57 / 70
3章:アシュリンと再会。
アシュリンとリーリクル。 6話
しおりを挟むてっきり、伯爵令嬢の時のように裏で動くって思っていたのに、今回は正攻法で動いたみたい。とはいえ、素直に正攻法とは思えないのはなんでだろう。
「難しい顔してますわね」
スノア王女殿下がクッキーを優雅に食べながら言った。
「その話を聞いて、普通笑えませんよ。完全に脅していますよね、国王陛下を」
以前、何度も抗議文を送っていた過去があるから、国王陛下に直訴したのはわかるけどね。一応、筋は通るから。それに、ラメール侯爵令嬢のお母様は国王陛下の実の妹だから。だけどね……
「脅してますね」
「脅してる上に、期日を設けていたよな」
スノア王女殿下とアベル殿下が愉快そうに言った。
「二人とも楽しそうですね」
私が少しジト目で見ながらそう言うと、同時に返事が返ってきた。
「「楽しいよ」」
「楽しいですか……?」
断言する両殿下に、呆れながら尋ねる。私的にはちょっと国王陛下が気の毒に思うんだけど、二人は違うのね。
「そもそも、叔母上はシルクに甘いのです。どうして、この時期に留学先から戻ってきたのです。もし戻ってきたとしても、普通なら、登校させませんわ」
それ、私も思った。起こした問題が問題なんだから、私が親なら登校させないで、自室に謹慎の上、さっさと留学先に送り返すわ。さすがに、今日は休んでるみたいだけど。
「シルクが叔母上にねだったんだろ。ほんと、超過保護で困るよ。似た者親子だから溺愛が凄くてね……娘の恋を応援しているんだよな。そもそも、シルクを無理矢理留学させたのは、ラメール侯爵だから。そこでも、かなり揉めたよ。今回も揉めるよね」
そのもの言いでわかったよ。スノア王女殿下もアベル殿下も、なにかしらの被害を受けたんだね。
でもさ……亜人族が決めた番を他人が否定することを、母親が容認しているって……降嫁される前もかなり問題があったんじゃない? 無理矢理、ラメール侯爵に降嫁させたように思うのは私だけかな。少なくとも、他国に嫁がせることはできないわね。お花畑すぎて。絶対問題起こしそう。
「似た者親子って?」
「シルクと同じだよ。相手は現コンディー公爵。親子二代でやっちゃったんだよ。それプラス、本当の運命の番から逃げられた」
アベル殿下が苦笑しながら教えてくれた。
「あ~~この場合、どう返答したらいいの」
あまりのアホさ加減にね。運命の番相手が逃げ出すことってあるんだ……
それにしても、親子二代でターゲットにされるのって可哀想。まぁでもわかるわ。義お父様、今も格好いいから。カイナル様にどことなく似てるんだよね。そう考えると、親子で好みが一緒!?
「はっきり言っても言いわよ。お花畑だって」
いや、言えないよ。私平民。
「そのせいで、公の社交場でコンディー公爵夫妻とラメール侯爵夫妻がかち合わないように裏で働かされて、ほんと迷惑もいいところだよ」
心底ウザそうに言うアジル殿下を見て苦笑い。
「……ラメール侯爵令嬢様と同じなら、他国の招待客がいる公の場で問題を起こしそうですね。ラメール侯爵様が可哀想ですね」
胃と髪の毛にきそう、ストレスで。
「その分、降嫁する時に、通常の三倍のお金を渡したそうだよ」
お金で、家臣に押し付けたか……王族怖っ。その王族を脅すカイナル様って……
「……とりあえず、四日後までにどうするかですね」
カイナル様は国王陛下立ち会いの元、ラメール侯爵夫妻にシルク嬢の処分を五日以内に下すよう嘆願した。それを国王陛下は受理したのが昨日。
すんなり、片が付くとは思わないのは私だけかな。
「しないといけないのですけど、たぶん、すんなりとはいかないでしょうね」
やっぱり、スノア王女殿下も同じように思っていたみたい。
「なのに、なぜ、ユリシア嬢は学園に登校してるのかな?」
アジル殿下の台詞に言葉が詰まる。だって、カイナル様と揉めたからね。その時は、そんな経緯があったなんて知らなかったけどね。知ってても、登校したけど。
「もうすぐ、中間試験がありますから」
今は登校する選択をしてよかったと思う。両殿下からなにがあったのか聞けたし。それに――
「本当にそれだけですの?」
スノア王女殿下が確かめてくる。
「はい」
にっこりと微笑みなが答えた。なのに、スノア王女殿下もアジル殿下も不審げだ。
まぁそれは当たってるけどね。
「そろそろ、終わったか? できれば、ここでする話じゃないと思うが、っていうか、しないでほしい」
生徒会長が困惑した顔で会話に入ってきた。
「場所を考えろ」
副会長はもろ迷惑そうに言った。
「ここが一番安全だからです」
「失礼な。場所はわきまえていますわ」
「ついでに、時間もわきまえてますよ」
私たちは次々に反論した。
生意気な一年生に、生徒会長と副会長は心底うんざり表情をした。
20
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説

