30 / 54
2章:14歳
30話
しおりを挟む
敬語を使うか使わないかは後から考えることにして、セレストとダーシーに化粧品を渡すことが出来て満足した私は、もうひとつ……鞄から日焼け止め取り出して、それを渡してから解散した。明日、スキンケアの最後に使ってくださいって伝えると、ふたりは不思議そうな表情を浮かべていたけれど、こくりとうなずいてくれた。
ちなみに日焼け止めは石鹸で落ちるタイプだ。調合に調合を重ねて出来た自慢の試作品だ。シミそばかすは年齢を重ねると出て来るって前世のお母さんが言っていた。そして、『若い頃からしっかり予防するのが大事よ!』と熱く語っていた。
「……思い出し笑い?」
「うん、ちょっと前世のお母さんのことを思い出してね。明日も魔物退治かな?」
火の精霊が話し掛けてきた。私は小人のような火の精霊の頬を撫でると、火の精霊はきゅっと私の指に抱き着いて来た。可愛い。
「……精霊たちって他の人たちには視えないのかな……」
本当、こんなに可愛いのに私しか視られないなんてもったいない。
「精霊を信じる人たちには、視えるかもね」
他の精霊たちも集まって来た。水の精霊、風の精霊、地の精霊。四大属性の精霊(小人)だ。本来の姿は全然違うとのことなので、みんな私のために可愛い姿で来てくれているのだろう。
「魔物退治なら、弱点属性の時は絶対に使ってね!」
「ぼくらは使ってもらいたいもんね~」
「そうそう、だってせっかくの精霊使いなんだし~、ちゃんと使ってね」
「ふふ、わかってる。ありがとうね。それじゃあ、今日は休もうかな……」
「おやすみー!」
「おやすみ!」
ベッドに潜り込んで目を閉じるとすぐに睡魔が送って来た。
そして次に目を開けた時、すでに陽は昇っていた。精霊たちに「朝だよー」って起こされた。目覚まし要らず、ありがたい。ベッドから起き上がり腕を上にぐーんと伸ばしてみる。
「おはよう~、起こしてくれてありがとうね~……」
寝ぼけたままそう言うと、精霊たちがくるくると踊るように私の周りを回っていた。ベッドから降りて軽くストレッチをしてから身支度を整えた。
食堂まで向かい、扉を開けるとみんなすでに起きていたようで昨日と同じ椅子に座っていた。早い。
「ごめんなさい、遅れま……」
「メイちゃん!」
私が待たせたことに対する謝罪の言葉を口にしようとすると、その前にセレストがガタンと音を立てて椅子から立ち上がり私の元まで駆け寄って来た。
「せ、セレスト……?」
怒っている……? と思ったけれど、セレストは私の手をぎゅっと握って来た。驚いていると、セレストは目をキラキラと輝かせて昨日の化粧品のことを、マシンガントークで語ってくれた。とても長かったから要約すると、朝起きた時から肌の様子がとても良かったこと、朝も化粧水や乳液を昨日渡したものに変えたら肌のハリが違うことを教えてくれた。ええと、つまり、気に入ってくれたみたい。
「そ、それは良かったわ……?」
疑問系になってしまって変な返事に……。セレストは一気に喋ったことで満足したのか、席に戻った。ルイとナタンからの視線が刺さって痛い。
「朝食の時間ですので、席にお座りください」
「あ、はい」
ダーシーが朝食を運んできたので、私は慌てて席についた。トースト、ハムエッグ、サラダ、スープ。うん、めっちゃ朝食って感じ! みんなで朝食を食べて、食後のお茶を飲んでいる途中で、ダーシーが話し掛けてきた。
「メイさん、昨日いただいた化粧品なのですが、私の肌にも合いました」
「本当? 良かった!」
ほっと安堵したように息を吐くと、ルイとナタンが同時に「化粧品?」と首を傾げた。
「メイ、良かったらナタンたちにも見せてくれないかしら?」
「あ、は、はい! ちょっと待っていてください!」
私は立ち上がって、慌てて自分の部屋へと向かい、鞄を持って食堂へ戻る。全力疾走したけれど、九年間身体を鍛えていたから、息を切らすことなく戻ることが出来た。
「は、早かったな……」
驚いたようにルイが呟いた。ナタンはこほんと咳払いをしてから、「化粧品とは?」と聞いて来たので、私は席に戻って化粧品を並べた。すると、ナタンが興味深そうにじっと見つめている。
「封を開けても?」
「あ、はい。構いません!」
一体どれだけの化粧品を持って来ているんだ、とツッコミが入りそうだけど、実はこれ親しくなった人にテスターしてもらおうと考えて結構多めに持って来ていたのよね。私が作ったものを試してもらって、肌に合うようなら口コミで広めてもらおうと思っていたの。二週間くらいで使い切らなきゃいけないけど、空間収納がある世界だ。賞味期限も消費期限もないに等しい。……もちろん、空間収納に入れている場合だけ、だけどね?
