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2章:14歳
17話
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彼がそう言うのと同時に、盛大にぐぅぅぅうう、という音が聞こえた。……その音は彼のお腹から聞こえた。
みんな呆気に取られてしまい、目をパチパチと瞬かせた。……私がパンっと両手を叩く。
「腹が減っては戦ができぬ! っていうし、ご飯を食べましょう! そうよ、空腹はネガティブな考え方をしやすくなるって聞いたことがあります!」
ゴソゴソとお父さんからもらったバッグから食料を取り出す。多めにもらっていて良かった。空間収納バッグバンザイ! そう考えながら取り出していると、みんな驚いていた。
「……飯……」
ぽつり、と彼が手を伸ばす。パンを渡すと「ありがとう」と言ってぱくりと食べた。むしゃむしゃ一心不乱に食べているのを見ると、とてもお腹が空いていたみたいだ。他の人たちもおずおずと食べ始めて、しばらくしてから冒険者の彼が「……ふぅ」と息を吐いた。
「美味しかった、助かった、ありがとう」
「どういたしまして」
礼儀正しくぺこりと頭を下げる彼に、私は微笑みを浮かべる。
「みんなもお腹いっぱいになった?」
「あ、ああ……。悪かったな、嬢ちゃん」
「大人げないことをしてしまった……」
……まぁ、みんなどう見ても私より年上だもんね。お腹がいっぱいになったことで、多少心の余裕が出来たみたいね。……良かった、これならこれからのことを話し合える。
「……そういえば、ええと……あなたはどうして食料を持っていなかったの?」
「……それが、その。……子どもたちにあげた……」
「……はい?」
冒険者なら携帯食料を持っていてもおかしくないと思って尋ねると、彼は視線を逸らしてぽつりと呟いた。あげた? 子どもたちに?
「ここに来る途中、村が魔物に襲われた子どもが命からがら逃げているのを見つけて、食料と多少の金を渡して王都へと向かわせた」
……良い人ね……。それを聞いていた人は、自分たちが彼に掛けた言葉を思い出してバツが悪そうに視線を逸らしていた。それに気付いて、「気にしなくて良い」と言葉を掛ける。
「そういう扱いには慣れている」
「……ぁ……」
心底後悔したような声が聞こえた。女性だ。……目が紅いという理由だけで、そんなに理不尽な目に遭っても怒らないでいるなんて……、ううん、違うわね。怒らないんじゃない、諦めてしまったのだと感じた。
「……お前みたいなヤツのほうが稀だよ」
私はなにも言えなかった。……ゆっくりと深呼吸を繰り返して、それから私は自分の胸元をきゅっと掴んで彼にこう言った。
「私の名前はメイベル。あなたの名を聞いても良いかしら?」
「……ルイ」
「ルイさん?」
「呼び捨てで良い」
「じゃあ、ルイ。……あなたにお願い……ううん、依頼があるの」
真剣な表情になった私にルイと名乗った彼は、同じように真剣な表情になった。「依頼?」と首を傾げるルイに、私は小さくうなずく。
「私たちを王都まで護衛してくれませんか?」
「……いや、それは……」
「お願いします、私、王都に行って冒険者になりたいんです!」
「……すまない、別の依頼を遂行中だから……」
……あ、そうか……。なら……。
「私も手伝います!」
私がそう宣言すると、ルイは「はぁっ?」と大きな声を上げた。
「あなたの依頼を手伝うから、私たちを王都まで護衛して!」
「……いや、そんなこと言われても……。それに、戦えないだろう」
私はバッグから弓を取り出した。
「冒険者を目指しているのだもの、戦えるわ」
「……ついて来る気か?」
こくりとうなずく。ルイは眉間に皺を刻んで、それから「はぁ~」とため息を吐いた。それから、じっと私を見て、「守らないからな」と一言口にすると立ち上がる。
「わ、私たちはどうすれば……?」
「ええと……じゃあ、これを」
バッグから魔除けのアイテムを取り出して、女性に渡す。
「持っているだけで効果があるから、ここに隠れていて」
ぎゅっと女性の手を両手で包むように握ると、女性は小さくうなずいた。それを見て、にこりと微笑むと立ち上がる。
「行きましょう!」
「……本当、どうなっても知らないからな」
「望むところです!」
……大丈夫、いざという時は精霊たちの力を借りられる。ルイは近くにそびえ立つ木にナイフでバツ印を刻んだ。
それから私に視線を向けると、すぐに歩き出した。ついて来いってサインかしらね。私とルイは、ルイの依頼達成のために歩き出した。馬車に乗っていた人たちが、「気をつけろよ」や、「怪我しないようにね」と心配そうに声を掛けてくれたから、私は振り返って大きくうなずき、手を振った。
馬車で通った道を引き返すように森を歩いていく。
「そういえば、あなたの依頼を聞いていませんでした」
「……さっき俺が倒した魔物の、親玉を狙う」
「親玉?」
「そうだ。親を叩けば子は散る。子が大きくなるまでは、まだ危険性が減る」
「そっか、魔物にも親子がいるのね……。待って、じゃああの魔物って子どもだったの、親だったの?」
「あの大きさなら父親だろう。あれはBランクくらいの強さ。母親はあれよりも小さくて素早く、攻撃力も高いからAランク」
魔物のランクか……小説にも説明されていた気がする。……ん? Aランク? ってことは、ルイはそれを受けられるだけの力を持っているってことよね……。私が倒したことのある魔物は多分とても弱い部類に入るから……。
