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3章:アシュリンと再会。
アシュリンとリーリクル。 8話
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c ――そして、翌日。
アシュリンは目をパチッと開けて、ベッドから起き上がり、カーテンを開けた。
まぶしいほどの空の青さと湖の青さに思わず目を細めるアシュリンに、ノワールが「いつもより早くにゃい?」と彼女の肩に乗る。
「だって今日は水浴びの日だよ! 楽しみで楽しみで!」
ワクワクとした表情で、窓を開けた。風がアシュリンの髪をなびかせ、くるっと身体を反転させて、魔法のリュックから水着を取り出して手早く着替える。水着の上に服を着て、リビングへ向かう姿を見て、本がぽつりと、
『水遊び楽しみだったんですねぇ』
言葉をこぼしてアシュリンのあとを追った。
朝食を摂って、ラルフを水遊びに誘う。彼は「用意してくる」と昨日使った部屋に足を進め、すぐに戻ってきた。
この家から湖まではすぐだ。アシュリンが「はやくはやく!」と急かして、ラルフの手を取って駆け出す。
「それじゃあ、私たちも行きましょうか」
「子どもたちの安全のためにね」
ロッティとメイソンも一緒に湖まで行き、バッと服を脱いで湖に入ろうとするアシュリンを、ラルフが止めた。
「アシュリン、日焼け止めを塗らないと」
「えー?」
「そうよ、アシュリン。日焼け止めは大事よ。ラルフくん、よく知っているわね」
「日焼けは火傷と同じだって、教わったので……。今日は良い天気なので、危ないなと」
ラルフも日焼け止めを塗っていた。自分では届かない場所はメイソンに塗ってもらっている。
「日に焼けると痛い思いをすることになるからなぁ。良いことを教えてもらっていたんだな」
「……はい」
褒められてラルフはちょっと恥ずかしそうにはにかんだ。昨日の買い物ですっかりメイソンと仲が良くなったようで、アシュリンはちょっとだけ心の中でムッとした。
もちろん、顔には出していない……はずだ。でも、どうしてラルフとメイソンが仲良くなって、自分がムッとするのだろうと首をかしげる。
「アシュリン?」
「うわぁ、どうしたのっ?」
「ああ、いや、塗り終わったみたいだから、行くのかなって」
「もちろん行くよ! いっぱい遊ぼっ!」
さっきまでのムッとした感情はどこかに行ったようで、アシュリンはぱぁっと表情を輝かせてラルフの手を取り、湖まで一緒に向かう。
湖にはアシュリンたちの他にも、いろいろな人たちでにぎわっていた。
「なにして遊ぶ?」
「その前に……アシュリン、この前のことを覚えている?」
「この前?」
「水の精霊から、加護を受けたでしょ? 試してみない?」
アシュリンの記憶が一気によみがえる。あの大きな滑り台で会った精霊族のタルコットから受けた加護のことを思い出し、「試してみたい!」と声を上げる。
「うん、じゃあ試してみよう」
ラルフはアシュリンの言葉に小さくうなずき、辺りをきょろきょろと見渡して、あまり人がいない場所を探す。
「あそこら辺が良いかな?」
人がまばらになっている場所を指して、そこまで行くことにした。もちろん、ロッティとメイソンに声をかけてから。
アシュリンは目をパチッと開けて、ベッドから起き上がり、カーテンを開けた。
まぶしいほどの空の青さと湖の青さに思わず目を細めるアシュリンに、ノワールが「いつもより早くにゃい?」と彼女の肩に乗る。
「だって今日は水浴びの日だよ! 楽しみで楽しみで!」
ワクワクとした表情で、窓を開けた。風がアシュリンの髪をなびかせ、くるっと身体を反転させて、魔法のリュックから水着を取り出して手早く着替える。水着の上に服を着て、リビングへ向かう姿を見て、本がぽつりと、
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朝食を摂って、ラルフを水遊びに誘う。彼は「用意してくる」と昨日使った部屋に足を進め、すぐに戻ってきた。
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「それじゃあ、私たちも行きましょうか」
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ロッティとメイソンも一緒に湖まで行き、バッと服を脱いで湖に入ろうとするアシュリンを、ラルフが止めた。
「アシュリン、日焼け止めを塗らないと」
「えー?」
「そうよ、アシュリン。日焼け止めは大事よ。ラルフくん、よく知っているわね」
「日焼けは火傷と同じだって、教わったので……。今日は良い天気なので、危ないなと」
ラルフも日焼け止めを塗っていた。自分では届かない場所はメイソンに塗ってもらっている。
「日に焼けると痛い思いをすることになるからなぁ。良いことを教えてもらっていたんだな」
「……はい」
褒められてラルフはちょっと恥ずかしそうにはにかんだ。昨日の買い物ですっかりメイソンと仲が良くなったようで、アシュリンはちょっとだけ心の中でムッとした。
もちろん、顔には出していない……はずだ。でも、どうしてラルフとメイソンが仲良くなって、自分がムッとするのだろうと首をかしげる。
「アシュリン?」
「うわぁ、どうしたのっ?」
「ああ、いや、塗り終わったみたいだから、行くのかなって」
「もちろん行くよ! いっぱい遊ぼっ!」
さっきまでのムッとした感情はどこかに行ったようで、アシュリンはぱぁっと表情を輝かせてラルフの手を取り、湖まで一緒に向かう。
湖にはアシュリンたちの他にも、いろいろな人たちでにぎわっていた。
「なにして遊ぶ?」
「その前に……アシュリン、この前のことを覚えている?」
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「水の精霊から、加護を受けたでしょ? 試してみない?」
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「うん、じゃあ試してみよう」
ラルフはアシュリンの言葉に小さくうなずき、辺りをきょろきょろと見渡して、あまり人がいない場所を探す。
「あそこら辺が良いかな?」
人がまばらになっている場所を指して、そこまで行くことにした。もちろん、ロッティとメイソンに声をかけてから。
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