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2章:14歳
23話
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王都へ戻り、ルイの案内で解体屋に向かう。古めかしい……いや、趣のある民家? で立ち止まった。
玄関の前に立ち、「おーい、居るか?」と声を掛けるルイ。すると、「ァん?」と大きな人が出てきた。す、スキンヘッドのとても体格の良いおじさんだ。絶対筋肉もりもりでお腹にシックスパックがある人だ……! と考えていると、その人はルイを見て目を大きく見開いた。
「――ルイ!?」
心底驚いたようにルイの名を呼んだ男性は、私たちのことに気付いてルイの頭をくしゃりと撫でた。
「――とりあえず、中に入れ」
そううながされて、私たちは彼の家にお邪魔することになった。外の見かけとは全然違う内装だった。とても綺麗。
「珍しいじゃねぇか、ルイがここに寄るなんて」
「今日パーティを組んだんだ、その報告とお願いがあって来た」
「ほう、お前がパーティを……」
どこか嬉しそうに目元を細める男性。昔からの知り合いなのかな? そう考えながら歩いていると、恐らく作業場に出た。
「悪いな、今日はまだ作業が終わってないんだ」
そう言って大きな包丁を取り出し、魔物を勢いよく分解していく……なるほど、解体屋ってこういうことか!
「終わったら、ジャイアント・クロウの解体をお願いしたい」
「ァア? お前自分で解体できるんじゃねぇの」
「俺が殺した獲物じゃないから。これから多分、メイが世話になると思う」
「メイ?」
名前を呼ばれた私は思わず「はいっ」と元気よく、そして右手を上げて返事をした。まるで、教師に指名された生徒のように。みんなにキョトンとされてしまった。恥ずかしくて顔が赤くなるのがわかった。
「ほう、元気な嬢ちゃんだな。……ルイは良くしてくれてるかい?」
「は、はい。知り合ったばかりですけれど、助けてもらっています」
「……知り合ったばかり?」
「うん。今日……いや昨日? どっちだ? まぁ、そのくらいの付き合い」
あんぐりと口を大きく広げた男性に、ルイが首を傾げる。セレストとナタンもびっくりしていたように見えた。
「そんなに短い時間の付き合いで、メイちゃんが中級の魔物を倒せるって確信していましたの?」
首を縦に振るルイに、私も含めて目を瞬かせた。……私がルイの前で戦ったのはこれで二回目。一回目は精霊の力を借りて戦ったから、純粋な強さの基準にはなっていない、気がする……。それなのに、どうしてこんなに私の弓の腕を信用しているのだろうか……。
「ほーぅ。メイと言ったか、ルイがそういうってことは、かなりの腕なんだなぁ。良し、ちょっと待てろ、すぐに準備するからな」
男性はそう言って魔物の解体を始めた。そして、本当にてきぱきと……見ていて清々しくなるくらいの素早さで魔物の解体を終わらせた。
「よっし、じゃあ次は嬢ちゃんの番だ」
「えっ、あ、はい」
私は鞄の中からジャイアント・クロウを取り出した。作業台の上へと二羽置くと、男性は「ほぅ、これはこれは……」と楽しそうに口角を上げる。
「冒険者ギルドの受付が終わるまでに出来そう?」
「任せとけ。ルイ、嬢ちゃんたちに茶ァでも出しとけよ」
「勝手に休ませてもらうよ」
「おう」
……やっぱり旧知の仲って感じがする。ルイはこの家のこともよく知っているようで、「こっち」と私たちを案内してくれた。
「座ってて、お茶、用意するから」
リビングに案内されたようで、私たちを座らせると、まるで自分の家のようにお茶の用意をし始めた。
「……ルイは、ここの人とは知り合いなの?」
気になって尋ねてみると、小さくうなずくのが見えた。
「――彼も冒険者だったんだ。俺を拾ってくれた人。今は冒険者を引退して、解体屋をしている」
――ルイを拾ってくれた? 首を傾げると、ルイが手際よくお茶を淹れて戻って来た。私たちにカップを渡すと、自分も座って肩をすくめる。
「森の中で捨てられていたのを、彼――ウォルターが拾ってくれたんだ。何歳だっけ……っていうか自分の年齢もあんまり正確性ないけどさ……」
……森の中で捨てられていた? それって……目が紅いから? そんな理由で?
