負けヒロインは自由を求める!

秋月一花

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2章:14歳

24話

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 それからしばらくして、ウォルターさんがひょっこり顔を出した。どうやら解体が終わったらしい。私たちは作業場へと向かい解体されたジャイアント・クロウを見た。……羽毛が剥がれている……。

「んで、これらはどうするんだ? 俺が買うか? それとも自分で持っているか?」
「え、買う?」
「俺が買った場合は、素材屋に売ることになる。嬢ちゃんが欲しい素材があるなら渡すぜ」
「……欲しい素材……」

 錬金釜に入れたら装備品が出来るかもしれないけれど……、特に装備に困っているわけではないからなぁ……。

「えっと、じゃあ買ってください」
「おうよ。じゃあ解体分を差し引いた金額な」

 ウォルターはひょいひょいとお金を渡してくれた。……ええと、相場がわからないのだけど、これで良いのかな?

「ウォルター、せめて説明を……」
「ギルドよりも高く買い取ってんぞー?」
「ギルド? ギルドでも買い取っているのですか?」
「ああ。基準があるらしいけどな、俺は俺の目を信じるさ」

 ……どういう意味だろう。とりあえず、いただいたお金はきちんとしまった。

「それとこれ。討伐完了の印になるから、きちんと提出しろよ」

 きらりと輝くひし形の石をふたつ渡してくれた。

「これは……?」
「魔物の心臓みたいなもんだ。討伐依頼だとこれを受付嬢に渡せばいい」
「なるほど。ありがとうございます」

 魔物の心臓みたいなもの……。この石が。不思議な感覚に襲われた。……そりゃあ、そうだ。ここ小説の世界だもんね。

「それじゃあ、早速依頼達成の報告に行こうか」
「はい!」

 私たちはウォルターさんに頭を下げてから、冒険者ギルドに向かった。冒険者ギルドの中は大分空いていたけれど、好奇の視線がチクチク刺さる。そして、「依頼失敗したんじゃね?」とか、「あの短時間じゃなぁ……」なんて声が聞こえてきた。
 じろり、とルイがひと睨みするとすぐに止んだけど。スタスタと歩いていって、受付嬢の元へ。
 依頼を受けた時と同じ人がいたから、その人に声を掛ける。

「すみません、ジャイアント・クロウの依頼、達成しました」
「えっ、もうですか?」

 驚かれた。私はこくりとうなずいてすっとひし形の石を差し出す。受付嬢はそれを受け取って、じっと見つめ……それから小さな水晶玉に翳した。……あれ、一体何なんだろう。受付嬢は「確かに」と呟いて、私へと微笑みを向けた受付嬢。次の言葉を待っていると、

「お疲れ様でした、依頼達成です」

 と、依頼達成の報酬をくれた。……こういう流れなのか……。

「メイちゃん、初依頼達成おめでとう!」
「あ、ありがとうございます!」

 セレストがにこにこと笑いながら私の手をぎゅっと握った。ナタンがセレストを見てから私に視線を向けて、「……」と無言で微笑んだ。ルイも「おめでとう」と言ってくれた。そして、他の冒険者たちが賑わう前に、私たちは冒険者ギルドを後にした。

「そういえば、メイちゃんは宿屋を決めたの?」
「宿屋……あ、そういえばまだ決めていませんでした!」

 拠点となるところを探すのをすっかり忘れていた。なんというか、怒涛の一日だったから。すると、ルイがすっと手を上げる。

「どうしたの?」
「俺の家に来る? セレストたちも」
「……ルイの家? ルイ、王都に家を持っているの?」
「うん、もらった」

 ……誰に、って聞いても良いのかな……と思いつつ、とりあえずルイの持ち家を見に行くことになった。
 ルイの家は王都の外れのほうにあるらしくて、静からしい。うん、静かなのは良いよね。賑やかなのも良いけれど……。私はなんとなく、一軒家かなぁと考えていたのよ。……その予想は大きく覆されたけどね!
 なんだこの広い家! びっくりした。……びっくりしていたら、セレストもナタンも驚いているように見えた。

「……あなた、ここに住んでいましたの?」
「いや、あんまり使ってない。今まで結構いろんなところに飛び回っていたから」
「……レッドドラゴンを倒したから、この屋敷を?」
「うん、まぁ……そうなるのかな。とりあえず、この広さなら全員住めるだろう?」
「確かに住めるけど……、なんというか、掃除のしがいがある広さだね……」

 まぁ、私には錬金釜がついているから、掃除道具を作るのだって得意だ。そして、前世であまり出来なかった家事を、メイベルとして生まれて変わってからは堪能している。だって家事も身体が丈夫じゃないと出来ないことでしょ?

「……あ、それは大丈夫だと思う……」
「え?」

 ――その疑問はすぐに解消した。ルイが呼び鈴を鳴らすと、すぐにメイド服の女性と執事服の男性が現れたのだ。

「お待ちしておりました、ご主人さま」
「お帰りなさいませ」
「……ねえ、やっぱりその呼び方やめない……?」
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