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2章:アシュリンと出会い。

アシュリンの目的地。 3話

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「し、神殿都市では普通のことなのっ?」

 顔を真っ赤に染めたまま、アシュリンがラルフにたずねる。

 彼は彼女の手を離して、あごに手をかけて「うーん」と首をかしげた。

「他の人たちがしていることを、真似してみただけ。いやだった?」

 ぶんぶんと勢いいきおよく首を横に振るのを見て、ラルフはほっとしたように息を吐いた。その様子を見ていたルプトゥムがくつくつと喉を鳴らして笑い、ノワールはしっぽでテーブルを叩いている。

「アシュリンはどこが目的地なの?」
「お母さんの生まれた街、リーリクルよ。あっちのおじいちゃんとおばあちゃんに会うのが、目標なの」

 母のホイットニーの故郷こきょうは、湖と百合の花が有名な街だ。一緒に住んでいる祖父母よりも会う頻度ひんどは少ないので、そこを目的地にしている。そのことはリーリクルの祖父母も知っていて……むしろ歓迎すると言われていた。

 フォーサイス家の家族と手紙のやりとりをして決めたことなので、旅の途中で目的地を決めたのだ。ラルフは感心したようにアシュリンたちをながめる。

「そういう決め方もあるんだね」
「ラルフは目的地がないって言っていたけど、旅の終わりはどうするつもりだったの?」
「テキトーで良いかなって。ぼくの旅の目的は『世界をこの目で見る』ことだから」

 くすっと口角を上げるのを見て、アシュリンは「へぇー!」と声を上げた。

 旅の目的はそれぞれ違う。だからこそ、こうして話していて楽しいのだろうなと、思わず頬がゆるんでしまう。

「リーリクルには、行ったことある?」
「ううん、まだないよ。だから、楽しみ」

 心底楽しそうに笑うラルフに、アシュリンもつられたように笑う。笑顔を見るとつられてしまうので、アシュリンは自分の頬に両手を添えてから、気を取り直したようにリュックを背負った。

「それじゃあ、リーリクルに行こう!」
陸路りくろで?」
「もちろん!」

 リーリクルまで、空の道を使えばあっという間だ。以前、母の故郷に訪れたときは、空の道を進んだ。そんなに長く村を離れられないからという理由で。祖父母は娘と孫の訪問に喜んでくれたことを思い出し、心がウキウキとしてくる。

「陸路だとちょっと遠いけど……」
「前に行ったときは、一泊二日の旅だったの。空の道でバビューンといって、お泊りして、すぐ帰っちゃったんだ。でも、これはわたしの旅だから、わたしが満足する方法で行こうと思うの!」

 目をらんらんと輝かせて、アシュリンは両腕を大きく広げた。

 やさしい祖父母だから、きっとアシュリンが訪れるのを待ってくれている。だからこそ、アシュリンはリーリクルの祖父母にもたまに手紙を書いて、『お土産話をたくさん作りたいから、ゆっくり行くね!』と伝えてある。
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