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最初で最後のわがまま。 1話
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この三人は、先程までカースティン男爵邸で同じことを聞いていた。さらにブレンさまがすっと人差し指を立てると、ふわふわとした煙がでてきて、その煙の中にあの話をしていたわたくしたちが映っていた。
――その内容を知り、公爵家の人たちはゆっくりと息を吐き、苦々しそうに表情を歪める。
「わたくしはもう、あなた方の愛情を求めません。最初は、愛されたかった。どうしていつも、わたくしにだけ冷たいのか、悩んで……あなた方の望むようにすれば、いつかきっと愛してくれると信じていた。……でも、もう良いのです。こんなこと、終わりにしましょう……!」
言っているあいだに、涙が出そうになった。なんとか涙をこらえて、ぐっと拳を握りしめた。
――家族に、愛されたかった。褒めてもらいたかった。優しく微笑んでほしかった。でも、それももう、今日で終わり。
「わたくしを、自由にしてください……!」
そう切実に伝えると、お父さまの瞳が揺れた。
「自由になって、どうするつもりだ? お前は、ベネット公爵令嬢であることには変わりないんだぞ!」
「――リンブルグへ行きます」
その言葉だけは、凛とした声で言えた。レグルスさまはこちらを見る。ぱぁっと明るく笑う姿を見て、わたくしも同じように笑みを浮かべる。
「わたくしを望んでくれる人と、一緒にいたいのです」
心の底からの言葉に、お父さまたちが言葉を呑んだのがわかった。
「――これがわたくしの……カミラ・リンディ・ベネットとしての、最初で最後のわがままですわ」
ブレンさまがカースティン男爵家でのことを魔法で見せてくれたから、わたくしとマーセルの中身がトレードされていたことも理解したのだろう。お母さまはその場に崩れ落ち、お兄さまも呆然としていた。お父さまも顔を伏せ、「こんな、ことが……」と小さくつぶやく。
――実の娘にはできないことを、わたくしにはしていたのね。
「……陛下には、話してみよう」
「お願いします。わたくしはもうこれ以上……この国に、いたくありません」
それだけ、つらい日々を過ごしていた。
ぽんっと肩を叩かれて、弾かれたように顔を上げる。……わたくし、いつの間にかうつむいていたのね。
「リンブルグ王太子として、そしてただの『レグルス』として、俺は彼女を望んでいる。だからこそ、マティス殿下との婚約を白紙にしてもらう」
――優しい人。こんなわたくしを、まだ望んでくださる。
「どうして、カミラをそんなに……?」
お母さまの声が震えていた。まるで、信じられないとばかりに。
――その内容を知り、公爵家の人たちはゆっくりと息を吐き、苦々しそうに表情を歪める。
「わたくしはもう、あなた方の愛情を求めません。最初は、愛されたかった。どうしていつも、わたくしにだけ冷たいのか、悩んで……あなた方の望むようにすれば、いつかきっと愛してくれると信じていた。……でも、もう良いのです。こんなこと、終わりにしましょう……!」
言っているあいだに、涙が出そうになった。なんとか涙をこらえて、ぐっと拳を握りしめた。
――家族に、愛されたかった。褒めてもらいたかった。優しく微笑んでほしかった。でも、それももう、今日で終わり。
「わたくしを、自由にしてください……!」
そう切実に伝えると、お父さまの瞳が揺れた。
「自由になって、どうするつもりだ? お前は、ベネット公爵令嬢であることには変わりないんだぞ!」
「――リンブルグへ行きます」
その言葉だけは、凛とした声で言えた。レグルスさまはこちらを見る。ぱぁっと明るく笑う姿を見て、わたくしも同じように笑みを浮かべる。
「わたくしを望んでくれる人と、一緒にいたいのです」
心の底からの言葉に、お父さまたちが言葉を呑んだのがわかった。
「――これがわたくしの……カミラ・リンディ・ベネットとしての、最初で最後のわがままですわ」
ブレンさまがカースティン男爵家でのことを魔法で見せてくれたから、わたくしとマーセルの中身がトレードされていたことも理解したのだろう。お母さまはその場に崩れ落ち、お兄さまも呆然としていた。お父さまも顔を伏せ、「こんな、ことが……」と小さくつぶやく。
――実の娘にはできないことを、わたくしにはしていたのね。
「……陛下には、話してみよう」
「お願いします。わたくしはもうこれ以上……この国に、いたくありません」
それだけ、つらい日々を過ごしていた。
ぽんっと肩を叩かれて、弾かれたように顔を上げる。……わたくし、いつの間にかうつむいていたのね。
「リンブルグ王太子として、そしてただの『レグルス』として、俺は彼女を望んでいる。だからこそ、マティス殿下との婚約を白紙にしてもらう」
――優しい人。こんなわたくしを、まだ望んでくださる。
「どうして、カミラをそんなに……?」
お母さまの声が震えていた。まるで、信じられないとばかりに。
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