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お見合いで一目惚れ!? 5-2
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さっと扇子を取り出して広げ、口元を隠して微笑んだ。中には色とりどりの薔薇が咲き誇っている。もちろん、ただ咲かせているだけではない。この薔薇は精油にしたり、ジャムにしても楽しめるもの。濃厚な薔薇の香りはその人の印象を華やかにするし、ジャムにすれば美味しく摂取できる。
もちろんローズティーにしても良い。つまり、レームクールの薔薇はなんにでも使えると言うことだ。
「……あの、エリカ嬢。どのようなアクセサリーがお好きですか?」
温室の真ん中に、テーブルと椅子が用意されている。これは温室の花々を楽しむためにセッティングされたもので、私が生まれる前から置いてあるらしい。
椅子に座り、真剣な表情をしながらの問いかけに、私は目を瞬かせて、自分の首元を指した。
「このくらいのシンプルなものが好きですわ。どんな服装にも合いますし、軽いと身に着けているのも楽なのですよ」
「それは……少し、意外ですね。数年前にお見掛けしたときは、このくらいの大きな宝石のネックレスをしていたので……」
そう言って両手を使って「このくらい」と丸を作るレオンハルトさまの姿を見て、なんだか愛らしさを感じてしまった。だって、身長が高くて、騎士団に所属していたからかガッチリとした体格の方が両手で丸を作っているのよ? これは……ギャップ萌え、というやつかしら?
それにしても、数年前の宝石のことをよく覚えていらっしゃる、と感心した。確かに数年前のパーティーの日、そのくらいの大きさの宝石を身に着けていた。……とても肩が凝ったので、それはもう使っていない。
「それは恐らく、ダンスパーティーのときですわね。ダニエル殿下と踊るときに身に着けていたものです。……え、あのダンスパーティー、レオンハルトさまもいらっしゃっていたのですか!?」
確か三年前、学園の入学前に行われたダンスパーティーのときだわ。あのときは、殿下の婚約者としてあの場にいたから……。人は見た目で印象が決まる。ダニエル殿下の婚約者として、背伸びをしていたのだ。正直に言うと、見栄でもあった。綺麗なドレスを身に纏い、煌びやかな宝石を誇示するように見せつける。それがあのときの戦闘服。
「それでは、正確には初めましてではありませんでしたのね……」
「いえ、遠目から見ていただけなので。……綺麗な人だな、と感じたのです」
目元を伏せて微笑み、頬を掻く姿に胸がきゅんと高鳴った。まさかそんなことを言われるとは思わなかったから……!
確かに綺麗であるように努力はしているけれど、それを直接、そしてオブラートにも包まず伝えられるのって、とっても胸がドキドキするのね……!
もちろんローズティーにしても良い。つまり、レームクールの薔薇はなんにでも使えると言うことだ。
「……あの、エリカ嬢。どのようなアクセサリーがお好きですか?」
温室の真ん中に、テーブルと椅子が用意されている。これは温室の花々を楽しむためにセッティングされたもので、私が生まれる前から置いてあるらしい。
椅子に座り、真剣な表情をしながらの問いかけに、私は目を瞬かせて、自分の首元を指した。
「このくらいのシンプルなものが好きですわ。どんな服装にも合いますし、軽いと身に着けているのも楽なのですよ」
「それは……少し、意外ですね。数年前にお見掛けしたときは、このくらいの大きな宝石のネックレスをしていたので……」
そう言って両手を使って「このくらい」と丸を作るレオンハルトさまの姿を見て、なんだか愛らしさを感じてしまった。だって、身長が高くて、騎士団に所属していたからかガッチリとした体格の方が両手で丸を作っているのよ? これは……ギャップ萌え、というやつかしら?
それにしても、数年前の宝石のことをよく覚えていらっしゃる、と感心した。確かに数年前のパーティーの日、そのくらいの大きさの宝石を身に着けていた。……とても肩が凝ったので、それはもう使っていない。
「それは恐らく、ダンスパーティーのときですわね。ダニエル殿下と踊るときに身に着けていたものです。……え、あのダンスパーティー、レオンハルトさまもいらっしゃっていたのですか!?」
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「それでは、正確には初めましてではありませんでしたのね……」
「いえ、遠目から見ていただけなので。……綺麗な人だな、と感じたのです」
目元を伏せて微笑み、頬を掻く姿に胸がきゅんと高鳴った。まさかそんなことを言われるとは思わなかったから……!
確かに綺麗であるように努力はしているけれど、それを直接、そしてオブラートにも包まず伝えられるのって、とっても胸がドキドキするのね……!
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