【完結】イケメン旦那と可愛い義妹をゲットして、幸せスローライフを掴むまで
トト
児童書・童話
「私も異世界転生して、私を愛してくれる家族が欲しい」
一冊の本との出会いが、平凡女子をミラクルシンデレラに変える
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
先祖返りの姫王子
春紫苑
児童書・童話
小国フェルドナレンに王族として生まれたトニトルスとミコーは、双子の兄妹であり、人と獣人の混血種族。
人で生まれたトニトルスは、先祖返りのため狼で生まれた妹のミコーをとても愛し、可愛がっていた。
平和に暮らしていたある日、国王夫妻が不慮の事故により他界。
トニトルスは王位を継承する準備に追われていたのだけれど、馬車での移動中に襲撃を受け――。
決死の逃亡劇は、二人を離れ離れにしてしまった。
命からがら逃げ延びた兄王子と、王宮に残され、兄の替え玉にされた妹姫が、互いのために必死で挑む国の奪還物語。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版

お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

水色オオカミのルク
月芝
児童書・童話
雷鳴とどろく、激しい雨がやんだ。
雲のあいだから光が差し込んでくる。
天から地上へとのびた光の筋が、まるで階段のよう。
するとその光の階段を、シュタシュタと風のような速さにて、駆け降りてくる何者かの姿が!
それは冬の澄んだ青空のような色をしたオオカミの子どもでした。
天の国より地の国へと降り立った、水色オオカミのルク。
これは多くの出会いと別れ、ふしぎな冒険をくりかえし、成長して、やがて伝説となる一頭のオオカミの物語。

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?二本目っ!まだまだお相手募集中です!
月芝
児童書・童話
世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。
ひょんなことから、それを創り出す「剣の母」なる存在に選ばれてしまったチヨコ。
天剣を産み、これを育て導き、ふさわしい担い手に託す、代理婚活までが課せられたお仕事。
いきなり大役を任された辺境育ちの十一歳の小娘、困惑!
誕生した天剣勇者のつるぎにミヤビと名づけ、共に里でわちゃわちゃ過ごしているうちに、
ついには神聖ユモ国の頂点に君臨する皇さまから召喚されてしまう。
で、おっちら長旅の末に待っていたのは、国をも揺るがす大騒動。
愛と憎しみ、様々な思惑と裏切り、陰謀が錯綜し、ふるえる聖都。
騒動の渦中に巻き込まれたチヨコ。
辺境で培ったモロモロとミヤビのチカラを借りて、どうにか難を退けるも、
ついにはチカラ尽きて深い眠りに落ちるのであった。
天剣と少女の冒険譚。
剣の母シリーズ第二部、ここに開幕!
故国を飛び出し、舞台は北の国へと。
新たな出会い、いろんなふしぎ、待ち受ける数々の試練。
国の至宝をめぐる過去の因縁と暗躍する者たち。
ますます広がりをみせる世界。
その中にあって、何を知り、何を学び、何を選ぶのか?
迷走するチヨコの明日はどっちだ!
※本作品は単体でも楽しめるようになっておりますが、できればシリーズの第一部
「剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!」から
お付き合いいただけましたら、よりいっそうの満腹感を得られることまちがいなし。
あわせてどうぞ、ご賞味あれ。
黒地蔵
紫音
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる