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2章:14歳
19話
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「わかった、忠告ありがとう」
「……どういたしまして」
そうよね……この世界の人たちが全員鑑定を使えていたら、詐欺なんて出来ないわよね……。あ、でも違う詐欺なら出来るのかしら、買わせるのではなくお金をだまし取る感じの……。うーん、引っ掛かりたくないなぁ。
馬車の乗客だった人たちの元に戻りながら、王都で注意することをたくさん教えてくれた。人数が多いし、冒険者になったからと言ってすぐに暮らしが楽になるわけでもないこと。
「――ルイはどうして冒険者になったのか、聞いても良いですか?」
「……その前についた。これから王都に向かうが、体力はまだ大丈夫か?」
「大丈夫です!」
なんせ五歳から体力作りをしていたのだ。十四歳になった今、このくらいの距離の移動なら疲れた気がしないわ!
……そして、どうやら神さまが与えてくれた精霊使いの職業は、私の魔力を削るわけではないみたいだし……。精霊と魔法はまた別の扱いのようね。……それを説明しろって言われたら無理だけど……!
「みんな、お待たせしました!」
「無事だったか、嬢ちゃん!」
「兄ちゃんも無事のようだな!」
「……良かった……」
みんなのところに戻ると、心配してくれたのだろう、一斉にこっちに来て安堵の表情と歓喜の声を上げてくれた。
「ルイのおかげで無事でした。すごかったですよ、魔物の頭を一刀両断!」
私が興奮気味に話すと、ルイがなにか言いたそうな表情を浮かべたが、すぐにふいと顔を逸らした。私が言ったことを思い出してくれたのだろう。
『私がやったって言わないで欲しいの』
――言ってみるものだね。ルイは律儀に私の願いを聞いてくれたみたいだ。
「……そうか……、兄ちゃんすげぇな!」
明るい口調でそういう男性にホッとした。とりあえず、このままここに居ても仕方ないので、ルイの案内で王都まで向かうことになった。馬車で一日……だから、人間の足だとどのくらいかしら。休憩を挟みながら……そして、野営をしながらだと二日か三日は掛かるのかな?
みんなで歩きながらそんなことを考えていたら、なにかが近付いて来る音が聞こえた!
「おーい、そこの人たちー! 大丈夫かー?」
こっちに向かってきたのは馬車だった! どういうこと!? びっくりして目を丸くする私たちをしり目に、ルイが手を上げる。
「この人たちが乗っていた御者が逃げた。王都まで乗せて行ってくれないか?」
「ありゃま、まぁ、警戒レベル上がったことに気付かないで来ちまったんだろうな。わかった、俺が引き受けよう。ルイも乗っていくだろ?」
「もちろん。……あ、代金は後払いで良いか? 今、手持ちにない」
「……またかよ。情けを掛けても良いけどさ、自分の取り分はちゃんと取っておけよな」
どうやらルイと知り合いのようだ。――ともかく、私たちは徒歩ではなく、当初の予定通り馬車で王都まで無事に辿り着いたのだった。……それにしても、この御者はルイが呼んでいたのかしら?
そんなことを思いつつも、門番にお金を払って王都に入る。街に入るのもひと苦労ね。とはいえ、冒険者はフリーらしいから、それが目的で冒険者になる人もいるらしい。パント村に来ていた旅人から聞いたことがある。
「……メイベル、冒険者ギルドまで一緒に行くか?」
「え? いいの?」
「ああ、どうせ俺も依頼達成の報告をしないといけないからな」
「そっか、じゃあ一緒に行こうかな」
馬車から降りて冒険者ギルドはどこだろうと考えていたら、ルイに話し掛けられた。私はこれ幸いと一緒に行くことにした。だって、ひとりで歩いていたら迷子になってしまうと思ったから。
同じ馬車の乗客たちと別れると、ルイは「こっちだ」と案内してくれた。迷いなく歩いているから、きっと王都に住んでいる冒険者なのだろう。数十分歩いて、やっと冒険者ギルドについた。
ぎぃ、と扉を開いて中へ入るルイに続いて、私も中へと足を踏み入れた。すると、すぐに視線を感じた。値踏みされているような気になるのはなぜかしら……。
「受付こっち」
「あ、はい!」
ルイの案内で新規冒険者登録のカウンターへ。
「ようこそ、王都ルグミアンの冒険者ギルドへ」
可愛らしい制服を着た受付嬢が微笑んでくれた。私は小さく頭を下げて「初めまして」と挨拶をすると、「この子、冒険者志望だからいろいろ登録よろしく」と受付嬢に言って、自分は違う受付嬢の元へと向かった。多分、依頼達成の報告をするのだろう。
「冒険者志望ですね、こちらの紙にご記入をお願いします」
「はい。……あれ、本名と冒険者名ってわけられるんですか?」
「はい。もしも思いつかなければ本名のままでも大丈夫です」
……うーん、メイベル、メイベル……。安直だけど、メイでいいか。本名と冒険者名を記入して、他の項目も埋めていく。記入する場所はそんなに多くないから、スラスラと書いていく。
「終わりました」
「ありがとうございます。……では、こちらへどうぞ」
「は、はい」
受付嬢が別部屋に案内してくれた。……地下だ。なにをするところだろう?
「ここでは武器の適性を見せてもらいます。もしも得意な武器がない場合は、冒険者支援学校にて指導を受けられます」
――この世界そんなものもあるの!? 原作ではロベールの……勇者の話だったから、冒険者の事情については一切不明だったのよね……。
「……どういたしまして」
そうよね……この世界の人たちが全員鑑定を使えていたら、詐欺なんて出来ないわよね……。あ、でも違う詐欺なら出来るのかしら、買わせるのではなくお金をだまし取る感じの……。うーん、引っ掛かりたくないなぁ。
馬車の乗客だった人たちの元に戻りながら、王都で注意することをたくさん教えてくれた。人数が多いし、冒険者になったからと言ってすぐに暮らしが楽になるわけでもないこと。
「――ルイはどうして冒険者になったのか、聞いても良いですか?」
「……その前についた。これから王都に向かうが、体力はまだ大丈夫か?」
「大丈夫です!」
なんせ五歳から体力作りをしていたのだ。十四歳になった今、このくらいの距離の移動なら疲れた気がしないわ!
……そして、どうやら神さまが与えてくれた精霊使いの職業は、私の魔力を削るわけではないみたいだし……。精霊と魔法はまた別の扱いのようね。……それを説明しろって言われたら無理だけど……!
「みんな、お待たせしました!」
「無事だったか、嬢ちゃん!」
「兄ちゃんも無事のようだな!」
「……良かった……」
みんなのところに戻ると、心配してくれたのだろう、一斉にこっちに来て安堵の表情と歓喜の声を上げてくれた。
「ルイのおかげで無事でした。すごかったですよ、魔物の頭を一刀両断!」
私が興奮気味に話すと、ルイがなにか言いたそうな表情を浮かべたが、すぐにふいと顔を逸らした。私が言ったことを思い出してくれたのだろう。
『私がやったって言わないで欲しいの』
――言ってみるものだね。ルイは律儀に私の願いを聞いてくれたみたいだ。
「……そうか……、兄ちゃんすげぇな!」
明るい口調でそういう男性にホッとした。とりあえず、このままここに居ても仕方ないので、ルイの案内で王都まで向かうことになった。馬車で一日……だから、人間の足だとどのくらいかしら。休憩を挟みながら……そして、野営をしながらだと二日か三日は掛かるのかな?
みんなで歩きながらそんなことを考えていたら、なにかが近付いて来る音が聞こえた!
「おーい、そこの人たちー! 大丈夫かー?」
こっちに向かってきたのは馬車だった! どういうこと!? びっくりして目を丸くする私たちをしり目に、ルイが手を上げる。
「この人たちが乗っていた御者が逃げた。王都まで乗せて行ってくれないか?」
「ありゃま、まぁ、警戒レベル上がったことに気付かないで来ちまったんだろうな。わかった、俺が引き受けよう。ルイも乗っていくだろ?」
「もちろん。……あ、代金は後払いで良いか? 今、手持ちにない」
「……またかよ。情けを掛けても良いけどさ、自分の取り分はちゃんと取っておけよな」
どうやらルイと知り合いのようだ。――ともかく、私たちは徒歩ではなく、当初の予定通り馬車で王都まで無事に辿り着いたのだった。……それにしても、この御者はルイが呼んでいたのかしら?
そんなことを思いつつも、門番にお金を払って王都に入る。街に入るのもひと苦労ね。とはいえ、冒険者はフリーらしいから、それが目的で冒険者になる人もいるらしい。パント村に来ていた旅人から聞いたことがある。
「……メイベル、冒険者ギルドまで一緒に行くか?」
「え? いいの?」
「ああ、どうせ俺も依頼達成の報告をしないといけないからな」
「そっか、じゃあ一緒に行こうかな」
馬車から降りて冒険者ギルドはどこだろうと考えていたら、ルイに話し掛けられた。私はこれ幸いと一緒に行くことにした。だって、ひとりで歩いていたら迷子になってしまうと思ったから。
同じ馬車の乗客たちと別れると、ルイは「こっちだ」と案内してくれた。迷いなく歩いているから、きっと王都に住んでいる冒険者なのだろう。数十分歩いて、やっと冒険者ギルドについた。
ぎぃ、と扉を開いて中へ入るルイに続いて、私も中へと足を踏み入れた。すると、すぐに視線を感じた。値踏みされているような気になるのはなぜかしら……。
「受付こっち」
「あ、はい!」
ルイの案内で新規冒険者登録のカウンターへ。
「ようこそ、王都ルグミアンの冒険者ギルドへ」
可愛らしい制服を着た受付嬢が微笑んでくれた。私は小さく頭を下げて「初めまして」と挨拶をすると、「この子、冒険者志望だからいろいろ登録よろしく」と受付嬢に言って、自分は違う受付嬢の元へと向かった。多分、依頼達成の報告をするのだろう。
「冒険者志望ですね、こちらの紙にご記入をお願いします」
「はい。……あれ、本名と冒険者名ってわけられるんですか?」
「はい。もしも思いつかなければ本名のままでも大丈夫です」
……うーん、メイベル、メイベル……。安直だけど、メイでいいか。本名と冒険者名を記入して、他の項目も埋めていく。記入する場所はそんなに多くないから、スラスラと書いていく。
「終わりました」
「ありがとうございます。……では、こちらへどうぞ」
「は、はい」
受付嬢が別部屋に案内してくれた。……地下だ。なにをするところだろう?
「ここでは武器の適性を見せてもらいます。もしも得意な武器がない場合は、冒険者支援学校にて指導を受けられます」
――この世界そんなものもあるの!? 原作ではロベールの……勇者の話だったから、冒険者の事情については一切不明だったのよね……。
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