「ふむ……」
ナタンが封を切って手のひらに化粧水を出して、手に馴染ませるように塗る。その姿は昨日のセレストとそっくりだった。
「……刺激が少ない化粧水だな。万民受けしそうだ」
「えっ、塗っただけでわかるんですか……?」
「ああ。セレストはあまり肌が強くないから……刺激が少ないものを探しているうちに……」
ふっと遠い目をするナタンに、彼女とどのくらいの付き合いかわからないけれど、そんな目をするってことは、かなりの化粧品を試していたんだろうなぁ……。
ちなみに日焼け止めは石鹸で落ちるタイプだ。調合に調合を重ねて出来た自慢の試作品だ。シミそばかすは年齢を重ねると出て来るって前世のお母さんが言っていた。そして、『若い頃からしっかり予防するのが大事よ!』と熱く語っていた。
「……思い出し笑い?」
「うん、ちょっと前世のお母さんのことを思い出してね。明日も魔物退治かな?」
火の精霊が話し掛けてきた。私は小人のような火の精霊の頬を撫でると、火の精霊はきゅっと私の指に抱き着いて来た。可愛い。
「……精霊たちって他の人たちには視えないのかな……」
本当、こんなに可愛いのに私しか視られないなんてもったいない。
「精霊を信じる人たちには、視えるかもね」
他の精霊たちも集まって来た。水の精霊、風の精霊、地の精霊。四大属性の精霊(小人)だ。本来の姿は全然違うとのことなので、みんな私のために可愛い姿で来てくれているのだろう。
「魔物退治なら、弱点属性の時は絶対に使ってね!」
「ぼくらは使ってもらいたいもんね~」
「そうそう、だってせっかくの精霊使いなんだし~、ちゃんと使ってね」
「ふふ、わかってる。ありがとうね。それじゃあ、今日は休もうかな……」
「おやすみー!」
「おやすみ!」
ベッドに潜り込んで目を閉じるとすぐに睡魔が送って来た。
そして次に目を開けた時、すでに陽は昇っていた。精霊たちに「朝だよー」って起こされた。目覚まし要らず、ありがたい。ベッドから起き上がり腕を上にぐーんと伸ばしてみる。
「おはよう~、起こしてくれてありがとうね~……」
寝ぼけたままそう言うと、精霊たちがくるくると踊るように私の周りを回っていた。ベッドから降りて軽くストレッチをしてから身支度を整えた。
食堂まで向かい、扉を開けるとみんなすでに起きていたようで昨日と同じ椅子に座っていた。早い。
「ごめんなさい、遅れま……」
「メイちゃん!」
私が待たせたことに対する謝罪の言葉を口にしようとすると、その前にセレストがガタンと音を立てて椅子から立ち上がり私の元まで駆け寄って来た。
「せ、セレスト……?」
怒っている……? と思ったけれど、セレストは私の手をぎゅっと握って来た。驚いていると、セレストは目をキラキラと輝かせて昨日の化粧品のことを、マシンガントークで語ってくれた。とても長かったから要約すると、朝起きた時から肌の様子がとても良かったこと、朝も化粧水や乳液を昨日渡したものに変えたら肌のハリが違うことを教えてくれた。ええと、つまり、気に入ってくれたみたい。
「そ、それは良かったわ……?」
疑問系になってしまって変な返事に……。セレストは一気に喋ったことで満足したのか、席に戻った。ルイとナタンからの視線が刺さって痛い。
「朝食の時間ですので、席にお座りください」
「あ、はい」
ダーシーが朝食を運んできたので、私は慌てて席についた。トースト、ハムエッグ、サラダ、スープ。うん、めっちゃ朝食って感じ! みんなで朝食を食べて、食後のお茶を飲んでいる途中で、ダーシーが話し掛けてきた。
「メイさん、昨日いただいた化粧品なのですが、私の肌にも合いました」
「本当? 良かった!」
ほっと安堵したように息を吐くと、ルイとナタンが同時に「化粧品?」と首を傾げた。
「メイ、良かったらナタンたちにも見せてくれないかしら?」
「あ、は、はい! ちょっと待っていてください!」
私は立ち上がって、慌てて自分の部屋へと向かい、鞄を持って食堂へ戻る。全力疾走したけれど、九年間身体を鍛えていたから、息を切らすことなく戻ることが出来た。
「は、早かったな……」
驚いたようにルイが呟いた。ナタンはこほんと咳払いをしてから、「化粧品とは?」と聞いて来たので、私は席に戻って化粧品を並べた。すると、ナタンが興味深そうにじっと見つめている。
「封を開けても?」
「あ、はい。構いません!」
