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2章:14歳
25話
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「……ルイって貴族だったの?」
「断じて違う!」
きっぱりと言い切ったルイに、私たちはちょっと驚いた。ルイはこほんと咳払いをして、私たちへ視線を向けると、すぐにメイド服の女性と執事服の男性に声を掛ける。
「今日から一緒に暮らすことになった、パーティメンバーだ。右からメイ、セレスト、ナタン。そして、この家を任せているジェフリーとダーシーだ」
「よろしくお願いいたします、みなさま」
ふたりはぴったりと言葉を合わせて、動きも合わせて頭を下げた。あまりにシンクロした動きに驚いてしまった。私たちは顔を見合わせて、それからぺこりと頭を下げて「こちらこそ」と言った。
「それでは、ご案内致します。ついて来てください」
「あ、はい……」
「オレはその前に、拠点にしていた宿屋に挨拶してくるよ。すぐに戻る」
「あ、そうか。ふたりはそうだったな。一緒に暮らすって言って良かったか?」
「セレストが一緒に暮らしても良いと思っているのなら、オレはそれでいい」
先に歩いていたセレストが、くるりと振り返ってナタンに向けて「折角パーティを組んだのだから、こういうのも悪くないのではなくて?」と楽しそうに声を掛けていた。ナタンは仕方ないなぁという風に肩をすくめていたけれど、セレストの思いを優先させたいというのはよくわかった。
ナタンがルイと少し話している間に、私たちはダーシーに案内されて家の中に入った。家主より先に入ってもいいものかちょっと悩んだけれど、ダーシーが「どうされました?」と声を掛けてきたので、私は「お邪魔します」と言ってから家の中に入った。
外から見た時も広いなぁって思っていたけれど、中は本当に広い! 一体うちの何倍あるのだろう……。
「お部屋へ案内します。どのような部屋がよろしいでしょうか」
「……どのような?」
「はい。この家には我々しか住んでおりませんので、選び放題です」
「えっと、じゃあ……あんまり広くない部屋をお願いします……」
「わたくしは広いが良いわ」
「かしこまりました」
そう言って最初に私がこれから暮らす部屋へと案内してくれた。
東向きの角部屋、そこが私の部屋になるようだ。こぢんまりとした部屋は、パント村の実家を思い出させた。いや、あの家もお店と一緒になっているからパント村の中では広いと言えば広いほうだけど、住むスペースはそんなに広くなかったからね。
「……メイちゃん、本当にそんなに狭い部屋でよろしいの?」
「はい、もちろん! こっちのほうが落ち着きます!」
ぐっと拳を握ってそう言うと、セレストは驚いたように目を丸くして、それからくすくす笑った。
「ではダーシー、次はわたくしの部屋を案内してくださる?」
「かしこまりました」
「じゃあ、また後でね、メイちゃん」
私は小さくなずいて手を振った。セレストも手を振ってくれた。
パタンと扉が閉まるのを見てから、自分の部屋になったところに視線を巡らせる。
「天井たかーい」
上を見上げて呟く。とりあえず、荷物の整理をしないといけない。……とはいえ、荷物少ないんだけどさ。それに、空間収納バッグのおかげで軽いし。お父さん、本当にありがとう……!
部屋に備え付けられていたのはクローゼット、机、椅子、それからベッドだ。私が暮らすには充分すぎるほど。錬金釜も小型だから、ここでいろいろ作るのも悪くないだろう。薬は自分で作ったほうが節約になるよね。……あ、一応錬金釜を磨いておこうかな。毒団子を作ったし……。そう考えて、私は錬金釜を取り出して、お掃除セットも取り出した。
お掃除セットは錬金釜用。白い布と中と外を綺麗にする魔法の粉。……という名の、ただの洗剤。これも錬金釜で作ったものなのよね。ただ、この洗剤は毒草にもよく効くから……というか、毒が残らないような調合をしているから、毒草を使った時はいつもこれで掃除している。
「お父さんがくれたんだもん、大切に使わないとね」
お父さんの顔を思い浮かべて、私は小さく笑みを浮かべた。……錬金術師ってアルケミストって言ったっけ。じゃあ……。
「今日からあなたは『アルケー』ね!」
名前を付けると愛着がわくかもしれないし、……いや実はもう愛着はわいているんだけど。だってお父さんがくれた錬金釜だもの!
