4 / 11
4話
しおりを挟む「ローラ様のドレスを持ってきますね」
「ええ、お願いするわね」
ハーマンとナタリーは部屋から出て行った。私はナタリーのベッドに座り、ゆっくりと息を吐く。ルシアとも話さないといけないわね……。これからは、常に誰かと一緒に過ごすことにしましょう。マハロのことだから多分、手を出しては来ないと思うけれど……。
……いえ、油断は禁物。気をつけないとね。ここの使用人たちはみんな良い人たちだったのに、その当主であるマハロがなぜあんな人だったのか……、理解に苦しむわ……。
あ、もしかしたらマハロがポーラの元に行くのが当たり前だったから、それをフォローするためにしていた行動が、いつの間にか『普通』になっていった……?
……考えられるわね。
思考を巡らせていると、扉がノックされた。
「ローラ様、ローラ様のドレスをお持ちしました」
「ありがとう――……あら、ルシアも来てくれたの」
メイド長のルシアも、私のドレスを運んでくれたようだ。私のことを心配してくれているのか、彼女は不安そうに私を見た。
「本当にご決断されたのですね。奥様の目に、迷いを感じられませんわ」
ルシアは私よりも年上の女性で、いつもピシッとしていて格好の良いメイド長だ。そんな彼女がナタリーと一緒にドレスを運んでくれるとは……。とりあえず、今日のドレスを選んで着替えないと。ナタリーとルシアに手伝ってもらい、着替えた。
その後すぐに、屋敷の使用人たちがナタリーの部屋に押しかけて来た。
「奥様、旦那様と別れるというのは本当ですか!」
「そんなっ、やっとこの家に女神が来たと言うのに……!」
「奥様が居なくなるのなら、私たちどうやって暮らしていけば……!」
そんなことを言われて驚いた。この屋敷の使用人たちとは、割と良い関係を築けていったとは思っていたけど、ここまでとは……。
慌てたようにハーマンが来て、「奥様の邪魔をするな!」と使用人たちを叱った。思わず、クスクスと笑ってしまった。
「奥様……」
「ご、ごめんなさい……ふふっ。……ありがとう、みんな。私を支えてくれて。この三年間、あなたたちが居なければ、私はこの生活に耐えられなかったと思うわ。本当に、ありがとう……」
笑い声をどうにか抑えて、それから私のことを見つめる使用人たち全員に顔を向けて、私はゆっくりとカーテシーをした。
顔を上げてみんなを見ると、みんななぜかしんと静まり返っていて――それから、一人がこう口にした。
「奥様がこの屋敷から出ていくのであれば、私、ここ辞めます!」
「え?」
「俺も!」
「わたしも!」
全員が辞めると言い出して、私はちょっと混乱した。ナタリーが小さく微笑み、「奥様は慕われていますね」と柔らかい口調で言った。
1,030
お気に入りに追加
4,106
あなたにおすすめの小説



白い結婚はそちらが言い出したことですわ
来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかバーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!



今夜で忘れる。
豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」
そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。
黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。
今はお互いに別の方と婚約しています。
「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」
なろう様でも公開中です。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる