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1章:アシュリンの旅立ち。
アシュリンの旅立ち。 6話
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ドキドキとワクワクが混ざり合って、アシュリンの気持ちは昂っている。ホイットニーは娘の感情を機敏に感じ取っているのか、村人たちとすれ違うたびに足を止め、アシュリンが旅立つことを話す。
そのあいだ、アシュリンはホイットニーと村人の話を聞くだけだ。一通り話し終えると村人が「アシュリンちゃん、旅を楽しんでね」と一言、彼女に声をかけて去っていく。それを数回繰り返すことで、アシュリンの昂っていた気持ちは段々と静まっていった。
「さぁ、落ち着いたところで旅に必要なものを買いそろえるわよ」
「お母さん、わざとだったの?」
「アシュリンが興奮するのもわかるんだけどね。こういう買い物をするときは、冷静さが必要なのよ」
「れいせいさ?」
「そう。自分に必要なものを見極めるためにね」
パチンとウインクをするホイットニーに、アシュリンはなるほど、とつぶやいた。確かに興奮したまま買い物をしたら、旅に必要のないものまで買ってしまうかもしれない。
ホイットニーは村の商店でいろいろと買った。旅に必需品なものもサクサクと決めて、どんなものが良いかアシュリンの意見を聞きながら買っていく。
「お兄ちゃんのときも、こうして買ったの?」
「ええ。きっとエレノアのときもこうして買うわ」
「そっか、エレノアもいつか旅立つんだね」
妹のエレノアが旅立つのはいつだろうと、アシュリンは考えた。彼女はまだ五歳。アシュリンと同じ年だとしても、五年はある。兄のアンディと同じ十二歳なら、あと七年。
「アンディが戻ってくるのと、エレノアが旅立つのが同時になる可能性もあるのよねぇ」
「旅の終わりっていつなの?」
「絵本が全部埋まるまで、かしらね? お父さんとお母さんはね、お父さんの旅の途中で出会ったのよ。きっと、アンディが帰ってくるとき、お友だちを連れてきてくれると思うの」
ワクワクとした表情を浮かべるホイットニーに、アンディが帰ってくるまでに自分の旅が終わるのだろうかと考え、アシュリンはぷるぷると首を横に振った。
「いつか、お兄ちゃんにも会えるかな?」
「同じ世界を旅しているんだもの、アシュリンの旅の途中で出会うかもしれないわね」
買ったものをサクサクとリュックに詰め込んでいくホイットニーに、アシュリンがたずねると、彼女はくすくすと笑い声を上げながら答えてくれた。その答えに、アンディと出会える可能性を感じて、アシュリンは再び気持ちが昂る。
もしもアンディに会えたら、どんなことを話そうかと考えるだけで楽しかった。
「ノワールも連れていってね。あの子はアシュリンの使い魔だから」
「うん!」
「他の人も使い魔を連れているかもしれないから、驚かないのよ?」
「どんな使い魔なのかは気になるなぁ……」
この世界に住んでいる人たちには、生まれたときに必ず使い魔が現れる。アシュリンの使い魔は黒猫のノワールだ。家族や村人の使い魔は見たことも話したことも触れたこともあるが、村の外の人たちの使い魔と会うのは初めてだから、それもドキドキする。
そのあいだ、アシュリンはホイットニーと村人の話を聞くだけだ。一通り話し終えると村人が「アシュリンちゃん、旅を楽しんでね」と一言、彼女に声をかけて去っていく。それを数回繰り返すことで、アシュリンの昂っていた気持ちは段々と静まっていった。
「さぁ、落ち着いたところで旅に必要なものを買いそろえるわよ」
「お母さん、わざとだったの?」
「アシュリンが興奮するのもわかるんだけどね。こういう買い物をするときは、冷静さが必要なのよ」
「れいせいさ?」
「そう。自分に必要なものを見極めるためにね」
パチンとウインクをするホイットニーに、アシュリンはなるほど、とつぶやいた。確かに興奮したまま買い物をしたら、旅に必要のないものまで買ってしまうかもしれない。
ホイットニーは村の商店でいろいろと買った。旅に必需品なものもサクサクと決めて、どんなものが良いかアシュリンの意見を聞きながら買っていく。
「お兄ちゃんのときも、こうして買ったの?」
「ええ。きっとエレノアのときもこうして買うわ」
「そっか、エレノアもいつか旅立つんだね」
妹のエレノアが旅立つのはいつだろうと、アシュリンは考えた。彼女はまだ五歳。アシュリンと同じ年だとしても、五年はある。兄のアンディと同じ十二歳なら、あと七年。
「アンディが戻ってくるのと、エレノアが旅立つのが同時になる可能性もあるのよねぇ」
「旅の終わりっていつなの?」
「絵本が全部埋まるまで、かしらね? お父さんとお母さんはね、お父さんの旅の途中で出会ったのよ。きっと、アンディが帰ってくるとき、お友だちを連れてきてくれると思うの」
ワクワクとした表情を浮かべるホイットニーに、アンディが帰ってくるまでに自分の旅が終わるのだろうかと考え、アシュリンはぷるぷると首を横に振った。
「いつか、お兄ちゃんにも会えるかな?」
「同じ世界を旅しているんだもの、アシュリンの旅の途中で出会うかもしれないわね」
買ったものをサクサクとリュックに詰め込んでいくホイットニーに、アシュリンがたずねると、彼女はくすくすと笑い声を上げながら答えてくれた。その答えに、アンディと出会える可能性を感じて、アシュリンは再び気持ちが昂る。
もしもアンディに会えたら、どんなことを話そうかと考えるだけで楽しかった。
「ノワールも連れていってね。あの子はアシュリンの使い魔だから」
「うん!」
「他の人も使い魔を連れているかもしれないから、驚かないのよ?」
「どんな使い魔なのかは気になるなぁ……」
この世界に住んでいる人たちには、生まれたときに必ず使い魔が現れる。アシュリンの使い魔は黒猫のノワールだ。家族や村人の使い魔は見たことも話したことも触れたこともあるが、村の外の人たちの使い魔と会うのは初めてだから、それもドキドキする。
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