【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?

秋月一花

文字の大きさ
上 下
14 / 66

お見合いで一目惚れ!? 4-2

しおりを挟む
 アデーレとの噂は学園中に流れていたし、彼女に出会わないように気をつけてはいたけれど、エンカウントするときもあった。

 そのたびに彼女はダニエル殿下の腕にぎゅっとしがみつき、ダニエル殿下は親の仇のように私を睨むという困ったことに。そんな状態だから、これは婚約破棄されるだろうなぁと思っていたのだ。心の準備ってしておいて正解よね。

「……あなたに逢うまでは、そう思っていました」
「エリカ嬢?」
「レオンハルトさま、どうしましょう。私――あなたに一目惚れをしたみたいです」

 頬に手を添えてぽっと頬を赤らめながらそう宣言すると、レオンハルトさまは大きく目を見開いた。

「え、えええっ!?」

 顔を真っ赤に染めるレオンハルトさまに、可愛いなぁなんて思ってしまった。あたふたと手をせわしなく動かす彼に思わず笑みを浮かべてしまう。

「あ、あの、エリカ嬢……!」
「はい、レオンハルトさま」

 にこにことレオンハルトさまを見ると、彼はきょろきょろと辺りを見渡して、ゆっくりと深呼吸を繰り返した。落ち着きを取り戻したようだけど、耳まで真っ赤になっていて可愛い。……私、こんなに恋愛に積極的だったっけ? って思うくらい、彼に対して惹かれているのを自覚していた。

「それはその……、オレと結婚してくれると言うことでしょうか?!」

 おっとこっちも一足飛び!

 レオンハルトさま、真剣な表情だわ。だから、私も表情を引き締めてすっと右手の人差し指を立てた。

「ひとつ、約束をしてくださるのなら……」

 そう言ってはにかんでみせる。すると、レオンハルトさまは目を瞬かせて、「約束?」と首を傾げた。

「……浮気はしないでいただきたく……」
「……それは、人として当然のことでしょう」

 その人として当然のことを、ダニエル殿下は年に一回、コンスタントに破っていたわけなんだけどね……。

 もちろん、その相手全員に慰謝料を請求していたわけで、それなりの金額になったりもしたけれど。私が曖昧に微笑んでいると、私の元婚約者のことを思い浮かべたのだろう。なんとも言えない複雑そうな表情を浮かべていた。

「自分で言うのもなんですが、オレは人を大切にしたいと思っています。なので……」
「はい、私のことも大事にしてください」

 ――彼はとても誠実な人なのだろう。誠実な人だと信じたい。

 それにしても、こんなに格好良い人なのに、乙女ゲームの攻略キャラではなかったようだ。全クリした私が言うのだから間違いない。

 こんなに魅力的な人が結婚していないなんて、とても幸運だったわ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

逆行悪役令嬢は改心して聖女になる。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 本格悪役令嬢モノにする予定です。少し長い目で見てください。

剣豪令嬢と家出王子の逃避行

藍田ひびき
恋愛
第二王子ユリウスの婚約者である伯爵令嬢ルイーゼは、王子の母親である王妃から、一方的に婚約破棄を告げられた。 ルイーゼは傷物令嬢として社交界で肩身の狭い思いをするより、剣の道に生きようと決める。 実は、ルイーゼは剣の達人だったのだ。 家族の反対を押し切って実家を出奔したルイーゼは、冒険の旅に出る。 だが、そこにユリウス王子が追いかけてきて……? ※完結しました。番外編は登場人物のその後や、本編のサイドストーリーとなります。 ※恋愛小説大賞にエントリーしました。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

自称地味っ子公爵令嬢は婚約を破棄して欲しい?

バナナマヨネーズ
恋愛
アメジシスト王国の王太子であるカウレスの婚約者の座は長い間空席だった。 カウレスは、それはそれは麗しい美青年で婚約者が決まらないことが不思議でならないほどだ。 そんな、麗しの王太子の婚約者に、何故か自称地味でメガネなソフィエラが選ばれてしまった。 ソフィエラは、麗しの王太子の側に居るのは相応しくないと我慢していたが、とうとう我慢の限界に達していた。 意を決して、ソフィエラはカウレスに言った。 「お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!」 意外にもカウレスはあっさりそれを受け入れた。しかし、これがソフィエラにとっての甘く苦しい地獄の始まりだったのだ。 そして、カウレスはある驚くべき条件を出したのだ。 これは、自称地味っ子な公爵令嬢が二度の恋に落ちるまでの物語。 全10話 ※世界観ですが、「妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。」「元の世界に戻るなんて聞いてない!」「貧乏男爵令息(仮)は、お金のために自身を売ることにしました。」と同じ国が舞台です。 ※時間軸は、元の世界に~より5年ほど前となっております。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。 それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから! 婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。 え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!? おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。 ※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。

お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~

マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。 その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。 しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。 貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。 そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。

処理中です...