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2章:14歳
44話
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ルイに外の掃除をお願いして、私たちはポーションの制作に取り掛かった。
「ポーション三百本分の材料はあるんですよね?」
「ああ、ここに……」
おじさんがゴソゴソと取り出した。私はその材料を見て、目元を細める。うーん、あんまり品質がよろしくないようだ。
「……おふたりも外の掃除をお願いしてもよろしいですか」
「ひ、ひとりで作るつもりか?」
「……大丈夫です、私、錬金術師なので。おふたりとも、ルイの手伝いをお願いします。大丈夫、三十本ずつ作りますから。その間に綺麗にしてください。中はこんなに綺麗になったんですから」
掃除道具を渡してルイの手伝いをお願いした。ふたりが出て行ったのを見て、ポーションの材料に視線を向ける。あまり性能の良いポーションを作るつもりはないけれど……これはあんまりだと思うから……。
「精霊たちの力を借りたいのだけれど、良いかしら?」
ポンっと音を立てて精霊たちが小人の姿で現れた。心なしか嬉しそうだ。
「メイベルのお手伝い!」
「するよ、するよー!」
「ありがとう。この材料でポーションを作るのだけど、普通の品質にしたいの。協力してね」
「はーい」
精霊たちは小さな手を上げて返事をしてくれた。その姿がとても可愛らしい。……精霊相手にこんなことを言ってはいけないのかもしれないけれど、小さな子が一生懸命お手伝いする姿って、なんだか心が温まるのよね……。
「それじゃあ、まずはこの薬草を綺麗にしてくれる?」
「わかったー、綺麗にする!」
水の精霊が空中に楕円型の水を出して、その中に他の精霊たちが薬草を入れていく。全部の薬草を入れたら水の精霊が器用に薬草の汚れを水で落とす。汚れが落ちた薬草を、風の精霊が水滴を飛ばしてくれた。
「ありがとう。ええと、少し薬草を炙ってくれる?」
「はーい!」
自分の出番だ! とばかりに嬉しそうに笑う火の精霊。薬草を炙ってもらってから検定で見てみると、大分品質が改善した。よしよし。それを三十本の分量、錬金釜に入れる。ポーションだから飲みやすいほうが良いよね。いくら飲んでも身体に変調がないようなくらいが理想。
冒険者たちに限らず、ポーションを使う人たちはたくさんいるだろうし……。
「お水を入れてくれる?」
「はーい」
「うん、そのくらいで大丈夫、ありがとう」
水の精霊が錬金釜に水を入れてくれたから、今度は飲みやすくするために甘味草を入れる。鑑定を繰り返して品質を確かめる。うん、普通ならオッケー。精霊たちのおかげで品質が大分良くなった。きちんと管理していないと薬草たちの品質って一気に下がっちゃうからね。甘味草の他にもいろいろと混ぜ合わせて――ぐるぐるとかき混ぜる。しばらくして完成し、それを後三回繰り返した。
これで配達分は確保できたし、ちょっと男性陣のほうへ行ってみようかな。
店の外に出ると、ルイたちが一生懸命に掃除をしていた。
「……うん、大分綺麗になりましたね」
「じょ、嬢ちゃん……。もう終わったのかい?」
「配達分は終わりました。そう言えば聞いてませんでしたが、ポーション三百本の中に配達分も入ってました? 別でした?」
「いや、入ってる。……まさかこんなに早く配達分を終わらせるとは……」
「ルイ、配達分を渡したいから、中に入ってくれる? おふたりはそのまま掃除をお願いします」
「あ、ああ……」
ふたりともこくりとうなずいて、ルイだけ店内に入れた。
「……本当に配達分終わったんだ。じゃあ、これを配達してくるよ。その間にメイは残りのポーション作ってもらっても良い?」
「もちろん!」
「……それにしても、掃除しただけで店内の雰囲気ってガラッと変わるものなんだね……」
「……そりゃあ、そうよ。それじゃ、配達お願いします」
「任せて。……あ、店の人、ひとり連れて行っても良い? 俺ひとりよりも良いと思う」
「そこはルイに任せるわ。ひとりは掃除させておいてね」
「わかった」
入りやすいお店にするためにも。あとは素材の管理についていろいろ聞いてみないといけないわね。ルイは配達分のポーションを持ち、店の外に出て行った。私はそれを見送ってから、再び錬金術でポーションを作り始める。あと六回繰り返せば、三百本だからね。……それにしても、本当に……ポーションの瓶の材料入れてないのに、どうして瓶に入ったままの状態で出て来るのかしら……。それが一番の謎なのよね……。
「……まぁ、便利だから良いのだけど」