かなりの実力者ってことよね。……いや確かに強かったけど……。
みんな呆気に取られてしまい、目をパチパチと瞬かせた。……私がパンっと両手を叩く。
「腹が減っては戦ができぬ! っていうし、ご飯を食べましょう! そうよ、空腹はネガティブな考え方をしやすくなるって聞いたことがあります!」
ゴソゴソとお父さんからもらったバッグから食料を取り出す。多めにもらっていて良かった。空間収納バッグバンザイ! そう考えながら取り出していると、みんな驚いていた。
「……飯……」
ぽつり、と彼が手を伸ばす。パンを渡すと「ありがとう」と言ってぱくりと食べた。むしゃむしゃ一心不乱に食べているのを見ると、とてもお腹が空いていたみたいだ。他の人たちもおずおずと食べ始めて、しばらくしてから冒険者の彼が「……ふぅ」と息を吐いた。
「美味しかった、助かった、ありがとう」
「どういたしまして」
礼儀正しくぺこりと頭を下げる彼に、私は微笑みを浮かべる。
「みんなもお腹いっぱいになった?」
「あ、ああ……。悪かったな、嬢ちゃん」
「大人げないことをしてしまった……」
……まぁ、みんなどう見ても私より年上だもんね。お腹がいっぱいになったことで、多少心の余裕が出来たみたいね。……良かった、これならこれからのことを話し合える。
「……そういえば、ええと……あなたはどうして食料を持っていなかったの?」
「……それが、その。……子どもたちにあげた……」
「……はい?」
冒険者なら携帯食料を持っていてもおかしくないと思って尋ねると、彼は視線を逸らしてぽつりと呟いた。あげた? 子どもたちに?
「ここに来る途中、村が魔物に襲われた子どもが命からがら逃げているのを見つけて、食料と多少の金を渡して王都へと向かわせた」
……良い人ね……。それを聞いていた人は、自分たちが彼に掛けた言葉を思い出してバツが悪そうに視線を逸らしていた。それに気付いて、「気にしなくて良い」と言葉を掛ける。
「そういう扱いには慣れている」
「……ぁ……」
心底後悔したような声が聞こえた。女性だ。……目が紅いという理由だけで、そんなに理不尽な目に遭っても怒らないでいるなんて……、ううん、違うわね。怒らないんじゃない、諦めてしまったのだと感じた。
「……お前みたいなヤツのほうが稀だよ」
私はなにも言えなかった。……ゆっくりと深呼吸を繰り返して、それから私は自分の胸元をきゅっと掴んで彼にこう言った。
「私の名前はメイベル。あなたの名を聞いても良いかしら?」
「……ルイ」
「ルイさん?」
「呼び捨てで良い」
「じゃあ、ルイ。……あなたにお願い……ううん、依頼があるの」
真剣な表情になった私にルイと名乗った彼は、同じように真剣な表情になった。「依頼?」と首を傾げるルイに、私は小さくうなずく。
「私たちを王都まで護衛してくれませんか?」
「……いや、それは……」
「お願いします、私、王都に行って冒険者になりたいんです!」
「……すまない、別の依頼を遂行中だから……」
……あ、そうか……。なら……。
「私も手伝います!」
私がそう宣言すると、ルイは「はぁっ?」と大きな声を上げた。
「あなたの依頼を手伝うから、私たちを王都まで護衛して!」
「……いや、そんなこと言われても……。それに、戦えないだろう」
私はバッグから弓を取り出した。
「冒険者を目指しているのだもの、戦えるわ」
「……ついて来る気か?」
こくりとうなずく。ルイは眉間に皺を刻んで、それから「はぁ~」とため息を吐いた。それから、じっと私を見て、「守らないからな」と一言口にすると立ち上がる。
「わ、私たちはどうすれば……?」
「ええと……じゃあ、これを」
バッグから魔除けのアイテムを取り出して、女性に渡す。
「持っているだけで効果があるから、ここに隠れていて」
ぎゅっと女性の手を両手で包むように握ると、女性は小さくうなずいた。それを見て、にこりと微笑むと立ち上がる。
「行きましょう!」
「……本当、どうなっても知らないからな」
「望むところです!」
……大丈夫、いざという時は精霊たちの力を借りられる。ルイは近くにそびえ立つ木にナイフでバツ印を刻んだ。
それから私に視線を向けると、すぐに歩き出した。ついて来いってサインかしらね。私とルイは、ルイの依頼達成のために歩き出した。馬車に乗っていた人たちが、「気をつけろよ」や、「怪我しないようにね」と心配そうに声を掛けてくれたから、私は振り返って大きくうなずき、手を振った。
馬車で通った道を引き返すように森を歩いていく。
「そういえば、あなたの依頼を聞いていませんでした」
「……さっき俺が倒した魔物の、親玉を狙う」
「親玉?」
「そうだ。親を叩けば子は散る。子が大きくなるまでは、まだ危険性が減る」
「そっか、魔物にも親子がいるのね……。待って、じゃああの魔物って子どもだったの、親だったの?」
「あの大きさなら父親だろう。あれはBランクくらいの強さ。母親はあれよりも小さくて素早く、攻撃力も高いからAランク」
魔物のランクか……小説にも説明されていた気がする。……ん? Aランク? ってことは、ルイはそれを受けられるだけの力を持っているってことよね……。私が倒したことのある魔物は多分とても弱い部類に入るから……。
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