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3章:アシュリンと再会。
アシュリンとリーリクル。 2話
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リーリクルの人々は活気があり、「これ見ていかないかい?」や、「迷子? あ、ちがう? じゃあ、リーリクルを楽しんでね!」とすれちがう人たちに声をかけられることも多い。
「……なんというか、いつもこうなの?」
「まぁね。良い人たちだよー」
ラルフの問いに、アシュリンは軽く肩をすくめて答えた。
リーリクルの人たちは観光客にやさしい。湖を見にきた人たちに対して、おすすめのスポットを教え合うくらいにはフレンドリーでもある。
「基本的には……」
「なんで付け足したのっ?」
ぎょっとしたように目を見開くラルフを見て、アシュリンはぽかんと口を開けた。
「あ、アシュリン?」
「ラルフってそんな顔もできたんだね! なんだか、どんどん感情が出てきているんじゃない?」
ばっとラルフに近付いて、じっくりとその表情を見ているアシュリンに、彼は「近い近い近いっ」と彼女から数歩離れようとした。後退ったラルフは、トンっと誰かにぶつかってしまい、「わっ」と声を上げる。
「おっと、大丈夫かい?」
転びそうになったラルフを支えたのは、白髪の老人――……
「おじいちゃん!」
「おや、アシュリン。久しぶりだねぇ」
ふさふさの白いひげがよく似合う、アシュリンのおじいちゃんだった。
「えっ」
びっくりしたのかラルフの身体がぴたりと止まる。それから、ハッとしたように顔を上げて、頭を下げる。
「支えてくれてありがとうございました」
「いえいえ。もしかして、きみが『ラルフ・クラーク』かね?」
「はい、ぼくはラルフ・クラークですが……?」
どうして自分の名前を知っているのだろう、とアシュリンをちらりと見る。彼女はにんまりとした笑みを浮かべて、おじいちゃんに近付いてきた。
「メイソンおじいちゃん、久しぶり! ロッティおばあちゃんは元気?」
「ああ、元気だよ。手紙をもらってから、ずっとソワソワしていたよ」
手紙、とラルフが納得したようにつぶやく。おそらく、アシュリンが手紙に自分の名を書いていたのだろう、と。
「おいで、アシュリン」
アシュリンのおじいちゃん――メイソンは、彼女に向けて大きく腕を広げる。
それを見たアシュリンはぱぁっと表情を輝かせて、メイソンに抱きついた。
あまりにも自然に抱きついたものだから、ラルフは目を丸くしてその光景を見つめている。
「おじいちゃんだぁ!」
「うんうん、アシュリンのおじいちゃんだよ」
なんて、楽しそうに笑っているのを見て、ラルフは眉を下げて微笑んだ。
「うらやましいか?」
「よくわからない」
ぽそりとルプトゥムが問いかけてきたが、ラルフは両肩を上げて頭に左右に振る。
「とりあえず、アシュリンがあんなに無邪気な理由は、納得したけどね」
たくさん愛された子なのだろう、と心の中でつぶやいて、ラルフは微笑ましいその光景をずっと眺め続けていた。
「……なんというか、いつもこうなの?」
「まぁね。良い人たちだよー」
ラルフの問いに、アシュリンは軽く肩をすくめて答えた。
リーリクルの人たちは観光客にやさしい。湖を見にきた人たちに対して、おすすめのスポットを教え合うくらいにはフレンドリーでもある。
「基本的には……」
「なんで付け足したのっ?」
ぎょっとしたように目を見開くラルフを見て、アシュリンはぽかんと口を開けた。
「あ、アシュリン?」
「ラルフってそんな顔もできたんだね! なんだか、どんどん感情が出てきているんじゃない?」
ばっとラルフに近付いて、じっくりとその表情を見ているアシュリンに、彼は「近い近い近いっ」と彼女から数歩離れようとした。後退ったラルフは、トンっと誰かにぶつかってしまい、「わっ」と声を上げる。
「おっと、大丈夫かい?」
転びそうになったラルフを支えたのは、白髪の老人――……
「おじいちゃん!」
「おや、アシュリン。久しぶりだねぇ」
ふさふさの白いひげがよく似合う、アシュリンのおじいちゃんだった。
「えっ」
びっくりしたのかラルフの身体がぴたりと止まる。それから、ハッとしたように顔を上げて、頭を下げる。
「支えてくれてありがとうございました」
「いえいえ。もしかして、きみが『ラルフ・クラーク』かね?」
「はい、ぼくはラルフ・クラークですが……?」
どうして自分の名前を知っているのだろう、とアシュリンをちらりと見る。彼女はにんまりとした笑みを浮かべて、おじいちゃんに近付いてきた。
「メイソンおじいちゃん、久しぶり! ロッティおばあちゃんは元気?」
「ああ、元気だよ。手紙をもらってから、ずっとソワソワしていたよ」
手紙、とラルフが納得したようにつぶやく。おそらく、アシュリンが手紙に自分の名を書いていたのだろう、と。
「おいで、アシュリン」
アシュリンのおじいちゃん――メイソンは、彼女に向けて大きく腕を広げる。
それを見たアシュリンはぱぁっと表情を輝かせて、メイソンに抱きついた。
あまりにも自然に抱きついたものだから、ラルフは目を丸くしてその光景を見つめている。
「おじいちゃんだぁ!」
「うんうん、アシュリンのおじいちゃんだよ」
なんて、楽しそうに笑っているのを見て、ラルフは眉を下げて微笑んだ。
「うらやましいか?」
「よくわからない」
ぽそりとルプトゥムが問いかけてきたが、ラルフは両肩を上げて頭に左右に振る。
「とりあえず、アシュリンがあんなに無邪気な理由は、納得したけどね」
たくさん愛された子なのだろう、と心の中でつぶやいて、ラルフは微笑ましいその光景をずっと眺め続けていた。
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