一体どれだけの化粧品を持って来ているんだ、とツッコミが入りそうだけど、実はこれ親しくなった人にテスターしてもらおうと考えて結構多めに持って来ていたのよね。私が作ったものを試してもらって、肌に合うようなら口コミで広めてもらおうと思っていたの。二週間くらいで使い切らなきゃいけないけど、空間収納がある世界だ。賞味期限も消費期限もないに等しい。……もちろん、空間収納に入れている場合だけ、だけどね?
「ふむ……」
ナタンが封を切って手のひらに化粧水を出して、手に馴染ませるように塗る。その姿は昨日のセレストとそっくりだった。
「……刺激が少ない化粧水だな。万民受けしそうだ」
「えっ、塗っただけでわかるんですか……?」
「ああ。セレストはあまり肌が強くないから……刺激が少ないものを探しているうちに……」
ふっと遠い目をするナタンに、彼女とどのくらいの付き合いかわからないけれど、そんな目をするってことは、かなりの化粧品を試していたんだろうなぁ……。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
秋月一花
恋愛
旅芸人のひとりとして踊り子をしながら各地を巡っていたアナベルは、十五年前に一度だけ会ったことのあるレアルテキ王国の国王、エルヴィスに偶然出会う。
「君の力を借りたい」
あまりにも真剣なその表情に、アナベルは詳しい話を聞くことにした。
そして、その内容を聞いて彼女はエルヴィスに協力することを約束する。
こうして踊り子のアナベルは、エルヴィスの寵姫として王宮へ入ることになった。
目的はたったひとつ。
――王妃イレインから、すべてを奪うこと。
仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか
サクラ近衛将監
ファンタジー
レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。
昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。
記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。
二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。
男はその未来を変えるべく立ち上がる。
この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。
この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。
投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。
【完結】第三王子殿下とは知らずに無礼を働いた婚約者は、もう終わりかもしれませんね
白草まる
恋愛
パーティーに参加したというのに婚約者のドミニクに放置され壁の花になっていた公爵令嬢エレオノーレ。
そこに普段社交の場に顔を出さない第三王子コンスタンティンが話しかけてきた。
それを見たドミニクがコンスタンティンに無礼なことを言ってしまった。
ドミニクはコンスタンティンの身分を知らなかったのだ。
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
【短編集】勘違い、しちゃ駄目ですよ
鈴宮(すずみや)
恋愛
ざまぁ、婚約破棄、両片思いに、癖のある短編迄、アルファポリス未掲載だった短編をまとめ、公開していきます。(2024年分)
【収録作品】
1.勘違い、しちゃ駄目ですよ
2.欲にまみれた聖女様
3.あなたのおかげで今、わたしは幸せです
4.だって、あなたは聖女ではないのでしょう?
5.婚約破棄をされたので、死ぬ気で婚活してみました
【1話目あらすじ】
文官志望のラナは、侯爵令息アンベールと日々成績争いをしている。ライバル同士の二人だが、ラナは密かにアンベールのことを恋い慕っていた。
そんなある日、ラナは父親から政略結婚が決まったこと、お相手の意向により夢を諦めなければならないことを告げられてしまう。途方に暮れていた彼女に、アンベールが『恋人のふり』をすることを提案。ラナの婚約回避に向けて、二人は恋人として振る舞いはじめる。
けれど、アンベールの幼馴染であるロミーは、二人が恋人同士だという話が信じられない。ロミーに事情を打ち明けたラナは「勘違い、しちゃ駄目ですよ」と釘を差されるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる