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マーセルとの関係。 1話

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「……今度、学園のパーティーでレグルスさまとマティス殿下が、一騎打ちをします」

 ぴくり、とカースティン男爵の眉が動いた。そして、不安そうにレグルスさまを見上げる。

「マティス殿下はお強いでしょう」
「ええ、まぁ。でも、俺も強いので」
「とりあえず僕はレグルスさまに賭けますねー」
「賭けるなよ……」

 両肩を上げてから、ブレンさまに視線を移すレグルスさま。

「カミラさま。今度のパーティーまでに、私を鍛えてください!」
「ええ、わたくしもそうしようと思っていたわ。それと……マーセル、寮の貴女あなたの部屋に、泊めてくださらない? ベネット家から家出してきましたの」

 わたくしの言葉に、カースティン男爵とマーセルはぽかんと口を開けた。

 あら、こうして見ると血の繋がりがなくても、似たところがあるのね。親子して同じ表情を浮かべているから、なんだか新鮮な気持ちになった。ベネット家の人たちと、同じ表情をしたことがあったかしら?

「い、家出っ?」
「ええ。だってあのままあの家にいたら、きっとあの部屋に閉じ込められるもの。そうすれば、貴女に教えることができなくなるでしょう? マティス殿下の隣に立つと決めたのなら、ビシバシ指導しますわよ」
「お、お願いします!」

 マーセルも、あの部屋がどんな部屋なのか知っている。

 そして、それがどんなに暗い気持ちにさせるのかも。

「パーティーには家族も呼べますもの。レグルスさまとマティス殿下の一騎打ちも余興の一つとして扱われるでしょう。……そのときに、考えていることがありますの」
「考えていること、ですか?」
「ええ。まだ詳しくは教えられませんが……。とりあえず、マーセルのことはわたくしにお任せください、カースティン男爵」

 最後は意図的に彼を呼んだ。『ノランさま』でも『お父さま』でもなく、『カースティン男爵』と。

 彼はわたくしをじっと見つめて――こくりと首を縦に動かした。

「ああ、でも、一つ約束してほしいことが……。わたくしがなにをしても、恨まないでくださいませね」

 にこりと笑顔を見せると、カースティン男爵は一瞬びくっと表情を強張こわばらせる。

 もう一度満面の笑みを浮かべてから、わたくしはスタスタと早足でその場から去っていく。

 ――生みの親も、育ての親も、わたくしを愛してはいないみたい、ね。

 でも今では……それがありがたかった。わたくしのことを愛していない人に、愛されようと思って過ごしていた今までの人生とは、今日でお別れ。

 わたくしは、わたくしのために生きていきたい。
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