114 / 116
番外編
海辺の街で。 4話
しおりを挟む
砂浜で遊んでことで汚れてしまったので、先にホテルでシャワーを浴びて着替えてからレグルスさまと一緒に彼の目的地へ向かう。
ホテルのすぐ近くだから、と歩いていくことにした。
「賑やかですわね」
「結構大きな街だからね。あ、ここだよ」
本当に近かった。歩いて十分も経っていない。ショーウィンドウには宝石が並べられている。どの宝石もきらきらときらめいているわ。
「……宝石店?」
「うん。見てほしいものがあるんだ」
宝石店の中に入ると、「いらっしゃいませ、レグルスさま。お待ちしておりました」と店員……いえ、店長らしき中年の女性がレグルスさまに声をかけた。
「久しぶり、ミセス。例のもの、用意してくれた?」
「はい、しっかりと。うふふ、レグルスさまが例の品を、なんて……お嬢さま、愛されていますわねぇ」
微笑ましそうに微笑む女性に、レグルスさまがこほんとわざとらしく咳をした。口元を手で覆い、くすくすと笑ってから奥の部屋に案内され、ソファに座る。
「こちらですわ。ホワイトコーラルのブレスレットです」
早速とばかりに差し出されたのは、まろやかな白さのブレスレット。ホワイトコーラル、ということは珊瑚、なのよね……?
わたくしが見てきた珊瑚は赤色が主だったので、じっと見つめてしまった。
「綺麗でしょう? このホワイトコーラルは、レグルスさまが見つけたのですよ」
「レグルスさまが?」
「運が良かっただけだよ。これ、他の石とも組み合わせられる?」
「もちろんですわ。ローズクォーツ、ロードナイト、ヒスイなどがお勧めです」
ホワイトコーラルだけでも綺麗なのに、他の石と組み合わせたらどんなふうになるのだろう? あまり想像がつかなくて首をかしげていると、店長がすっとなにかを取り出す。
「こちらをご覧ください。ホワイトコーラルと組み合わせた場合の相性でございます」
「相性、ですか?」
「ええ。石同士にも相性がありますから。……そうですね、お嬢さまなら、こちらのヒスイがお勧めですわ」
ヒスイとの相性を見て、顔に熱が集まった。『家庭に幸せな繁栄』と書かれていたからだ。だって、この場合の『家庭』って、レグルスさまとわたくしということよね……?
「あら、初々しい反応をありがとうございます。では、ヒスイと組み合わせてブレスレットを用意しますね」
「ああ、頼んだ。すぐできるかい?」
「今日中には。そうですね……夕方までには間に合わせます」
「そう。それじゃ、その頃取りに来るよ。さて、デートの続きをしようか、カミラ嬢」
デート、という言葉にレグルスさまを見上げる。……わたくしと、レグルスさまだけだものね、そうよね、これは……デートなのよね……!
レグルスさまがわたくしに手を差し出し、その手を取って立ち上がる。顔はずっと赤いままだと思う。それを微笑ましそうに見られて、なんだか恥ずかしかった。
ホテルのすぐ近くだから、と歩いていくことにした。
「賑やかですわね」
「結構大きな街だからね。あ、ここだよ」
本当に近かった。歩いて十分も経っていない。ショーウィンドウには宝石が並べられている。どの宝石もきらきらときらめいているわ。
「……宝石店?」
「うん。見てほしいものがあるんだ」
宝石店の中に入ると、「いらっしゃいませ、レグルスさま。お待ちしておりました」と店員……いえ、店長らしき中年の女性がレグルスさまに声をかけた。
「久しぶり、ミセス。例のもの、用意してくれた?」
「はい、しっかりと。うふふ、レグルスさまが例の品を、なんて……お嬢さま、愛されていますわねぇ」
微笑ましそうに微笑む女性に、レグルスさまがこほんとわざとらしく咳をした。口元を手で覆い、くすくすと笑ってから奥の部屋に案内され、ソファに座る。
「こちらですわ。ホワイトコーラルのブレスレットです」
早速とばかりに差し出されたのは、まろやかな白さのブレスレット。ホワイトコーラル、ということは珊瑚、なのよね……?
わたくしが見てきた珊瑚は赤色が主だったので、じっと見つめてしまった。
「綺麗でしょう? このホワイトコーラルは、レグルスさまが見つけたのですよ」
「レグルスさまが?」
「運が良かっただけだよ。これ、他の石とも組み合わせられる?」
「もちろんですわ。ローズクォーツ、ロードナイト、ヒスイなどがお勧めです」
ホワイトコーラルだけでも綺麗なのに、他の石と組み合わせたらどんなふうになるのだろう? あまり想像がつかなくて首をかしげていると、店長がすっとなにかを取り出す。
「こちらをご覧ください。ホワイトコーラルと組み合わせた場合の相性でございます」
「相性、ですか?」
「ええ。石同士にも相性がありますから。……そうですね、お嬢さまなら、こちらのヒスイがお勧めですわ」
ヒスイとの相性を見て、顔に熱が集まった。『家庭に幸せな繁栄』と書かれていたからだ。だって、この場合の『家庭』って、レグルスさまとわたくしということよね……?
「あら、初々しい反応をありがとうございます。では、ヒスイと組み合わせてブレスレットを用意しますね」
「ああ、頼んだ。すぐできるかい?」
「今日中には。そうですね……夕方までには間に合わせます」
「そう。それじゃ、その頃取りに来るよ。さて、デートの続きをしようか、カミラ嬢」
デート、という言葉にレグルスさまを見上げる。……わたくしと、レグルスさまだけだものね、そうよね、これは……デートなのよね……!
レグルスさまがわたくしに手を差し出し、その手を取って立ち上がる。顔はずっと赤いままだと思う。それを微笑ましそうに見られて、なんだか恥ずかしかった。
52
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説

