【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?

秋月一花

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卒業パーティーで婚約破棄イベント 1-2

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「婚約を破棄するのなら、これまでのことを話してもよろしいですよね。私という婚約者がいながら、別の女性と何度も逢瀬おうせを重ねる男性なんて、私は求めておりませんの。しっかりとダニエル殿下の手綱たづなを握ってくださいね、ボルク男爵令嬢!」

 ちなみに証拠は山のようにある。だって、わざわざ見せつけに来るんだもの。最初のうちは何事かと思っていたけれど、考えれば考えるほど理解不能だった。浮気していることをわざわざ見せつけに来る? と。そのうちに、ああ、殿下は私のことをうとましく思っているのね、と気付いてせっせと証拠を集めることにしたのよ。

 それにしても、この山のような証拠を使う日がとうとう来るとは! 婚約破棄イベントよ、ありがとう!

 感無量とはこのことね! うふふ、慰謝料はたっぷりいただきますよ、ダニエル殿下!

 ――どうして私が、アデーレ・ボルク男爵令嬢のことをヒロインと呼んだのか。そして、こんなにもしっかりと殿下の不貞の証拠を握れたのか。

 お気付きの方もいらっしゃるだろう。そう、私は転生者である!

 気付いたのはダニエル殿下と婚約してから。なんか聞いたことあるなー、なんだったかな―と思っていたら、一気に前世の記憶が流れ込んできたのだ!

 乙女ゲームの中に転生だなんて、本当にあったのねぇ。記憶を取り戻してからいろいろと準備をし始めた甲斐があったわ。

「きっとアデーレさまなら、ダニエル殿下の浮気も受け止められますわ! 私と婚約してから八年、一年に一度は必ず浮気しておりましたもの。それも、見せつけるかのように。私が傷つくのを見て、優越感に浸っていたのでしょうか?」

 実際、最初は傷ついた。婚約者がいながら、他の女性と浮気をして……しかも、わかりやすくいちゃつきながら、こちらをちらっと見るのだ。私が傷ついているかを確認するように。そんな人、こちらから願い下げよ!

 私の言葉にダニエル殿下はプライドが傷つけられたのか、カッと顔を真っ赤にしながら「黙れ!」と叫んだ。

 静まり返ったパーティー会場の中、さっきまでの余裕はどうしたのだろうか?

「殿下は知らないかもしれませんが、殿下のお相手は慰謝料を払ってくださいましたよ? もちろん、殿下にも慰謝料を請求いたします。ここ三年以内のお相手にも……それに、アデーレ・ボルク男爵令嬢にも」

 にっこりと微笑んで扇子を広げて口元を隠す。アデーレはぎょっとしたように目を見開いた。私に慰謝料を請求されるのは予想外だったのかしら?

「ひ、ひどいですわ、エリカさま! エリカさまのおうちはとってもお金持ちじゃないですか! 貧乏なわたくしからお金をむしり取ろうなんて、そんなひどいことをなさるのですか!?」

 ……貧乏かどうかは関係ないよね。だって、婚約者を奪ったのだから。

 呆れたような私のため息が、パーティー会場に響いた。みんな、固唾をのんで様子を見ているから、余計に響いた気がする。

 まぁ、確かに男爵家よりも伯爵家であるうちのほうが、お金はあるんだろうけど……慰謝料の意味を知らないってわけじゃあ、ないよね?
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