「ウォルターに連れられて、冒険者になって、彼とパーティを組んでいたんだけど……。ウォルターが引退することになってソロになってからは……三年くらい?」
「そうだな、その頃からひとりでクエストを受けていたと思う」
ナタンが思い出したようにそう言った。セレストが「そんな理由がありましたの……」と頬に手を添えて呟いた。……でもやっぱり、目が紅いからって森の中に捨てられるなんて、想像するだけでゾッとする。思わずぎゅっとカップを握りしめた。
「ウォルターは俺の恩人なんだ。だから、彼の仕事をフォローするためにもここの解体屋を使ってくれると助かる」
――口実だ、と思った。だって彼はきっと他の冒険者からも仕事を請け負っている。……それでも、きっとひとりでここに来るのは気恥ずかしいのだろう。『私』を通して、また彼と話したいのかなと思った。
「ええ、お任せします」
――だから、私はにっこりと笑ってそう言った。ルイにはこれからお世話になる予定だし、きっとウォルターさんもルイと話したいだろうと思ったから。こうやって人の輪は広がっていくのかもしれないなぁ……。
玄関の前に立ち、「おーい、居るか?」と声を掛けるルイ。すると、「ァん?」と大きな人が出てきた。す、スキンヘッドのとても体格の良いおじさんだ。絶対筋肉もりもりでお腹にシックスパックがある人だ……! と考えていると、その人はルイを見て目を大きく見開いた。
「――ルイ!?」
心底驚いたようにルイの名を呼んだ男性は、私たちのことに気付いてルイの頭をくしゃりと撫でた。
「――とりあえず、中に入れ」
そううながされて、私たちは彼の家にお邪魔することになった。外の見かけとは全然違う内装だった。とても綺麗。
「珍しいじゃねぇか、ルイがここに寄るなんて」
「今日パーティを組んだんだ、その報告とお願いがあって来た」
「ほう、お前がパーティを……」
どこか嬉しそうに目元を細める男性。昔からの知り合いなのかな? そう考えながら歩いていると、恐らく作業場に出た。
「悪いな、今日はまだ作業が終わってないんだ」
そう言って大きな包丁を取り出し、魔物を勢いよく分解していく……なるほど、解体屋ってこういうことか!
「終わったら、ジャイアント・クロウの解体をお願いしたい」
「ァア? お前自分で解体できるんじゃねぇの」
「俺が殺した獲物じゃないから。これから多分、メイが世話になると思う」
「メイ?」
名前を呼ばれた私は思わず「はいっ」と元気よく、そして右手を上げて返事をした。まるで、教師に指名された生徒のように。みんなにキョトンとされてしまった。恥ずかしくて顔が赤くなるのがわかった。
「ほう、元気な嬢ちゃんだな。……ルイは良くしてくれてるかい?」
「は、はい。知り合ったばかりですけれど、助けてもらっています」
「……知り合ったばかり?」
「うん。今日……いや昨日? どっちだ? まぁ、そのくらいの付き合い」
あんぐりと口を大きく広げた男性に、ルイが首を傾げる。セレストとナタンもびっくりしていたように見えた。
「そんなに短い時間の付き合いで、メイちゃんが中級の魔物を倒せるって確信していましたの?」
首を縦に振るルイに、私も含めて目を瞬かせた。……私がルイの前で戦ったのはこれで二回目。一回目は精霊の力を借りて戦ったから、純粋な強さの基準にはなっていない、気がする……。それなのに、どうしてこんなに私の弓の腕を信用しているのだろうか……。
「ほーぅ。メイと言ったか、ルイがそういうってことは、かなりの腕なんだなぁ。良し、ちょっと待てろ、すぐに準備するからな」
男性はそう言って魔物の解体を始めた。そして、本当にてきぱきと……見ていて清々しくなるくらいの素早さで魔物の解体を終わらせた。
「よっし、じゃあ次は嬢ちゃんの番だ」
「えっ、あ、はい」
私は鞄の中からジャイアント・クロウを取り出した。作業台の上へと二羽置くと、男性は「ほぅ、これはこれは……」と楽しそうに口角を上げる。
「冒険者ギルドの受付が終わるまでに出来そう?」
「任せとけ。ルイ、嬢ちゃんたちに茶ァでも出しとけよ」
「勝手に休ませてもらうよ」
「おう」
……やっぱり旧知の仲って感じがする。ルイはこの家のこともよく知っているようで、「こっち」と私たちを案内してくれた。
「座ってて、お茶、用意するから」
リビングに案内されたようで、私たちを座らせると、まるで自分の家のようにお茶の用意をし始めた。
「……ルイは、ここの人とは知り合いなの?」
気になって尋ねてみると、小さくうなずくのが見えた。
「――彼も冒険者だったんだ。俺を拾ってくれた人。今は冒険者を引退して、解体屋をしている」
――ルイを拾ってくれた? 首を傾げると、ルイが手際よくお茶を淹れて戻って来た。私たちにカップを渡すと、自分も座って肩をすくめる。
「森の中で捨てられていたのを、彼――ウォルターが拾ってくれたんだ。何歳だっけ……っていうか自分の年齢もあんまり正確性ないけどさ……」
……森の中で捨てられていた? それって……目が紅いから? そんな理由で?
「ウォルターに連れられて、冒険者になって、彼とパーティを組んでいたんだけど……。ウォルターが引退することになってソロになってからは……三年くらい?」
「そうだな、その頃からひとりでクエストを受けていたと思う」
ナタンが思い出したようにそう言った。セレストが「そんな理由がありましたの……」と頬に手を添えて呟いた。……でもやっぱり、目が紅いからって森の中に捨てられるなんて、想像するだけでゾッとする。思わずぎゅっとカップを握りしめた。
「ウォルターは俺の恩人なんだ。だから、彼の仕事をフォローするためにもここの解体屋を使ってくれると助かる」
――口実だ、と思った。だって彼はきっと他の冒険者からも仕事を請け負っている。……それでも、きっとひとりでここに来るのは気恥ずかしいのだろう。『私』を通して、また彼と話したいのかなと思った。
「ええ、お任せします」
――だから、私はにっこりと笑ってそう言った。ルイにはこれからお世話になる予定だし、きっとウォルターさんもルイと話したいだろうと思ったから。こうやって人の輪は広がっていくのかもしれないなぁ……。
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