「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です
m
恋愛
男爵家の双子の姉妹のフィオーリとクリスティナは、髪色以外はよく似ている。
姉のフィオーリ宛にとある伯爵家から結婚の申し込みが。
結婚式の1ヶ月前に伯爵家へと住まいを移すように提案されると、フィオーリはクリスティナへ式までの代役を依頼する。
「クリスティナ、大丈夫。絶対にバレないから!
結婚式に入れ替われば問題ないから。お願い」
いえいえいえ、問題しかないと思いますよ。
ゆるい設定世界観です

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ
との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。
「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。
政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。
ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。
地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。
全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。
祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済。
R15は念の為・・
母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語
母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・?
※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています

人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜
清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。
クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。
(過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…)
そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。
移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。
また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。
「俺は君を愛する資格を得たい」
(皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?)
これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。

【完結】フェリシアの誤算
伽羅
恋愛
前世の記憶を持つフェリシアはルームメイトのジェシカと細々と暮らしていた。流行り病でジェシカを亡くしたフェリシアは、彼女を探しに来た人物に彼女と間違えられたのをいい事にジェシカになりすましてついて行くが、なんと彼女は公爵家の孫だった。
正体を明かして迷惑料としてお金をせびろうと考えていたフェリシアだったが、それを言い出す事も出来ないままズルズルと公爵家で暮らしていく事になり…。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

政略結婚の指南書
編端みどり
恋愛
【完結しました。ありがとうございました】
貴族なのだから、政略結婚は当たり前。両親のように愛がなくても仕方ないと諦めて結婚式に臨んだマリア。母が持たせてくれたのは、政略結婚の指南書。夫に愛されなかった母は、指南書を頼りに自分の役目を果たし、マリア達を立派に育ててくれた。
母の背中を見て育ったマリアは、愛されなくても自分の役目を果たそうと覚悟を決めて嫁いだ。お相手は、女嫌いで有名な辺境伯。
愛されなくても良いと思っていたのに、マリアは結婚式で初めて会った夫に一目惚れしてしまう。
屈強な見た目で女性に怖がられる辺境伯も、小動物のようなマリアに一目惚れ。
惹かれ合うふたりを引き裂くように、結婚式直後に辺境伯は出陣する事になってしまう。
戻ってきた辺境伯は、上手く妻と距離を縮められない。みかねた使用人達の手配で、ふたりは視察という名のデートに赴く事に。そこで、事件に巻き込まれてしまい……
※R15は保険です
※別サイトにも掲載しています

【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる