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お見合いで一目惚れ!? 3-1
しおりを挟む「レームクール伯爵令嬢」
「はい」
「その、少し、話をしませんか?」
……柔らかい口調でそういうフォルクヴァルツ辺境伯に、私はこくりとうなずいた。ホッとしたように微笑む姿を見て、また胸がキュンっと高鳴る。……一目惚れってあるものなのね。
「その前に、おひとつ」
「なんでしょうか?」
「私のことは、どうかエリカとお呼びください」
「……では、わたしのことはレオンハルトかレオン、と」
えっ? 出会って数分で愛称呼びを許して良いの? と思わずレオンハルトさまを見つめてしまった。彼は私の考えを読んだかのように、口角を上げて片目を閉じ、口元で右手の人差し指を立てる。
「フォルクヴァルツって言いづらいでしょう?」
「……ふふっ」
自分の苗字のことをそんな風に言うのが面白くて、笑い声が出た。
私とレオンハルトさまは、応接間のソファに向かい合うように座り、互いににこりと微笑み合った。
「……まずは、もう一度自己紹介を。名はレオンハルト・フォルクヴァルツ。年齢は二十三です。容姿は……まぁ、見てのとおりですね。辺境伯をしております」
「……あの、レオンハルトさま。なぜ私相手に敬語なのでしょうか?」
辺境伯であるレオンハルトさまのほうが、格上なのに……。すると、レオンハルトさまは目をぱちくりと瞬かせて、人差し指で頬を掻いた。
「下心、ですかね」
「え?」
「その、……良く思われたいので」
その頬がほんのりと赤く染まっていることに気付いて、私は花束に視線を落とした。……下心、良く思われたい……。これは、もしや彼も私に一目惚れをしたんじゃないのかな……? そうだったらなんて嬉しいことなのだろう。
「……仕事に追われて、気が付いたらこの歳になっていました。なので、趣味もありません」
自己紹介の続きを口にして、レオンハルトさまはにこっと笑う。成人している男性なのに、どうしてこんなに可愛く見えるのかしら……?
「では、次は私の番ですね。エリカ・レームクール、レームクール伯爵家の長女です。年齢は十八、容姿はこのとおり……と、言いたいところですが、女性は化粧でガラッと雰囲気が変わりますので、あまり信用しないでくださいませ。……ダニエル殿下の元・婚約者ですわ」
私の髪色も、レオンハルトさまの髪色も黒だから、なんだか親近感がわく。前世の故郷を思い出せるからかな?
まぁ、私の瞳は落ち着いたピンク色だから、鏡を見るたびに異世界なんだなぁとしみじみ感じちゃうけどね。
「……その、傷ついているのでは……?」
「いえ、まったく」
気を遣ってくれたのだろう。眉を下げて問う姿は、私のことを心配しているようだった。
「レオンハルトさまは、ダニエル殿下と言葉を交わしたことがありますか?」
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