私は一度ぐーんと背筋を伸ばしてから、「よしっ!」と気合を入れて、再びポーション作成に戻った。
「ポーション三百本分の材料はあるんですよね?」
「ああ、ここに……」
おじさんがゴソゴソと取り出した。私はその材料を見て、目元を細める。うーん、あんまり品質がよろしくないようだ。
「……おふたりも外の掃除をお願いしてもよろしいですか」
「ひ、ひとりで作るつもりか?」
「……大丈夫です、私、錬金術師なので。おふたりとも、ルイの手伝いをお願いします。大丈夫、三十本ずつ作りますから。その間に綺麗にしてください。中はこんなに綺麗になったんですから」
掃除道具を渡してルイの手伝いをお願いした。ふたりが出て行ったのを見て、ポーションの材料に視線を向ける。あまり性能の良いポーションを作るつもりはないけれど……これはあんまりだと思うから……。
「精霊たちの力を借りたいのだけれど、良いかしら?」
ポンっと音を立てて精霊たちが小人の姿で現れた。心なしか嬉しそうだ。
「メイベルのお手伝い!」
「するよ、するよー!」
「ありがとう。この材料でポーションを作るのだけど、普通の品質にしたいの。協力してね」
「はーい」
精霊たちは小さな手を上げて返事をしてくれた。その姿がとても可愛らしい。……精霊相手にこんなことを言ってはいけないのかもしれないけれど、小さな子が一生懸命お手伝いする姿って、なんだか心が温まるのよね……。
「それじゃあ、まずはこの薬草を綺麗にしてくれる?」
「わかったー、綺麗にする!」
水の精霊が空中に楕円型の水を出して、その中に他の精霊たちが薬草を入れていく。全部の薬草を入れたら水の精霊が器用に薬草の汚れを水で落とす。汚れが落ちた薬草を、風の精霊が水滴を飛ばしてくれた。
「ありがとう。ええと、少し薬草を炙ってくれる?」
「はーい!」
自分の出番だ! とばかりに嬉しそうに笑う火の精霊。薬草を炙ってもらってから検定で見てみると、大分品質が改善した。よしよし。それを三十本の分量、錬金釜に入れる。ポーションだから飲みやすいほうが良いよね。いくら飲んでも身体に変調がないようなくらいが理想。
冒険者たちに限らず、ポーションを使う人たちはたくさんいるだろうし……。
「お水を入れてくれる?」
「はーい」
「うん、そのくらいで大丈夫、ありがとう」
水の精霊が錬金釜に水を入れてくれたから、今度は飲みやすくするために甘味草を入れる。鑑定を繰り返して品質を確かめる。うん、普通ならオッケー。精霊たちのおかげで品質が大分良くなった。きちんと管理していないと薬草たちの品質って一気に下がっちゃうからね。甘味草の他にもいろいろと混ぜ合わせて――ぐるぐるとかき混ぜる。しばらくして完成し、それを後三回繰り返した。
これで配達分は確保できたし、ちょっと男性陣のほうへ行ってみようかな。
店の外に出ると、ルイたちが一生懸命に掃除をしていた。
「……うん、大分綺麗になりましたね」
「じょ、嬢ちゃん……。もう終わったのかい?」
「配達分は終わりました。そう言えば聞いてませんでしたが、ポーション三百本の中に配達分も入ってました? 別でした?」
「いや、入ってる。……まさかこんなに早く配達分を終わらせるとは……」
「ルイ、配達分を渡したいから、中に入ってくれる? おふたりはそのまま掃除をお願いします」
「あ、ああ……」
ふたりともこくりとうなずいて、ルイだけ店内に入れた。
「……本当に配達分終わったんだ。じゃあ、これを配達してくるよ。その間にメイは残りのポーション作ってもらっても良い?」
「もちろん!」
「……それにしても、掃除しただけで店内の雰囲気ってガラッと変わるものなんだね……」
「……そりゃあ、そうよ。それじゃ、配達お願いします」
「任せて。……あ、店の人、ひとり連れて行っても良い? 俺ひとりよりも良いと思う」
「そこはルイに任せるわ。ひとりは掃除させておいてね」
「わかった」
入りやすいお店にするためにも。あとは素材の管理についていろいろ聞いてみないといけないわね。ルイは配達分のポーションを持ち、店の外に出て行った。私はそれを見送ってから、再び錬金術でポーションを作り始める。あと六回繰り返せば、三百本だからね。……それにしても、本当に……ポーションの瓶の材料入れてないのに、どうして瓶に入ったままの状態で出て来るのかしら……。それが一番の謎なのよね……。
「……まぁ、便利だから良いのだけど」
私は一度ぐーんと背筋を伸ばしてから、「よしっ!」と気合を入れて、再びポーション作成に戻った。
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