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2章:14歳

28話

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 その後、夜遅くまでこの家でのルールを決めた。基本的なことはジェフリーやダーシーにお願いすることになるけれど、出来る限り私たちも手伝うということに。洗濯や食器洗いも、出来る人がやるって感じ。料理に関しては、みんなでそれぞれ持ち寄ったりしようってことになった。
 ジェフリーやダーシーにも休みが必要だと私が主に言い切った。ふたりは「休み?」って感じに首を傾げていたけれど、押し切った。

「あっ、えっと、食器洗う時に使って欲しいものがあるのだけど……」
「使って欲しいもの、ですか?」

 ダーシーが私を見て不思議そうに言った。こくりとうなずいて、食器洗いが楽になるもの! お父さんも私が作ったアレを使って、「メイベル、これうちの商品にしよう!」と両手を握ってくれたものだ!

「……気になるから見たいな」

 ルイの言葉に同意するように、ナタンとセレストも私をじっと見ていた。……イケメンや美少女……いや、美女? に見つめられるのってなんだか落ち着かない。……まぁ、興味を持ってくれたのは嬉しいけれど。
 私は荷物を置いている部屋――自室に戻ると、鞄から荷物を取り出す。油っぽいものを洗う時にも便利だからね。それからみんなで厨房へ向かった。

「これ、使ってみてください!」

 さっと取り出したのは食器洗い洗剤だ。なんで作れたかって? 企業秘密だ。……企業してないか。……ただ単に鑑定のおかげだ。鑑定したものを錬金釜にポイポイ入れて、ぐるぐるかき混ぜたら完成! ……こんなに簡単に食器洗い洗剤が出来るとは……。他にもいろいろ、鑑定で見た便利そうなものを作った。お父さんが気に入ったものは売り出したし、私は私で化粧品を調合したりもした。スキンケアは大事って、前世のお母さんが言っていたもの。
 厨房に重なっているお皿やカップを見て、私は袖を捲ってスポンジを手に取り、食器洗い洗剤を使った。

「見ていてくださいね!」

 まずは私が見本を見せる。食器洗い洗剤を使って見せると、みんな興味津々に私の手元を見つめる。洗剤をつけたスポンジをくしゅくしゅと動かすと、白い泡が出てきた。その泡を使ってお皿を洗う。泡だらけになったお皿を流すとピカピカに!

「……こ、これは……」
「すごい……!」

 ジェフリーとダーシーが感激したような声を上げた。

「使ってみても良いですか?」
「もちろん!」

 そこからはふたりにバトンタッチ。ジェフリーが洗剤を使って洗い、ダーシーがお皿を流して風魔法で乾かしていた。あっという間に綺麗になったお皿を見て、みんな「おお……」と感心したように見ていた。セレストが綺麗になったお皿を持って、「これ、どこに片付ければいいのかしら?」と聞いて来た。ジェフリーとダーシーが驚いたように顔を上げて、ダーシーが「自分がやります!」と慌てていたけれど、セレストは「あら、自分で出来ることは自分で、が冒険者の掟ですわ」とにっこり微笑んでダーシーを黙らせた。

「……美人の微笑みは武器になる……」

 ぼそりと呟いた私の言葉に、ルイ、ナタン、ジェフリーが吹き出した。

「まぁ、セレストの言葉も一理あるな。冒険者は自分のことが出来て普通なんだし」
「……セレストって貴族だったんですよね。良く冒険者になろうと思いましたね……」
「元々物語が好きな人だったから。物語は物語でも、お姫さまと王子さまのラブロマンスじゃなくて、魔物たちを倒す冒険ものだったけどな……」

 ふっと目元を細めるナタンに、私は「そっかぁ」と相槌を打った。……なんだか、セレストと趣味が合うような気がした。今度、お勧めの冒険もの小説を聞いてみようかな。
 みんなで食器を片付けて、それから今度はポケットに入れていたハンドクリームを取り出して、みんなで使ってみた。もちろん、これも錬金釜で作ったものだ。

「手のケア?」
「はい。すべすべになりますよ」
「あら、いいわねぇ、これ。香りはないのね」
「はい、冒険者仕様です」

 冒険者は匂いに敏感になるので……。とはいえ、せっかくだからと良い香りのものも作ってみた。そしたら、これは村の女性陣にヒットしたのよね……。村で一時的なブームを作ったのは良い思い出だ。

「セレスト、ダーシー、後で私の部屋に来てくれませんか?」

 ふたりの元に近付いてこそこそと話す。ふたりは「どうして?」と首を傾げたけれど、私が小声で誘った理由を言うと、ふたりの目がきらりと輝いた気がした。

「――楽しみにしていますわ」
「私も楽しみです」

 ……やっぱり、女性って美しさを追求したいものかな……? なんて考えながら、ルイたちに「おやすみ」を言って自室に戻る。セレストたちも、一度自室に戻ってから私の部屋に集合することになった。
 部屋に戻って椅子に座る。鞄からふたりに紹介したいものを次々に取り出して眺めた。私が作ったものを気に入ってくれると嬉しいな。そんなことを思いながら、ふたりを待った。
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