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卒業パーティーで婚約破棄イベント 3-2
しおりを挟む――やっと卒業パーティーで婚約破棄イベントが終わった。結構時間の流れが遅く感じるものなのね。
でもこれで、私は婚約者なしのフリーに戻るということだ。婚約破棄をされた側だから、私に求婚する珍しい人はいないと思う。
十歳の頃から八年間、お世話になりました、ダニエル殿下。どうか、アデーレと幸せな家庭を築いてくださいね!
意気揚々と屋敷に帰った私を出迎えたのは、両親だった。私が屋敷につく頃には誰かが今日のことを教えたらしく、がばりとお母さまに抱きつかれた。
「疲れたでしょう? 今日はゆっくり休みなさいねぇ」
「はい、お母さま」
こつんと額と額を当てて、心配そうにお母さまが私を見る。隣に立つお父さまに視線を向けると、小さくうなずいていた。お言葉に甘えて、今日はもうさっくり休んでしまおう。婚約破棄イベントが終われば自由になると思っていたけれど、予想以上に精神力がごっそり持っていかれるものなのね……としみじみ感じながら、私は自室に足を進めた。
自室につき、メイドたちの手を借りてドレスを脱いで、ネグリジェに着替える。
「……今日はもう下がって良いわ。おやすみなさい」
「……おやすみなさい、エリカお嬢さま」
メイドたちに声を掛けて、ぱたんと扉が閉じるのを見てようやくひとりになれた、と肩をすくめる。
着替えついでに化粧も落としたし、本当にもう寝るだけなのだ。食事はたぶん、食べられないと思う。お腹も空いていないし、もうさっさと寝ちゃおう。
きっと明日になれば、今日のことが新聞に載るでしょうね。私のことはどう書かれるのかしら?
お父さまとお母さまは私を気遣ってくれると思う。優しい両親だ。きちんと『エリカ』として生きていた記憶もあるから……不思議な気分なのよね。
転生者である私は、今日の卒業パーティーのことを夢見ていた。
浮気癖のある婚約者は、これから先どうやって過ごすのかしら。アデーレも、どうしてダニエル殿下に惚れたのかしら? 彼女とお友達の男性はみんな、顔が良かったり家柄が良かったり……まぁ、『攻略対象』なのだけど。
乙女ゲームだからね、イケメンが多いよね。わかる。あんなに格好良い人たちに愛されたいって思うもの。……愛されなかったけど! それは私がお邪魔キャラだったから、仕方ないのかもしれないけれど……。乙女ゲームのシナリオはあれで終了。
これから先は、未知の世界。
――自由に婚約者を選んでいいのよね!
それを目標にここまでやって来たのよ。素敵な恋愛が出来ますようにって祈りながら、気付いたら眠りに落ちていた。
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