私がにこにこと錬金釜を愛でながら洗うと、ピカピカになった。白い布で綺麗に拭くと空間収納バッグに戻した。汚れた布は後で洗濯――あれそういえば、洗濯とかお風呂とかってどうすればいいのだろう。
そんなことを考えていると、扉がノックされる音が聞こえた。
「はーい?」
「メイ? 俺だけど……」
「ルイ? ちょっと待って」
パタパタと扉に駆け寄る。扉を開けると、ルイが立っていた。
「お腹空いてない? ジェフリーたちが夕食を用意してくれるって」
「え、ごちそうになって良いの?」
てっきり全員が別々に食べるのかなって思っていたけれど、ジェフリーたちの考えは違うらしい。
「……ありがたいけれど……」
「大丈夫、今日からみんなここで住むんだし……、いろいろとルールを決めたほうがいいと思って」
「なるほど、じゃあありがたくごちそうになるね!」
私がそう言うと、「セレストとナタンはもう来ているよ」と教えてくれた。
「断じて違う!」
きっぱりと言い切ったルイに、私たちはちょっと驚いた。ルイはこほんと咳払いをして、私たちへ視線を向けると、すぐにメイド服の女性と執事服の男性に声を掛ける。
「今日から一緒に暮らすことになった、パーティメンバーだ。右からメイ、セレスト、ナタン。そして、この家を任せているジェフリーとダーシーだ」
「よろしくお願いいたします、みなさま」
ふたりはぴったりと言葉を合わせて、動きも合わせて頭を下げた。あまりにシンクロした動きに驚いてしまった。私たちは顔を見合わせて、それからぺこりと頭を下げて「こちらこそ」と言った。
「それでは、ご案内致します。ついて来てください」
「あ、はい……」
「オレはその前に、拠点にしていた宿屋に挨拶してくるよ。すぐに戻る」
「あ、そうか。ふたりはそうだったな。一緒に暮らすって言って良かったか?」
「セレストが一緒に暮らしても良いと思っているのなら、オレはそれでいい」
先に歩いていたセレストが、くるりと振り返ってナタンに向けて「折角パーティを組んだのだから、こういうのも悪くないのではなくて?」と楽しそうに声を掛けていた。ナタンは仕方ないなぁという風に肩をすくめていたけれど、セレストの思いを優先させたいというのはよくわかった。
ナタンがルイと少し話している間に、私たちはダーシーに案内されて家の中に入った。家主より先に入ってもいいものかちょっと悩んだけれど、ダーシーが「どうされました?」と声を掛けてきたので、私は「お邪魔します」と言ってから家の中に入った。
外から見た時も広いなぁって思っていたけれど、中は本当に広い! 一体うちの何倍あるのだろう……。
「お部屋へ案内します。どのような部屋がよろしいでしょうか」
「……どのような?」
「はい。この家には我々しか住んでおりませんので、選び放題です」
「えっと、じゃあ……あんまり広くない部屋をお願いします……」
「わたくしは広いが良いわ」
「かしこまりました」
そう言って最初に私がこれから暮らす部屋へと案内してくれた。
東向きの角部屋、そこが私の部屋になるようだ。こぢんまりとした部屋は、パント村の実家を思い出させた。いや、あの家もお店と一緒になっているからパント村の中では広いと言えば広いほうだけど、住むスペースはそんなに広くなかったからね。
「……メイちゃん、本当にそんなに狭い部屋でよろしいの?」
「はい、もちろん! こっちのほうが落ち着きます!」
ぐっと拳を握ってそう言うと、セレストは驚いたように目を丸くして、それからくすくす笑った。
「ではダーシー、次はわたくしの部屋を案内してくださる?」
「かしこまりました」
「じゃあ、また後でね、メイちゃん」
私は小さくなずいて手を振った。セレストも手を振ってくれた。
パタンと扉が閉まるのを見てから、自分の部屋になったところに視線を巡らせる。
「天井たかーい」
上を見上げて呟く。とりあえず、荷物の整理をしないといけない。……とはいえ、荷物少ないんだけどさ。それに、空間収納バッグのおかげで軽いし。お父さん、本当にありがとう……!
部屋に備え付けられていたのはクローゼット、机、椅子、それからベッドだ。私が暮らすには充分すぎるほど。錬金釜も小型だから、ここでいろいろ作るのも悪くないだろう。薬は自分で作ったほうが節約になるよね。……あ、一応錬金釜を磨いておこうかな。毒団子を作ったし……。そう考えて、私は錬金釜を取り出して、お掃除セットも取り出した。
お掃除セットは錬金釜用。白い布と中と外を綺麗にする魔法の粉。……という名の、ただの洗剤。これも錬金釜で作ったものなのよね。ただ、この洗剤は毒草にもよく効くから……というか、毒が残らないような調合をしているから、毒草を使った時はいつもこれで掃除している。
「お父さんがくれたんだもん、大切に使わないとね」
お父さんの顔を思い浮かべて、私は小さく笑みを浮かべた。……錬金術師ってアルケミストって言ったっけ。じゃあ……。
「今日からあなたは『アルケー』ね!」
名前を付けると愛着がわくかもしれないし、……いや実はもう愛着はわいているんだけど。だってお父さんがくれた錬金釜だもの!
私がにこにこと錬金釜を愛でながら洗うと、ピカピカになった。白い布で綺麗に拭くと空間収納バッグに戻した。汚れた布は後で洗濯――あれそういえば、洗濯とかお風呂とかってどうすればいいのだろう。
そんなことを考えていると、扉がノックされる音が聞こえた。
「はーい?」
「メイ? 俺だけど……」
「ルイ? ちょっと待って」
パタパタと扉に駆け寄る。扉を開けると、ルイが立っていた。
「お腹空いてない? ジェフリーたちが夕食を用意してくれるって」
「え、ごちそうになって良いの?」
てっきり全員が別々に食べるのかなって思っていたけれど、ジェフリーたちの考えは違うらしい。
「……ありがたいけれど……」
「大丈夫、今日からみんなここで住むんだし……、いろいろとルールを決めたほうがいいと思って」
「なるほど、じゃあありがたくごちそうになるね!」
私がそう言うと、「セレストとナタンはもう来ているよ」と教えてくれた。
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