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どうか、お願い。 1話
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パーティー会場内の人たちは戸惑っていた。おろおろとしている人たちが多く、わたくしたちのようにバリアを張る人たちは少ない。
「魔術師学科! 実戦と思いバリアを張れ!」
先生が必死の形相で叫ぶ。パーティー会場は広い。その広い場所にかなりの人数がいるので、個々にバリアを張っていては追いつけないほど。
試験終わりを祝うためのパーティーなんだけどね。長期休暇前のパーティーだから、たくさんの人が参加しているのよね。
「騎士学科! 優先度を間違えるなよ!」
「傭兵学科! 守れる人を守れ!」
「召使学科! それぞれのサポートをしろ!」
各学科の先生たちが、学生たちに指示を出す。――緊急事態だというのに、思わず笑みがこぼれた。わたくしたち、緊急事態だと力を合わせることができるのね、と。
そのあいだにも、エセル王妃の騎士たちがグラエル陛下を捕らえようとして、吹き飛ばされていた。
グラエル陛下の実力を、わたくしは知らない。ただ、こうして騎士の方々が吹き飛ばされているのを見ると、かなりの実力者のようだ。バリアを張りながらわたくしは前進する。
「カミラ!?」
「マティス殿下、学生たちの指揮は任せました。わたくしは、レグルスさまのもとへ参ります」
「なにを危険なことを!」
「あら、心配してくださいますの? ……冗談ですわ。そんな顔をなさらないで。わたくしは……レグルスさまとともに生きることを、選びました。止めないでくださいませ。マーセル、ブレンさま、お願いしますね」
「……カミラさま、お気をつけて」
「これ、どうぞ」
ブレンさまがそっとなにかを取り出した。以前見せてくれたお札のようだ。
わたくしが顔を上げて彼を見ると、ブレンさまはにっこりと笑ってうなずいた。差し出されたお札をしっかりとうなずいて、「ありがとうございます」と頭を下げてからレグルスさまのもとに向かう。
パーティー会場内は混乱の最中だ。この場から逃げるように押し寄せる人たちを潜り抜け、グラエル陛下に近付いていく。
グラエル陛下は魔法も使っているみたいで、騎士たちが一丸となって陛下を捕らえようとしているけれど、すべて跳ねのけてしまうみたい。
屈強な肉体を持つ騎士たちが、次々と吹き飛ばされている。そんな中、彼らよりも一回り細いレグルスさまが陛下の魔法を耐えてしっかりとした足取りで近付いている。彼の背中しか見えないけれど、彼の魔力が揺らめているように視えて、思わず目を擦った。
――魔力がこんなふうに視えるのは、初めてだわ。
レグルスさまの魔力は、オレンジ色でとても優しい感じがした。
「悪いが、カミラ嬢は俺がリンブルグに連れていく」
「させぬ!」
キィィン、と剣と剣がぶつかり合う金属音が耳に届く。
「――残念ながら、あなたに止める権利はないっ!」
「魔術師学科! 実戦と思いバリアを張れ!」
先生が必死の形相で叫ぶ。パーティー会場は広い。その広い場所にかなりの人数がいるので、個々にバリアを張っていては追いつけないほど。
試験終わりを祝うためのパーティーなんだけどね。長期休暇前のパーティーだから、たくさんの人が参加しているのよね。
「騎士学科! 優先度を間違えるなよ!」
「傭兵学科! 守れる人を守れ!」
「召使学科! それぞれのサポートをしろ!」
各学科の先生たちが、学生たちに指示を出す。――緊急事態だというのに、思わず笑みがこぼれた。わたくしたち、緊急事態だと力を合わせることができるのね、と。
そのあいだにも、エセル王妃の騎士たちがグラエル陛下を捕らえようとして、吹き飛ばされていた。
グラエル陛下の実力を、わたくしは知らない。ただ、こうして騎士の方々が吹き飛ばされているのを見ると、かなりの実力者のようだ。バリアを張りながらわたくしは前進する。
「カミラ!?」
「マティス殿下、学生たちの指揮は任せました。わたくしは、レグルスさまのもとへ参ります」
「なにを危険なことを!」
「あら、心配してくださいますの? ……冗談ですわ。そんな顔をなさらないで。わたくしは……レグルスさまとともに生きることを、選びました。止めないでくださいませ。マーセル、ブレンさま、お願いしますね」
「……カミラさま、お気をつけて」
「これ、どうぞ」
ブレンさまがそっとなにかを取り出した。以前見せてくれたお札のようだ。
わたくしが顔を上げて彼を見ると、ブレンさまはにっこりと笑ってうなずいた。差し出されたお札をしっかりとうなずいて、「ありがとうございます」と頭を下げてからレグルスさまのもとに向かう。
パーティー会場内は混乱の最中だ。この場から逃げるように押し寄せる人たちを潜り抜け、グラエル陛下に近付いていく。
グラエル陛下は魔法も使っているみたいで、騎士たちが一丸となって陛下を捕らえようとしているけれど、すべて跳ねのけてしまうみたい。
屈強な肉体を持つ騎士たちが、次々と吹き飛ばされている。そんな中、彼らよりも一回り細いレグルスさまが陛下の魔法を耐えてしっかりとした足取りで近付いている。彼の背中しか見えないけれど、彼の魔力が揺らめているように視えて、思わず目を擦った。
――魔力がこんなふうに視えるのは、初めてだわ。
レグルスさまの魔力は、オレンジ色でとても優しい感じがした。
「悪いが、カミラ嬢は俺がリンブルグに連れていく」
「させぬ!」
キィィン、と剣と剣がぶつかり合う金属音が耳に届く。
「――残念ながら、あなたに止める権利はないっ!」
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