殿下の婚約者として、背伸びをしていたのだ。正直に言うと、見栄でもあった。綺麗なドレスを身にまとい、煌びやかな宝石を誇示こじするように見せつける。それがあのときの戦闘服。

「それでは、正確には初めましてではありませんでしたのね……」
「いえ、遠目から見ていただけなので。……綺麗な人だな、と感じたのです」

 目元を伏せて微笑み、頬を掻く姿に胸がきゅんと高鳴った。まさかそんなことを言われるとは思わなかったから……!

 確かに綺麗であるように努力はしているけれど、それを直接、そしてオブラートにも包まず伝えられるのって、とっても胸がドキドキするのね……!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

剣豪令嬢と家出王子の逃避行

藍田ひびき
恋愛
第二王子ユリウスの婚約者である伯爵令嬢ルイーゼは、王子の母親である王妃から、一方的に婚約破棄を告げられた。 ルイーゼは傷物令嬢として社交界で肩身の狭い思いをするより、剣の道に生きようと決める。 実は、ルイーゼは剣の達人だったのだ。 家族の反対を押し切って実家を出奔したルイーゼは、冒険の旅に出る。 だが、そこにユリウス王子が追いかけてきて……? ※完結しました。番外編は登場人物のその後や、本編のサイドストーリーとなります。 ※恋愛小説大賞にエントリーしました。

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

自称地味っ子公爵令嬢は婚約を破棄して欲しい?

バナナマヨネーズ
恋愛
アメジシスト王国の王太子であるカウレスの婚約者の座は長い間空席だった。 カウレスは、それはそれは麗しい美青年で婚約者が決まらないことが不思議でならないほどだ。 そんな、麗しの王太子の婚約者に、何故か自称地味でメガネなソフィエラが選ばれてしまった。 ソフィエラは、麗しの王太子の側に居るのは相応しくないと我慢していたが、とうとう我慢の限界に達していた。 意を決して、ソフィエラはカウレスに言った。 「お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!」 意外にもカウレスはあっさりそれを受け入れた。しかし、これがソフィエラにとっての甘く苦しい地獄の始まりだったのだ。 そして、カウレスはある驚くべき条件を出したのだ。 これは、自称地味っ子な公爵令嬢が二度の恋に落ちるまでの物語。 全10話 ※世界観ですが、「妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。」「元の世界に戻るなんて聞いてない!」「貧乏男爵令息(仮)は、お金のために自身を売ることにしました。」と同じ国が舞台です。 ※時間軸は、元の世界に~より5年ほど前となっております。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。 それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから! 婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。 え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!? おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。 ※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

処理中です...