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3章:アシュリンと再会。

アシュリンとリーリクル。 6話

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 アシュリンはロッティと一緒に、ジャガイモの皮をむいている。

 子ども用の包丁が用意されていて、アシュリンは危なっかしい手つきでジャガイモ皮と戦っていた。

「ゆっくりでいいからね」
「うん……!」

 ロッティはアシュリンの皮むきをながめながら、シュルシュルとジャガイモの皮をむいている。皮は繋がっていて、アシュリンがむいてボロボロになったジャガイモとは大きさが違う。

「むぅ」
「こういうのは毎日の積み重ねが大事なのよ」
「そうかもしれないけど、こんなに下手なんだなぁって」

 自分のむいたジャガイモはあまりに小さい。彼女をなぐさめるように「大丈夫よぉ」とロッティは微笑んだ。

「皮つきのポテトフライにでもしようかね。きれいに洗ってあるし、芽もないし」
「ポテトフライ!」

 アシュリンの好物の一つだ。カラッと揚がったポテトフライに、ロッティが作ったハーブ塩をまぶして口に運ぶと、もう手が止まらなくなるくらいおいしくてつい食べすぎてしまう。

「ラルフも気に入ると良いな!」
「そういえばあの子、好き嫌いあるのかねぇ……?」
「……どうなんだろう? そういえば知らないや……」

 リーリクルまでの旅の途中、ラルフはなんでも食べていた。無表情で、もくもくと。

 そのことを思い出して、ロッティに伝えると「そうかい?」と目を丸くしていた。

「好き嫌いはあるのかもしれないけれど、クラーク家の坊ちゃんならなんでも食べられるようにしつけられているのかもしれないねぇ」
「ラルフが坊ちゃんって、なんだか変な感じ!」

 だってアシュリンが知っているラルフは、街道ですやすやと眠ってしまうくらい自分のことに興味がない男の子だ。普通、街道で寝ようとは思わないはずと初めて出会ったときを思い浮かべる。

「それに、ラルフのご両親はいそがしい人って聞いていたよ」

 ぽつりぽつりとアシュリンがラルフのことを話し、自分が思っていることも口にする。

 そうすることで、自分がラルフのことをどう思っているのかが徐々に理解できた。

 始まりは偶然。でも、こうして一緒に旅をすることで親しくなったとはにかみながらロッティに伝えるアシュリンに、ふふっと彼女が笑い声をこぼす。

「アシュリンは、ラルフくんのことを、ずっと見守っていたのねぇ」
「見守っていた……のかなぁ? よくわかんないけど、今のラルフは感情が外に出やすくなったと思う!」
「それは良いことね。子どもは子どもらしく、感情を表に出したほうが良いわ。大人になると、なかなか出せなくなっちゃうからねぇ」

 しみじみとつぶやくロッティに、アシュリンは「え?」と聞き返した。

「泣きたいときに泣いて、笑いたいときに笑う。子どもの特権よ。大人になると、どうしても周りを気にしちゃうからね」

 ロッティの言葉に、アシュリンは今までの自分のことを思い返す。

 昔から、泣きたいときに泣いて、笑いたいときに笑っていたと考え――……

(……あ、でも……)

 エレノアが生まれてからは、あまり泣かなくなったことに気付いた。
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